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2024年度夏の青春18きっぷ旅行 最終日 ポンコツな日々との再会
前回のあらすじ
ささやく車内放送。二度目まして三原駅。呉線。和モダンなホテル。呉の夜景を撮るには遅すぎた。
起床、寝坊、絶望
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やあ俺だ、おはよう。チェックアウト時間30分前に起きて慌てている。昨晩は遅くまで呉の街を徘徊していたからね。
ところで俺は本日の行程を確認しようとしてTwitter(現X)を見て驚いていた(寝坊しているのにTwitterなんか見るなという正論は耳が痛いので控えていただきたい)。どうやら2日前に山陽本線で貨物列車の脱線事故が起きていたらしく、その影響でしばらく運転見合わせが発生していたらしい。2日前の俺は加賀温泉と天橋立でも雷雨に見舞われていて情報収集どころではなかった。寝耳に水だ。
岡山での謎遅延や東海道新幹線運休による敦賀パニック、雷雨の天橋立、三原駅不時着。思えば今回の旅は行く先々でトラブルが起きている。もちろん良いこともたくさんあったけど、ツイていない事象に対するアンテナ感度も高すぎる。
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実を言えば、この旅は博多で学生時代の先輩と飲んで締めくくる予定だ。19時集合である。小倉からは特急ワープをしようと予め切符を手配していたが、上述の脱線事故の復旧が遅れたらワープはおろか遅刻どころではない。最悪帰宅難民コースに突入する。どうしたものか。いろいろ諦めて広島から新幹線ワープするか。早めに復旧する方向に賭けつつ、予定前倒しで青春18きっぷでの行動を開始するか。でもせっかく呉に来たんだし大和ミュージアム見たいよ。
それはともかくチェックアウトの時間までに宿を出なければ延長料金が発生するから早く出ないといけないんだよな。俺は慌てて荷物をパッキングして、朝食用に買っていたおにぎりをリスの如く頬に詰め込み、脱兎の如く宿を出た。まるで出勤前の俺のようだ。ポンコツな日々との再会も近い。旅の終わりを感じる。
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宿を出て、ひとまず呉駅方面にスーツケースを転がし、日陰を陣取って情報収集をする。Twitter(現X)で検索した情報を要約すると、どうやら不通区間(厚東駅から大道駅)はバスが代行運転されているようだった。また、山陽新幹線の徳山駅から厚狭駅の区間では特例として「新幹線代替輸送乗車票」なるものを配布する旨の情報もキャッチした。
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これは、上記不通区間を含む乗車券類(俺の状況で当てはめると青春18きっぷがこれに該当する)を持っていれば、この代替輸送を利用する場合に限っては特急券を買わずに新幹線に乗れる、ということ。要するに、余計な出費をせず新幹線にタダ乗りできるということだ。トラブルは避けるに越したことはないが、図らずして記事のネタができた気分にもなる。ひとまず焦って広島駅まで向かって新幹線ワープをしなくてもOKだと判断を下せて安堵した。慢心して大和ミュージアムに向かおう。
大和ミュージアムと海軍カレー
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満を持して呉の街を散策する。昨日の夜更けに巡った造船風景は陽の光を浴びて壮麗な様相を呈していた。ますます工場夜景として撮影できなかったことが悔やまれる。リベンジしたい。
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ぶっちゃけほぼ下調べしていない状態で大和ミュージアムに向かったものだから、まず目の前にあった「てつのくじら館」のデカさにビビる。本物の潜水艦らしい。これを造れる当時の軍需産業技術に感嘆する一方、改めて戦争は俺の想像を凌駕するほどにスケールが大きなものだと実感させられる。畏怖の念を抱く。碇シンジもエヴァに乗る時にこんな気持ちを抱いたのかもしれない。
