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【長編連載小説】絶望のキッズ携帯 第2話 ガキとババアの関係

そのガキは癇癪持ちで、気に入らないことがあるとすぐに暴れ出すそうだ。ものを投げるせいで家の壁は穴だらけで、怖がる弟は過呼吸になるらしい。学校でも気に入らない先生や生徒には喰ってかかる、やりたいことしかやらない人間なのだそうだ。当然クラスの生徒たちからも嫌われ、居場所がなくなってしまい、引きこもりゲーマーに落ち着いた。

けしからん話だ。やりたいことしかやらずに生きていけるほど社会は甘くない。人と関わるのが嫌だからと言って翻訳家をやっている俺のようだ。そもそもそのまま大人になると、あまりに人恋しくて無理矢理カフェで仕事し、店員さんの一瞬の笑顔に安らぎ、特に英語を眺めることもなくZOZOタウンでグラミチのパンツを色違いで3本買うような人間になってしまう。俺は親近感を覚えた。

結局ババアは自分のガキを罵り続け、1時間ほど経過したところで缶酎ハイまで取り出した。母親という役割がいかに大変か理解した瞬間だ。そして、それから彼女の人生がいかに大変か知ることになった。
「私たちの時代はそんな甘えは通用しなかったよね」
貧乏だった幼少期。長女だった彼女は下の兄弟を一人で育て上げた。ネグレクトの家庭で育ったのだ。しかし俺は嫁から聞いている。実際は陶芸家だった彼女の祖父は割と金持ちだということを。そして彼女は、大学入試のセンター試験で、一科目受けたところで出来が悪かったので泣きながら帰り、後日陶芸の一芸入試で大学に受かっている。今は美術教師と名乗る、教員採用試験に受かっていないババアだ。お前、ストロベリー味だろ。そんなことを言っていい場面ではないことくらい分かっている俺は、言葉を慎んだ。

何が言いたいのか分からなかったかもしれないのでまとめる。神経質なババアのガキが引きこもった。そんなよくある話だ。それではなぜこんなありふれたことを書いたか。それは、このガキのお陰で人生に希望が持てたからだ。このガキがくれた希望を書く。誰かが前を向けるように。

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