茅ヶ崎のりゅうさん

茅ヶ崎のりゅうさん

マガジン

最近の記事

意識の高いスローライフ

東京や横浜や大阪、都市部でバリバリ働いている友人たちが茅ヶ崎に遊びにくると、彼らのエナジーの高さと行動のスピード感にちょっぴり驚く。 彼らは忙しい日常から解放され、リゾート気分で茅ヶ崎を訪れ、海と太陽と心地よい風とビールを満喫しにきているのだから、ふだんからそこに生息している僕と遊ぶためのテンションがちがうのは当たり前だ。 逆に、長いことオーストラリアに住んでいて、午前中だけ働いて、午後はサーフィンをして、夕方には缶ビールを何本も空にして早々にベッドに入る──なんて暮らし

    • 雨の日の充電

      のろい台風がゆき、ようやく晴れた。 たまっていた洗濯物をウッドデッキに干す。 ジメジメした空気と気圧の関係で自律神経がチョイやられていたのだけれど、降りそそぐ陽光がそんな憂鬱も吹き飛ばしてくれるようだ。 書斎にいるのはもったいないので、自転車で海に出る。 芝生の丘で海を眺める。 風はまだつよく、波は荒れ、海は濁っている。 年配のおじさんがやってきて、海の事故の話をはじめた。 朝からそんな話を聞きたくないなあ、と思った。 でもだんだん、いろいろ思い出してきた。 死を想う

      • よく晴れた朝、男の怒鳴り声が聞こえてきた──。

        よく晴れた朝、突然、外から男の怒鳴り声が聞こえてきた。 起きしなに憂鬱な気分になりそうだったので、声のする方角の窓を閉めたが、しばらく心はざわついていた。 彼が怒鳴っている声そのものより、いまこの瞬間に、あのような荒ぶる声で責められ、震えている誰かがそこにいるかもしれない──ということが、堪えられなかった。 それから書斎のソファで本を読んでいると、窓の外、電柱に数羽の雀がとまって、ちゅんちゅん鳴いているのが聞こえた。 それはとても心地のいいさえずりで、僕はボブ・マーリ

        • アイスクリームのないコーヒーフロート

          蒸し暑い午後、退屈から逃れるように喫茶店へいく。 甘いものがほしかったが、これといったケーキやデザートが見あたらないので、いつものコーヒーフロートを注文する。 読みかけの本が三冊。ちょっと迷って、なんとなくヘミングウェイの〈清潔で、とても明るいところ〉を読みはじめた。 暗いが淡々と展開するその短編に、すぐに夢中になった。 話の内容が、最近気になっていたことや身のまわりのできごととなんとなくリンクしているように感じたのだ。 だがそれも束の間──となりのテーブルのおばさ

        意識の高いスローライフ

        マガジン

        • 竜さんの「つぶやき以上○○未満」
          94本

        記事

          しあわせになろうよ──猟奇的でビョーキ的な〈憑き物〉にサヨナラ。

          ──過日のこと。何年か前に買って読んでいなかった小説をなんとなく手に取ってみると、なかなか面白くて、思わず時間を忘れて夢中になっていた。 ところが、読みすすめていくと、いたるところに傍点や傍線が引いてあるので、驚いてしまった。 あらためて確認したが、古本屋で買ったのでもなければ、死んだ親父の書棚からもらってきたものでもない。私が藤沢のジュンク堂で自ら買い求めた記憶があるし、本自体の佇まいも真新しくシャキッとしている。 私は一瞬ぞっとして、今テレビで観ている〈初恋の悪魔〉

          しあわせになろうよ──猟奇的でビョーキ的な〈憑き物〉にサヨナラ。

          広尾の森に吹いた風──もう二度と自分を嫌いにならないために。

          エッセイを書きたい、エッセイを書こう、と思い立ち、noteを再開するにあたって、自分の中でなんとなく決めていたことがある。それは、 ──なるべく自分のことを書かないこと。 なーんて思いながらも、オートバイのことを書こう、と筆を執った再開一発目の〈私を引きずりまわせオートバイ!〉では、オートバイを通じて見事に自分のことばかり書いてしまった。 自分ではない何かのことを書いても、結局自分のことを書くことになる。 村上春樹さんは、──カキフライのことを書いても、つまるところ自

          広尾の森に吹いた風──もう二度と自分を嫌いにならないために。

          アンミカの白いタオルをぎゅっとね。

          ──幸福には、二種類ある。 私もそれなりに人生の悪路や沼地を歩いてきて、何度かちょっとケガを負ったりもして、ようやくそれがわかってきた。 私たちは、身に起こる出来事や現象に幸福を感じることが多い。というか、幸せだとか不幸せだとかは、そういう出来事がもたらしてくれるものだと信じこんでいる。 好きな人と結婚した。仕事で成功した。お金持ちになった。うまいもんを食った。イビサに旅行した。ポルシェを買った。夢が叶った。褒められた。認められた。許された。愛された。 たしかにそれら

          アンミカの白いタオルをぎゅっとね。

          私を引きずりまわせオートバイ!

