ラストマイル

 知人に勧められて観ました。結論として、面白い映画です。日本映画にしては、社会派のテーマとエンターテインメントが両立している、珍しいケースといえるでしょう。

 主人公は、満島ひかりでなければできない役だったのではないかと思います。アメリカのAmazonを模したネット販売企業から送り込まれてきた一大物流センターの責任者の役で、上からの売り上げを減らすなというプレッシャーを受けつつも、どうやって爆弾の仕込まれた荷物を膨大な荷物から探すのかという謎解きをするという重いミッションを、明るく嫌味のない、むしろ愛嬌のある感じで演じられるのは、彼女以外には思いつかないぐらいの適役でしょう。

 岡田将生も、前から好きでしたが、まじめな役をする彼の正統的二枚目の良さが現れていました。ドライブマイカーで世界的な俳優になった後も、「ゆとりですがなにか インターナショナル」などでコミカルな役もこなしていますが、背も高いし、イケメンだし、魅力的ですね。

 今回の映画は、アンナチュラルやMIU404というテレビドラマの脚本家野木亜紀子さんと、監督塚原あゆ子さんのコンビで作ったらしいものの、ドラマは観ていませんでした。しかし、MIU404の、星野源と綾野剛の刑事コンビを見て、凄いな、新しい危ない刑事を作ろうとしているのかな、と感じました。綾野剛も大物俳優なのに、「カラオケ行こ!」などコミカルな役もこなし、画面に出るだけで見てしまいますよね。星野源も、歌手としては素晴らしいですが、俳優としては少なくとも映画では初めてみました。

 映画のテーマである、物流大企業とその下にある配送業者、さらにその下の個人のトラック運転手など、それぞれの上下関係やプレッシャーが描かれています。安易にネット通販でポチっとしてしまう私たちの生活習慣の裏にある社会の不条理を考えさせられます。

 最後に主人公の満島ひかりは会社をやめてしまいますが、家族を養うとか様々な事情からやめることができない人が多いのは事実ですよね。そういうことで自殺を図る人がいるのも描かれていますので、物語としてはバランスがとられていました。

 今の世の中の辛さを上手に描いている映画と思います。ただ、コミカルでテンポよく進むのでそんなに暗くはならずにバランスをとった作品に仕上がっています。


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