キノ・ライカ 小さな町の映画館

フィンランドの名監督アキ・カウリスマキが鉄鋼工場で栄えた小さな町に映画館を作るまでを描いたドキュメンタリーです。

ですが、出演者は、それなりにあらかじめ振り付けがあるように感じられました。純粋なドキュメンタリーといっても、カメラを回している以上、それを意識してしまうので、全く創作ではないということはあり得ないのでしょう(濱口竜介監督の「他なる映画と」からの受け売りです。)。そういう意味では、本作はドラマ・フィクションとドキュメンタリーのミックスという印象を受けました。

カウリスマキ監督の住む町の隣町に、元の鉄鋼工場の建物があり、そこに監督と友人の作家がスポンサーとなって映画館を作るというのが大きな筋です。町に住む人たちが、「映画館ができるんだってよ」などと話して楽しみにしているのを見るのは、都会に住んでいると分からない感覚ですよね。僕も、地方都市に住んでいた時には映画館で多少マニアックな作品を観れることのありがたさを感じていました。

一番印象的だったのは、ジム・ジャーミッシュ監督のインタビューでした。カウリスマキ監督と友達で、ニューヨークからフィンランドに飛んで、空港にカウリスマキ監督が車に迎えに来てくれたが、真冬で雪も降っているのにオープンカーだった。唯一の熱源はカウリスマキ監督の犬のライカだけで、犬を抱っこして車に乗っていた。それをジャーミッシュ監督は、まるでロシア小説のように不条理な世界だったと、嬉しそうに語っていました。
なお、映画館の名前のライカは、この犬の名前だということが分かりました。

映画の最後に、映画館の完成披露の場面の前後に、カウリスマキ監督が出てきますが、結構気難しそうなお顔ですね。実はいい人かもとも思いますが。

監督はべリコ・ビダクさんですが、何も聞かなければ、カウリスマキ監督の作品と思う感じの作品です。

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