将棋AIを用いた人間用定跡ファイル生成方法

前回記事の続き。

今回は将棋AIの連続対局機能を用いて定跡ファイルを生成する方法を紹介する。新規性は全くなく、2016年にプロ棋士の千田翔太氏によって紹介されているのだが、氏のアカウントが閉鎖されているため、現状検索してもまとめ記事しか出てこない。(詳しくは後述する)
私自身の備忘と紹介を兼ねつつ、もっといい方法があれば教えてもらいたいなと下心を持ちながら書いている。
(追記)なお、ここで触れるのはいわゆるAI用の定跡ではなく、人間用の定跡棋譜ファイル(.kif、KI2等)となる。


1、やり方

【用意するもの】
・課題局面
・将棋AI、ShogiGUIの動作に耐えるPC
・動作させる時間

①課題局面をセットする。
 とりあえず適当な局面にしてみた。

②自分の許容できる時間設定、エンジン設定をして連続対局させる 
 今回は記事用に早めに終わりそうな設定にした。
 画像の赤枠部分は必須設定となる。
 理論時間=持ち時間×対局数×(指定手数-現局面の手数)になるので、寝る前、外出前にセットして戻ってきたら終わるくらいの時間を逆算して設定するのがよいだろう。
 当時は5秒~10秒を回すのが流行っていて、10秒×100局×30手で500分なので、寝る前に回していた。
 千田先生の公開されたC-bookはApery10秒+人力だったように記憶している。
 CPU事情とスリープにならないようにだけ気を付けながら、自分に合う設定を見つけてほしい。
 ※CPUに負荷がかかるので室温、CPU温度が上がりすぎず、火災にならないよう気を付けてください!(念のため)(炎上リスクケア)

③完成した棋譜を眺め、色々ありそうな手を追加する
 例えば、この局面では①86歩(27局)②58金(2局)③25歩(1局)だったが、77角と指した場合はどうなるか、試したかったら動かして継ぎ足す。


 とりあえず77角を設定して、3局指させてみたが持久戦を志向することはなかった・・・
 左美濃や抑え込みの将棋を好んでいたので、右四間穴にしたければそこまで進めてからかけるべきかもしれない。

2、おすすめの戦型

 ここまで読んだ方なら想像がついた方もいるかもしれないが、駒がぶつかった局面から検討させるのがおすすめだ。
 結果を見てから駒がぶつかった局面を用意した方が良かったことを思い出したが、時すでに遅しだった。
 角換わりであれば、特定の局面から仕掛けた場合の展開で初見殺しできそうな形を考えるとか(もう古いかもしれないが45桂速攻や72金型腰掛け銀など)
 振り飛車なら、急戦で駒がぶつかったところからがいいだろう。
 ちなみに私は現役時代にトマホーク研究のお供として有効活用していた。おかげで練習将棋のトマホークは相当決まったが、本番では一局も指せなかった。

3、おまけ(次の一手)

 副産物としてできた定跡次の一手を紹介する。やや簡単かもしれないし、どこかの手筋本で見たことがあったような気もする。正解は最後に紹介する。

1、スピードが求められる局面。△41歩が利くのである程度思い切った手を。

2、四間飛車VS山田定跡からの変化図。▲22歩と打たれて忙しい。
  相手の攻めを遅らせて反撃の糸口を見つけるには・・・?


4、著作権のはなし

 関係ないようで少し関係あるので、一応触れておく。
 当noteで定跡ファイル作成方法を紹介したため、同じ轍を踏む人がいてはいけないので、炎上事例もあえて紹介する。
 にわか知識で物事を語るので、間違っていたらごめんなさい。

1、棋譜の著作権のはなし

 棋譜には著作権はないとするのが従来より通説的見解とされていた。
 また、今年の1月には大阪地裁でも「棋譜」を「公表された客観的事実」とし、著作権該当性を認めないとする判断が出ている。

 しかしながら、棋譜の引用を無制限で行うと将棋界のビジネスが揺るがされることになる。
 そうしたこともあってか、王将戦は「棋譜利用に関するガイドライン」を定め、必要に応じて利用料を徴収できる仕組みとしている。

 実効性のあるガイドラインかどうかは諸説あるようだが、ある程度新聞社が儲からないと今後タイトル戦が続くかわからないので、仕方ないのではと私自身は思っている。
 お金のある社会人諸氏がいれば適度に将棋界にお金を落とそう!と言っておきたい。

2、定跡ファイルの著作権のはなし

 棋譜に著作権は認められないのが通説なので、それを編纂した定跡ファイルにも著作権は認められないとするのが妥当と考える。
 つまり上記で取り上げた方法で定跡ファイルを生成→公開しても著作権は存在しないため、棋書に引用するのは自由である。
 とはいえ、定跡ファイル作成は相当な労力を伴うため、引用されて商用利用されると嫌な気持ちになる人もいるだろう。
 実際、2018年5月に紹介された千田翔太氏の「C-book」を参考文献に、2018年6月にsuimon氏が「コンピュータ発! 現代将棋新定跡」を出版。
 本書の内容はC-book、千田翔太氏の将棋世界上の連載と重複する部分があり、マイナビ社が謝罪リリースを出したという件があった。(現在は削除済)
 今思えば著作権的な話というより、棋書における新規性の乏しさやそれで収益をあげていることに対する批判であったように考える。
 「定跡ファイルを作るのはそれだけ大変なので、雑に扱われるとむっとするよね。法的には多分問題ないけど、使う側は公開してくれた人の感情にも寄り添った利用を心がけてね。自分で公開するなら使われても怒らないでね。」くらいの話でいいと思っている。

5、まとめ

・この定跡ファイル作成は「角換わり▲45桂速攻」「藤井システム」みたいに駒がぶつかった将棋や既に駒がぶつかった局面でやるのがおすすめ。
・ここで生成された定跡ファイルの公開、利用は気を付けて。公開されているもので何か営利目的で使うのは危険なので要注意(ソフトウェアのライセンスに触れる可能性もあり)

6、次の一手の回答

 1、△68銀!
  結構簡単かもしれない。取ればもちろん△79角がある。

 ちなみに▲同金△79角▲69金は詰みがある。
 このnoteの読者層には簡単だと思うので答えはあえて書かないでおく。
 一直線で手数は長いので、読みのウォーミングアップにでも。(先後反転)

2、△23歩!
 こういう手、いいよね。
 24の銀が動けばこちらも△35銀と出るスキができる。
 以下、▲同銀成△46歩▲同歩△35銀と進むのが一例で一局。


とりあえずこんなところで。
準備段階で疲れてしまったが、将棋上達計画は果たしてうまくいくのだろうか。
継続さえできればなんとかする自信はあるので、他の忙しさと共々クリアしていきたい。
ではでは。


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