放浪尼僧、赤い外套の剣士にナンパされるの事
とある昼頃。一党の面子が買い物を済ませている間、頭目の尼僧ディアナは天馬の流星亭で昼食を取ろうとしていた。
「そこの美しい尼僧様。これからお食事ですか?」
声をかけてきたのは、赤い外套を纏った人間の男性であった。腰に曲刀…恐らく東の国から伝来してきた物であろう。それを佩いている事から、恐らくは旅の武芸者であろうか。銀髪に青い瞳、その物腰からは恐らく高い教養を受けてきたことが伺えた。荒くれ物の多い冒険者としては、聊か不釣り合いな印象を受ける。
「私は旅の武芸者、ハーウェイと申します。人によっては狩人剣士とよばれる事もありましょうか。これから昼食を取ろうと思っていたのですが、もし宜しければご一緒させてもらえませんか?」
「これはご丁寧に。わたくしはディアナと申します、末席ではありますが地母神様にお仕えする尼僧。剣士様もお食事ですか…わたくしのような者で宜しいのでしょうか?」
やんわりと断りをいれようとするディアナ。だが、狩人剣士の異名…実の所、ガールハントに全力投球しているゆえについた仇名を持つハーウェイは簡単には諦めない
「とんでもない!貴女のようなお美しい方とお食事できるのなら望外の喜び。どうかご一緒させて貰えませんか」
恭しく一礼するハーウェイ。
「え、えぇと……そ、そうですね。それでしたら」
結局、押し切られる形になってしまったディアナ。普段、荒くれ物かさもなくば不埒者に言い寄られる事が多い彼女にとって、言い寄ってくる相手をあしらうなど慣れた事だが、洗練された物腰のハーウェイは実に新鮮であった。聞けば、御用商人の家に生まれ幼い頃から宮廷に出入りしていた経験があるという。
結局、戻ってきたカミラから引き剥がされるまで、ハーウェイはディアナとの食事の時間を存分に楽しんだのは言うまでもない
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