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エッセイ#3 夏目友人帳と優しさについて

以下、夏目友人帳が好きというただそれだけの内容です。

もし、仮にたまたま偶然通りかかったあなたが夏目友人帳を観たことも読んだこともない方でしたら、これだけは観て欲しい最小単位を記載しておきますのでこれをきっかけにぜひ御覧ください。(本当は全部見て欲しい)。

【せめてこれだけはアニメで観るか漫画を読んで】
①夏目友人帳の1話(アニメなら1期の1話)を観てね
これできっと世界観はつかめたはずです!

②アニメだと夏目友人帳1期 2話「露神の祠」と6話「水底の燕」(もしくは6話まで)を観てください。
漫画なら2話と4話です。
なんとここまでコミックなら1巻で全部収録されています!
アニメは現在、Netflixで視聴可能です。

以上です。

もし、上記を観て(読んで)心に響いくものがあったら帰ってきて続きを読んでください。

夏目友人帳は観てるけど、2話と6話が思い出せない?1巻を覚えていない?
なんてことだ!!!
今すぐ見返して来なさい。

それでは、あとは僕が夏目友人帳が好きだという話を露神と燕の回を中心に話します。


夏目貴志の境遇で良い子でいられるか?

いいや、僕ならグレるね。
屋上のフェンス際に立って、拍手できる数を競い合う危険な遊びに手を出すね。

妖(あやかし)が見える夏目は世間から奇異の目で見られて育ちます。
小さいときにご両親も亡くし、親戚をたらい回しにされる夏目。
親戚にも学校にも馴染めない。
作品がスタートしたときには、めちゃくちゃ孤独感があるわけではないのですが、過去回想の夏目はかなり孤独そうです。
初期もやはりどこか人との距離感を図り兼ねている描写は多いです。
でも、夏目は誰かに自身の不遇さを理由に当たることもなければ、人に心底冷たいわけでもないです。
塔子さん滋さんという心優しいお二人に引き取ってもらえた、ニャンコ先生に出会えた、物語を通して、今は良い友人(妖)たちに恵まれたというのも大きな要因でしょう。
けど、変わらず夏目は奇異の目で見られることもあれば、妖は悪意を向けてくるものもたくさんいます。
友人帳を持っているがゆえに同じ見える人間にも悪用されかねない危うい状況も何度も経験しています。
それでも彼はグレることなく、悩みながら生きています。
そして、彼は周りの人(妖)たちへの感謝を忘れません。

フィクションの存在ですが、僕は夏目貴志という人を心から尊敬しています。

そんな彼だからこそ、妖や周りの人たちと紡がれる物語から僕たちの心に問いかけてくる気がします。

悪意を向ける前に、投げ出す前に、目の前の相手を知ろうと本気で向きあったか?

※以下、もっとネタバレを含みます

「だめだよ夏目殿。君は私の友人だ」

漫画第2話もしくはアニメ1期第2話「露神の祠」の露神は名言クリエイターです。

恐らく見た方の中で露神といえばこのセリフじゃないでしょうか?

けれど一度、愛されてしまえば、愛してしまえば、もう忘れることなど出来ないんだよ。

出典:夏名友人帳 第2話

露神…。
愛について僕はまだうまく言語化ができませんが、なんとなくわかる気がするこのセリフ。
心の中の大事なところに陣取った人のカタチは誰にも埋め合わせることができない。
本人が介在しなくても、心の中のそのカタチをつくってくれた人との関係は一生続いて行く気がします。

それはもう忘れることなど出来ないんです。

いつもこのセリフを聞くたびにそんな気持ちになります。

そして見出しのセリフです。
さっきの名言も非常に心に刺さりますが、僕はこっちについても話したいのです。
露神を信仰してくれた最後の人、ハナさんがなくなり、ついに露神も消えてしまうとき、夏目は露神にこう言います。
「…おれが信仰する」
「毎日は無理でも拝みに来てやる」
その言葉への返事が見出しのセリフなんですよね。

見えるから、見えてしまうから関係が違ってしまう。
露神にとって夏目はもう友人でした。
先述の通り、ハナさんが露神にとって友人に達していないとかそんな話ではないのはわかるでしょう。
ただただ、本当に関係性が違う。
露神にとって信仰とは互いに認識できてるようで、実際には触れ合えないその関係性の中で生まれ育まれるものだったんですね。

