中村憲剛が次に目指す”物”
2016年12月20日。Jリーグアウォーズが今年も開催された。
20時頃、私は自分の携帯でJリーグアウォーズの途中経過を見ていた。ベストイレブンが発表され、川崎フロンターレからは中村憲剛と小林悠が選出された。
小林は自身初となる受賞であった。今季の活躍からも妥当だろう。そんな中村も2010年以来となる受賞だった。長らく座っていなかった椅子に座ることが出来た。
本来であれば、ベストイレブンに選ばれれば十分だが数分後、Jリーグの公式アカウントが『2016年のJリーグMVPは、中村憲剛選手(川崎F)! おめでとうございます。』とツイートしたのである。
正直なところ、まったく予想していなかった。個人的に最大でもベストイレブンだろうと思っていた。MVPに関しては、鹿島の主将小笠原であるとも思ったくらいだ。
今季は、2006年以来の2桁得点まであと”1点”だったが、アシストは安定して11アシストと2桁を記録した。
2月、3月は全試合フル出場し、3ゴール2アシストと今年の流行語を使うと”神ってる”月であった。その結果、見事2月・3月の月間MVPを受賞した。
もはや中村の勢いを誰も止めることはできなかった。
ハリル・ホジッチ現日本代表監督は”川崎の35歳”という言葉を用いて中村を大絶賛し、一時は代表復帰説すらあった程だ。
チームとしても歴代史上最多の勝ち点72を奪い年間勝ち点では2位になった。
惜しくも年間勝ち点で上回っていて、大きなアドバンテージがあったチャンピオンシップ準決勝で鹿島アントラーズに敗れ、またしても悲願のタイトルには手が届かなかった。
だが、まだ天皇杯が残されている。そこに照準を合わせるのみだ。
風間八宏監督が就任してから5年という長い歳月が経過した。彼の独特なサッカーの中心には常に”中村憲剛”という男がいた。
風間監督の目指す華麗なサッカーを見事、中村は体現した。
風間サッカーが実りつつあったフロンターレであったが、風間監督は契約満了に伴い今季限りでフロンターレの監督を退任することとなる。
”風間サッカー”を”川崎の”サッカーに変え、その超攻撃的サッカーで見るものすべてをわくわくさせる風間監督は真のプロフェッショナルであった。
来季は鬼木コーチの内部昇格が決定している。常に風間監督のもとで監督のサポートをしていた彼なら絶対にこのスタイルを継続することができる。
おそらく、鬼木”監督”になっても中村が中心となってまだまだチームを引っ張り続けてくれるはずだ。
そんな中村だが、MVP受賞のスピーチでは”喜び”の言葉よりも”感謝”の言葉の方が多かった。
中村はサポーターに感謝するのはもちろん、日々の細かい作業をしてくれている方々への感謝の想いを伝えた。
Jリーグの公式サイトで中村選手の受賞スピーチの動画があったので、文字起こしをしました。以下が内容です。
『皆さんこんばんわ、川崎フロンターレの中村憲剛です。
ちょっと緊張しています笑
まず初めにJリーグを支えていただいているJリーグトップパートナーの皆様、そして各クラブを支えているスポンサーの皆様、そして全国にいるJリーグ全てのチームのサポーターの皆さん、皆さんのおかげで僕を含め、選手たちは素晴らしい環境の中でサッカーに集中し、プレーできています。
本当にありがとうございます。
これからも引き続きよろしくお願いします。
今、歴代の受賞者の先輩方、僕自身はJリーグが始まったのが中学校1年生の頃だったのでもう色褪せない、あのカズさんがバルーンの中から、あの派手なスーツを着て登場した、あのMVPに自分が共に戦った選手・監督の皆さんによって選ばれたこと本当に光栄に思っています。
皆さんありがとうございました。
僕がこの賞を受賞できたのも、今シーズン僕がプレーしやすいように共に戦ってくれたチームメイト、共に戦い方を考えたクラブスタッフ、怪我を1日でも早く治してくれようと努力したメディカルスタッフ、クラブを管理するチームの強化部の皆さん、普段僕らの洗濯物を洗ってくれているおばちゃん、掃除してくれているおばちゃん、グランドを管理してくれているおじさんの皆さん、そして、フロンターレの全てに関わってくださっている皆さんのおかげだと思っています。
改めてありがとうございました。』
勝村さん『中村選手、改めておめでとうございます。なんか、泣きそうよ。』
中村選手『え?(笑)、勝村さんがですか?(笑)』
勝村さん『ほんとに。』
中村選手『ありがとうございます。』
勝村さん『素晴らしいです。今一度、会場の皆さん全員で最高の栄誉を讃えてください。おめでとうございます。』
最後の総合司会である勝村政信さんとのやりとりもとても微笑ましかったです。(笑)
このスピーチは中村の人間性が溢れ出る、まさに”中村憲剛のスピーチ”であった。
だが、中村はMVPのトロフィーよりも手に入れなければならない”物”がある。
それを手に入れてからこそ中村が本当に輝くのだろう。
(RYUJI ICHIYA)
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
ベストイレブンについて書こうと思っていたのですが、中村選手がMVPを受賞したので急遽執筆しました。
なお、今回はJリーグ公式サイト、Football LAB、川崎フロンターレ公式サイトのデータ及び受賞スピーチの動画内容を使用させて頂きました。