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Smart-IP社 創業記 その8 ~資金を調達する(後編)~

前編はこちら、中編はこちらから。いよいよひとまずの後編だ。


α版から、β版へ

当初想定していた3000万円の資金調達を大幅に超えて、シードラウンドではあるものの5000万円の資金調達に成功した。予想外とまでは言わないが、目標額の上限の調達ができたのはありがたかった。
appia-engineはニッチな知財業界向けのツールであることから、どうしても出資してくれる人・組織が少ないと思っていたのだが、これは嬉しい誤算だった。

また、α版の開発自体も、比較的リーズナブルに終えることができた。
Smart-IP社創業当初の資本政策&開発ロードマップとしては、1000万円ほどでプロダクトのα版を作り、その成果をもとに、シードラウンドの残額と、シリーズAにより調達した資金の一部を用いてβ版の開発に着手する想定だった。
ここでいうβ版とは「最低限の機能を有しており、実用にも耐えられる」というものだ。2024/01/31に一旦リリースを行い、そこでユーザーから受けたフィードバックをもとに、PMFを達成するバージョンのリリースを2024/6/1に予定しているものを指す。

しかし、シードラウンドの資金調達が上振れしたことから選択肢が増えた。このまま当初の予定通り、資金に余裕を持たせた形で進むか、開発速度を上げるか。具体的には、α版だけではなく、β版以降まで一気に開発してしまうか。
ボードメンバーたちとも相談し、結論としては「GO」することに決めたな。

資金調達、追加

しかし、5000万円では、当初の計画よりも潤沢とはいえ、β版開発を完遂するには資金が足りない。実際に開発に入ると、想定外のことが起きて、資金が早期に尽きてしまう可能性もある。
そこで、さらに追加での資金調達を行うことにした。すなわち、2500万(累計で7500万円)の追加調達を行いつつ、シードラウンドのうちに一気にβ版まで完成させるというものだ。

まずは既存の投資家に、ここまでの経緯を説明した。追加資金により、早い段階でβ版まで開発が進められる点がポイントだ。ありがたいことに既存の投資家からは一定の理解を得ることができ、一部からは追加での資金提供の申し出をいただくことができた。
また、前回の資金調達時にお断りした投資家にも声をかけさせてもらい、無事、追加で2500万円の調達に成功。加えて、補助金や借入も一部利用し、資金体力に余裕を持たせた。


開発コストの考え方

少し横道にそれるが、特許明細書を書くために必要なプロダクトを想定した場合、欲しいと思う全機能を盛り込んだ開発コストは、どんなにお金がかかっても最大で3億円以内だと考えている。

Smart-IP社では、概算の費用を算出する際、1機能25万円で見積っている。これは、月単価100万円のエンジニアが1名・1週間(5営業日)で開発できるくらいのボリュームを「1機能」の開発工数目安として想定している。実際には開発難易度によって1機能あたりにかかる費用は変わるだろうが、平均でならすとこれくらい、というイメージだ。

現時点で、Smart-IP社としてappia-engineに盛り込みたいと考えている機能数は約200個(機能ごとにリスト管理しており、さっき計算したら198個だった)。これは、α版~β版~年内(2024)リリースまでの機能を想定している。
200個×25万円なので、開発コストはおおよそ5000万円となる。これに販売管理費など諸々の会社の運転資金を加え、資金調達の金額を決定する。
仮に、その先「appia-engine」に必要と考えるあらゆる機能を盛り込んだとして、その機能数を500個とすると、1.25億円となるので、どんなに多機能なシステムだとしても3億円以内に収まるのではないかという考えだ。


これからの資金調達

追加の資金調達が無事に成功したおかげで、β版開発のための資金と、当座の会社の運転資金は用意できた。あとは、きちんとしたプロダクトを作り上げることに集中した。
スタートアップの経営は「お金(資本政策)」と「モノ(プロダクト開発)」と「販売(セールス&マーケティング)」の3つのバランスを取りながら舵取りをするものと思っているけれど、「お金(資本政策)」については、これでひとまず落ち着いたといえるだろう。
ここからは「モノ(プロダクト開発)」がポイントになってくる。利用してくれるユーザーに対して価値を提供できるものが作れるか、Smart-IP社の挑戦は、まだまだ、これからも、続く。

(つづく、、かもしれない)


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