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スーツケースをコインロッカーに預け、入館料を払って展示物を見学する。戦艦大和の模型は撮影OKとのことだったので、節操なく撮っていた。これで10分の1サイズなのだから実物はとんでもなく大きかったのだろう。この巨大戦艦の造船技術は、戦後も大型タンカーの建造などに役立てられたそうだ。高校の世界史担当教員が「戦争が起こるとあらゆる技術が発展する」と皮肉めいて言っていたのを思い出す。
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旅の思い出を実家の両親におすそ分けしようと思い、大和ミュージアム内のお土産ショップで海軍カレー(レトルト)などを買って配送した。ところで、俺も海軍カレー食べたい。ちょうど金曜日だし、金曜日と言えば海軍カレーみたいなところもある。
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まあ、なんというか。普通だった。別に「海軍カレーと言えばこの店!」みたいなところではないし、妥当か。いや、もしかしたら普通だからこそ「あ〜、カレーと言えば金曜日の味。金曜日と言えばこの味のカレーだ」と思えるのかもしれない。普通の感覚を思い出させるのに奇を衒う必要はないのだろう。
さらば呉、さらばイキリボーイズ
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海軍カレーで腹ごしらえをして、呉駅から博多への移動を開始する。呉には今度、長めに滞在したい。どの街でもそうだが、1日だけでは短すぎる。
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とりあえず先に切符への入鋏を済ませ、コンビニに寄る。店の前にヤンチャしていそうなガラの悪い若者が3人ほどたむろしていた。場違いなくらいに声がデカい。未成年風、というか「自分1ヶ月前からヤンキーになったッス!ウス!」みたいな感じの少年たちだ。イキリ気味な風貌が、かつてカツアゲ未遂に遭った俺の記憶を呼び覚ます。因縁をつけられてはいけない。目を合わせないようにして必要な買い出しを済ませる。袖振り合うも多生の縁とは言うが、ここでイキリボーイたちに袖が掠っただけでも「当たってんぞコラァ」と声変わりしてるのか怪しいような声で咎められる可能性がある。袖も何も掠るわけにはいかない。
だが、俺が乗車した車両に奴らは乗り込んできたのである。幸いにしてイキリボーイズは離れた場所を陣取っていたが、なんというか、座席が離れていてもうるさい奴らである。お前らの家かここは。何かの拍子で正義と勇気を振り絞って注意する大人が出てきそうな雰囲気もある。結局イキリボーイズは途中の駅で下車したので車内の治安は守られたが、こんなところでトラウマを刺激されるなんて思っていなかったな。ボーイズとはだいぶ歳が離れていただろうけど、ヤンキーやチンピラには何歳なっても近づきたくないものだな……。
俺マジで博多に帰れるの?
執筆の順序が前後するが、そもそも本日最終日は以下のような旅程を想定していた。朝は寝坊こそしたが無事に大和ミュージアムも観覧できたしノープロブレム。JR呉線もオンスケジュールで旅程に影響ナシ。問題は山陽本線、お前だ。
JR呉線 11:46呉発→12:22広島着(5駅)
JR山陽本線 12:45広島発→13:34岩国着(15駅)
JR山陽本線 13:44岩国発→17:20下関着(35駅)
JR山陽本線 17:23下関発→17:37小倉着(2駅)
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ホワイトボードに書かれた文字の配列や大きさなどから、大急ぎで用意したことが伺える。俺が悠長に京丹後や呉を観光していたときに準備していたのだろうか。職員の方々には頭が上がらない。
ところで俺は無事に博多まで戻れるのだろうか?
