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分散した多様な個を結ぶ「何か」を求め

不安の中に感じる潜在的な可能性

       
戦争や紛争が相次ぎ、対立と分断が至る所で顕在化しています。それらによって温暖化対策など人類の存続に関わる危機への対応は遅れ、日々深刻さは増すばかりです。人類は今、間違いなく大きな岐路に立たされています。
しかし、「岐路に立つ」ということは同時に、潜在的な可能性が試される人類のフロンティアが目の前に広がっているということでもあります。

SNSによって顕在化した世界の分断と対立


人類全体が直面している課題に取り組むためには、人類全体を結ぶ何かが不可欠です。たしかに、世界中の人々は、インターネットやSNSなどの技術によって結ばれましたが、むしろその普及によって主義主張や立場の違いによる対立や分断が先鋭化しています。それらの動きは、人間の知性を置き去りにして進歩や普及を続ける技術によって引き起こされた、分散化や多様化への、人々の不安や反動の表れでもあります。しかし、分散化や多様化を否定し止めることは誰にもできません。

技術(答えの共有)によって閉じられる世界


情報交流がどれほど高度化高速化したら、今広がりつつある溝を埋めることができるのでしょうか。AIに象徴されるように、今の技術は社会に深く浸透し、人と人、人と自然の関係を急速に支配しつつあります。その結果、人間は自らが生み出した技術への適応を強いられ続けています(人の生も自然景観も変化しています)。技術への依存は、言い換えれば、答え(技術)の共有による閉じられた世界を生きることでもあります。危機の時代に、人間の潜在的な可能性を引き出すことができるのは、「人間や社会を変える」先端技術なのでしょうか。

対立と分断の壁を溶かす開かれた知(問いの共有)


それは、答えの共有によっては起きないと思います。人々が問いを共有することによって、つまり、開かれた知(新しい知性の芽生え)によって初めて起きるのではないでしょうか。
世界に広がる溝を埋めることができるのは、新たな知性に基づく協働社会の実現以外にはないと考えます。新たな知性は、人工知能にではなく、心と体の結び直をした主体としての人間の中に芽生えます。
気候変動や地震などの災害の頻発、流動化複雑化する世界情勢と向き合う中で、私たちは常に変化することを求められています。しかし、本当に変化するには、「変化」とは何かという問いを共有することが不可欠です。

「変える」から「変わる」への発想転換


社会を「変える」という発想から、柔軟に変わり続けることができる社会をどのように創るのかという発想への転換、つまり「変えることができる主体」から、自らの知性に基づき「変わることができる主体」への、問いの共有による転換が必要です。それは、変える主体(中心組織)がつくる権威主義社会を分散化し多様化する(民主主義)=「変わることができる社会」への転換でもあります。

多元化するネットワークの中から生まれる知性によって


アサザプロジェクトは、次の世界を展望し、「分散した多様な個によるネットワーク」「個々の人格が場として機能するネットワーク」「自然のネットワークと重なる人的社会的ネットワーク」の実現を目指し、この30年間取り組んできました。
分散した多様な個を、個々の人格を場として機能させることで結び付ける。中心の無いネットワークによって人々を結び付けていくために必要なもの、それは、対立や分断を溶かす新たな知性(問いの共有によって開かれた知)であると確信します。
2023年度も、アサザプロジェクトの各現場が、そのような知性が芽生える場になることを目指して取り組んできました。
        
        特定非営利活動法人アサザ基金 第25期総会 活動報告より 
 
 


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