10年以上前に初めてみたとき、2話でいきなり心を鷲掴みにされました。
きっと夏目自身は妖との出会いと別れをこれまでの人生の中で繰り返してきたのでしょうが、我々にとって最初期の妖です。
友人帳である由縁というか、この作品の要素がギュッと詰まっている気がします。

この回のエピローグで夏目の心中が語られます。

わかりあいたいと思う心は同じかもしれない

夏目友人帳 第2話 

これはその後の夏目の中で、かなり大事な気持ちのきっかけだったと考えています。
そして、夏目が人とも妖ともわかり合おうとしていく物語は続きます。

「優しいものは好きです。あたたかいものも。だから、人間が好きです」

続いて燕の回です。
ひょんなことから燕の妖に取り憑かれてしまった夏目。
山奥のダムが暑さで干上がっている間だけの取り憑かれ生活が始まります。

燕に手を繋いでいいですか?と聞かれて繋いだとき夏目は冷たい手だなと言いますが、すぐに心中が語られます。

今、言い方をまちがえた
つめたくて気持ち良いって言いたかったんだ。

夏目友人帳 第4話

ある。
とてもよくある。
別に手を繋いだことがよくあるわけではない。
伝えたかったことに対して実際にでた言葉が違って、あとで後悔することです。
手ですくいあげた水のように言葉にすると抜け落ちる意図や感情。
家帰ってから「うわああああ」となる夜を何百・何千回と過ごしたことか。
僕は毎回ここで一度深呼吸したくなるのです。

さて、そんな燕と共に過ごすうちに、燕の願いを叶えてあげようと、最後は危険な妖たちに混じるというリスクを犯してまで奮闘します。
そして、手に入れた妖が一晩だけ人間に姿を見せることができるようになる浴衣を手渡しました。
この言葉とともに…

「人を嫌いならないでいてくれてありがとう。」

燕はこう返事します。

優しいものは好きです
あたたかいものも好きです
だから人が好きです

夏目友人帳 第4話

燕にとっての人は最初に自分を助けてくれた人と夏目だけだったのかもしれません。
だから言えたことかも知れませんが、受け止めた夏目は違います。
そもそも、人間社会で孤独だった夏目が「人を嫌いならないでいてくれてありがとう。」と言えたこと自体に僕は彼の強さとこう思えるまでになれた周囲の人の温かさを感じました。

本当にこの回は大好きで、何度も何度も見ています。
露神の回もそうなんですが、優しい気持ちになれるなと思っていました。
僕に限らず、夏目友人帳ってよく、「優しい気持ちなれる作品」と言われています。

次はそれについて僕なりに考えたことを書いてみます。

きっと夏目は自分が優しいなんて思っていない

さっきの燕もそうだったように夏目は妖からも人からも、優しい良い子という評価をよくされています(他にもモヤシだなんだといろいろ言われていますが笑)。
ただ、当の本人は自分のことを優しいと思っているのでしょうか?
少なくとも、「おれって優しいからさ」みたいなセリフも心情描写もないですし、僕は夏目自身は自分が優しい人間であると思っているとはあまり考えていません。
でも、夏目と接する人や妖たちからしてみれば夏目は優しいと感じる気持ちもわかります。
夏目はいつでも目の前にいる存在と真正面から向き合おうとするのです。
もちろん、取って食おうとしてくる妖や利用しようとしてくる人間とは距離をとることもありますが、多くの場合邪険にすることはないんですよね。

また、夏目は妖に友人帳の名前を返すとその相手の記憶や感情が流れ込んでくることがあります。
露神の愛してしまえばではないですが、知ってしまったら、なかったことにはできないのではないでしょうか。
じゃあ友人帳のおかげじゃない?みたい思うかも知れませんが、夏目って別に友人帳に名前がない妖でもほっとかないです。

目の前の存在ととことん向き合い、悩み、行動する。
決して毎回報われるわけではない、ニャンコ先生が都度小言を言うように損な役回りも多い。
けど、そんな夏目にみんな惹かれていくのではないかと思います。
だからこそ、周りも夏目と向き合いたくなる、次第に互いの大切な存在になっていくのではないかと思います。
なので、僕が夏目友人帳をみて優しい気持ちになる理由を簡潔に表現するなら
「妖だろうが人だろうが、関わったからには互いに真剣に向き合う物語だから」
でしょうか。
まだ足りない気もしますが。。。