のんびり呉線に揺られていたが、その間に山陽本線の事態が変わっていたらどうしたものか。大道駅で新幹線代替輸送乗車票を拝受したところで、そうしたことによって記事のネタが1つ増えたところで、定刻通り博多に戻れなければマズい。戦々恐々としながら、俺はここから当初の予定通り岩国行の在来線に乗ることにした。一か八かの賭け。ここまできたら出たとこ勝負しかない。
ドギマギしながら電車に揺られること50分後、岩国駅に差し掛かる頃に朗報が耳に届いた。どうやら全線で運転を再開するらしい。新幹線タダ乗りネタが消滅したことは、まあそれはそれで惜しいのだが、ここは素直に博多での先輩との待ち合わせに遅れる可能性が低くなったことを喜ぼうではないか。
岩国駅に到着して、吸い込まれるように下関行の車両に乗り込む。そうしてまた電車に揺られる時間の再開。岩国から下関まで35駅、時間にして4時間弱。長い。生憎の曇り空で車窓もどんよりしている。退屈だ。新幹線タダ乗りチャンスが雲散霧消したことが悔やまれるくらい暇だ。この区間を新幹線でカッ飛ばせたらどんなに爽快な気分だっただろう。
途中、長いこと停車した駅があった。新山口駅だった。最初、あまりにも動かないものだから何か起きたのかと思ったが、普通に停まっているだけだった。ひとまず下車してお手洗いへ向かう。
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新山口から下関に向かう途中で、暇つぶし用に持参していた文庫本もすべて読み終わってしまった。半沢直樹シリーズ4冊分である。いつ読んでも面白い。しかしながら暇だ。
車内で暇なときは人間観察をしてみるのだが、時間帯も関係しているのか様子のおかしい人や癖が強そうな人は見つからなかった。そう簡単に見つけることができても怖いのだが、例えばボックスシートで酒盛りをし始めるおじさんがいれば、それはそれで「このおじさんはどこへ行こうとしているのか?」という推理ゲームが始まり、妄想が膨らみ、旅や移動に対する想像が弾けていく。そのおじさんの旅先が深酒の末に居眠りして終点になってしまったとしても。
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この旅も終わりだ。青春18きっぷの役割は小倉駅で終わり。待ち合わせの時間に間に合わせるべく、予め調達していた特急乗車券を取り出し、博多へ向かう。旅の〆なので何かエモい締め括りの文章でも書けたら良かったのだろうが、飲み会に向けての高揚感やら夏休みが終わる喪失感やらで感情はそれどころではかった。飲み会でも職場でもポンコツを発揮して、日常に戻っていく。いつもの俺に戻る。
まあ、今回の旅が良いリフレッシュにはなったことには間違いない。夏休みを取らせてくれた会社には感謝である。
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あとがき
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実際にこの青春18きっぷをしたのが2024年7月21日~7月26日の6日間。当初は旅の移動中の暇つぶしがてら記録のためにnoteを書いていたが、夏休みを終えて仕事に戻ると書く時間とか精神的な余裕が取れず、結局全部を書き終えるのに約半年もかかってしまった。ひとえに俺の怠慢のせいである。旅から時間が経ちすぎて5日目以降はあることないことを書いているかもしれない。なんなら最終日の山陽本線の下りはちょっと記憶から飛んでいる。あまりにも何も起きなかったからかもしれない。写真を見返さないと思い出さなかったエピソードまである。そういう意味では写真は記憶を呼び覚ますトリガーになるので偉大なものである。
実感としては、やはり4日目の夕日ケ浦の宿泊がピークだった。5日目以降は旅の折り返し、夏休みの折り返し、要するに帰路のことだったので、そもそも執筆するモチベーションが下がってしまっていた。それでも最終日の行程をお蔵入りにせずに書き上げようと思ったのは、実はこの旅のあとにした別の旅行ネタが2つほどあり、それを書く前にこの中途半端な続き物は仕上げなければならないだろう、という使命感に(勝手に)駆られたからだ。誰も読んでいないかもしれないけど、これは自己満足である。しばらくはこの懸案事項を片付けた達成感に浸らせてもらう。
というわけで、他の旅行ネタも手隙の際に書き連ねていきたい。このように予め宣言をしていれば「書かねばなるまい」という執念が自分の中に生まれるので、敢えて文字に残しておくことにする。「俺の旅は終わらねえ」という打ち切り漫画感満載の言葉で、このあとがきを締めることとする。