ちょっと脱線して、少しメタな感じだけど、友人帳から名前を開放する過程の中で関係が築かれていくというのも奥深いです。

別に優しさってこういうことだよねって言いたいわけではないですが、僕はいつも夏目を見て、現実に翻ったときにいろいろと考えてしまいます。

では少しここから話を現実へ。

自分の価値観を優しさという感情に乗せておしつけていないか

正直”優しい”って難しいです。
日常で優しさから相手のことを思って言っている気になることが良くあります。
別にそのすべてを否定するつもりないのですが、それは本当に目の前の人と向き合ったすえに出た言葉でしょうか。
表層的に自分の価値観や相手の望まない社会のステレオタイプを押し付けてしまってはいないでしょうか。

悪意のない言葉で傷つけてしまうかもしれない。

恥ずかしながらこのことに気づくまで、僕は相当時間がかかりました。
今でも常に意識できているとは到底思えません。

僕たちは簡単に他者に対して言葉を投げかけてしまいます。
そして簡単に不特定多数にことばを投げられる世の中になってしまっています。
良く知らない他人にさえ、正しさや思いやりをもって接していると勝手に自分の中で満足している姿勢で他者と接してしまいます。

現実はいろんなことがありますし、時間は限られているのに接する人も膨大です。
全員にそんなことしていたら大変なことになりそう。
でも、少しでも夏目のように不器用ながらも目の前の存在とちゃんと向き合うことができれば、もしかするとみなさんの心の中の友人帳が分厚くなるんじゃないかなって思います。
そうだと良いな。

僕には妖は見えないので、空飛ぶ牛のような友人も、喋る招き猫の友人もいません。
でも、人間同士も意外とそれぞれ違いますよね。
夏がだめだったりセロリが好きだったりしますよね。
好き嫌いだけじゃなくて、もうちょっと深いところで違うはず。

これが優しさって毎度同じ物差しを使うよりは都度目の前の人と向き合って一から関係を気づいていきたい。
記憶や感情が流れ込んでこないので、頭のてっぺんから爪先まで理解することはないでしょう。
シンジ君ばりに「わっかんないよ!」って言いたくなるときだってある。
けど、試行錯誤はできるんじゃないかな。

とうことで以上が僕が「優しい気持ちになれる」の先にたどり着いた現在地です。

現在地なのでそのうちやっぱ違ったわ!ってなったら第2弾を書きます。

予期せぬタイミング

ここまで書いて、夏目友人帳ってまだ終わってないんだよ!。
先月2024年の12月までアニメも7年ぶりに新しいシーズンが放送されていたという、今からならNetflixで一気見ができるとても素敵なタイミングです。
※このエッセイを書き始めた時は放送開始直前だったな…。
ちなみにアニメ新シーズン「夏目友人帳 漆」で個人的におすすめの話は、
第5話「ちょびの宝物」と第11話「名前を教えて」です!

更に31巻が9月5日発売に発売しました。

この記事を読んで見始めた人、読み始めた人は最高にいいタイミングじゃないですか!
夏目はこれからどんな人や妖と出会い、どんな関係を気づいて、どう成長していくのか。
一緒に見守りませんか。

サザエさん方式でずっと続いて欲しい気もしますし、どこか進展があって欲しい気もする。
とくにニャンコ先生と夏目の祖母レイコさんの話とかベタだけど、やっぱりみんな気になってますよね。

さてさて、これで終わりますが、きっとしばらく夏目友人帳関係のことは書かない前提で同じ緑川ゆき先生の作品をもう一つおすすめしたくご紹介します!

「蛍火の社へ」

少し不思議な恋愛の話です。
夏目友人帳は恋愛の話は少ないですので、恋愛ものが好きな方はこちらでぜひ接種してください。
これがまた、いや、もう、ね。
すごく良くて話したいけど、ネタバレしたくないので多くは言いません。
劇場版にもなっていまして、そっちも非常におすすめです。

ホントはもっとね、この話を良いんだよ!っていうのがたくさんありますので聞いてくれる方はお声がけください。

また、この記事はあくまで僕の解釈です。
夏目友人帳を観てきた年月を通して、そのときどきの僕の心情や置かれていた状況などがきっとこの作品を僕自身がどのように受け止め、解釈したかに多分に含まれていると思います。
一個人の意見として読んでいただけましたら幸いです。

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