          〈7月29日・歯医者・11時30分〉──オートバイで? カレンダーには、そう記してあった。 私が住んでいる茅ヶ崎から、鎌倉の歯医者までは、オートバイなら三十分ほどで行ける。 でも、昨年の春に入院してから、オートバイにはまったく乗ってない。なんとなく、怖かったんだ。 その日の朝、カレンダーに記された、──そろそろ鎌倉くらいまでオートバイで走ってみるかい?──という、いつかの私から今日の私へのメッセージを読んでも、その気にはなれなかった。 私のオートバイは、何年か前に、

          私を引きずりまわせオートバイ!

          ピアノと人生の転回系

          毎日、ピアノばかり弾いている。 長年の夢だった、__リビングにピアノ、を実現したのだ。 家族がいた頃は、ボクらの寝室に娘の電子ピアノを置いていたのだけれど、あまり弾くことはなかった。 寝室というのはボクにとって、お酒を飲みながら本を読んだり、映画を眺めたり、音楽を聴いたり、リラックスする部屋であって、能動的な音楽性が発揮される場所ではなかったんだろう。 リビングにピアノがあると、ふとした瞬間に、鍵盤に触れることができる。 書斎からリビングに降りて、一息つこうか、とい

          ピアノと人生の転回系

          リードを持つボクの手に、アンの動きはほとんど感じられない。

          週に二日、アンと一緒にドッグランへ通っている。 木曜日は、犬の幼稚園。 親元(飼い主)から離れて、様々な犬種、様々な年齢の複数頭の犬とドッグランを走りまわることで、アンは社会性を身につけていく。 犬は社会的な動物であり、自分と違う人間という生き物とだけ暮らしているより、同じ性質と本能を持つ犬たちと関わることで、様々なことを学び、歓び、脳が活性化する。 思いきり走りまわり、他の犬たちと激しく身体をぶつけあい、ときには聞いたことのないような獰猛な唸り声をあげ、歯を剥きだし

          リードを持つボクの手に、アンの動きはほとんど感じられない。

          この夏、ラブラドールの仔犬と、海と映画とコーヒーフロートと。

          2021年10月14日木曜日に、生まれて二ヶ月ほどのラブラドール・レトリバーの仔犬をわが家に迎えました。 __わが家、といっても、この夏、家族は別の場所で暮らすことになったので、傷心を抱えた中年男子が独りいるだけの、無駄に広い一軒家なんだけど。 いやあ、この頃は大変だったな、今思い出しても。 Instagramとかにあげてる写真なんかでは、もちろん、元気な様子、陰陽の陽を循環している自分を出してたけど、他の時間、__独りでいるトキは、まだまだシンドかった。 精神的にも

          この夏、ラブラドールの仔犬と、海と映画とコーヒーフロートと。

          ボクはボクの今日を暮らす。アナタはアナタの今日を暮らす。

          ボクはボクの今日を暮らす。 アナタはアナタの今日を暮らす。 ボクはアナタを喜ばせたり、アナタの期待にこたえたり、アナタを幸せにしたり、アナタのために生きてるわけじゃない。 アナタだって同じ。ボクの期待にこたえたり、ボクを喜ばせたり、ボクのために生きてるわけじゃない。 アナタはアナタ、ボクはボクだ。 アタリマエだよな。 でも、そんな独立した、まったく別の人間であるボクらが、この広い地球の上で、この長い歴史の中で、奇跡的に出会って、 目が合って、言葉を交わして、同じ時間

          ボクはボクの今日を暮らす。アナタはアナタの今日を暮らす。

          秋こそ、海においで。今日も風が吹いているよ。

          ここのところ、バスや自転車で街に出ることが多かったので、強風を覚悟しつつ、なんとなく徒歩で汀へ出た。 なるほど。想像以上に強烈なオンショア——海から陸へ吹く風——が吹いている。 病を得てからというもの、陽光も海風も強すぎるとしんどくなってしまったが、 ふと立ち止まり、深呼吸してみると、乾いている秋の風にも、夏ほどではないにしても、湿り気がそれなりにたっぷりと含まれているのが感じられた。 鼻が通って、呼吸がラクになり、心の管に起こしていた炎症や詰まりが取れれ、スムーズに

          秋こそ、海においで。今日も風が吹いているよ。

          生まれてきてくれて。ボクを見つけてくれて。ボクの人生に足を踏みいれてくれて。

          __どうやら、風向きが変わっているのはオレだけじゃないみたいだぞ🤔  という感覚が、ここのところ、ずっとあった。  とても仲が良かったのになぜかしばらく会っていなかった親友や旧友や戦友と再会したり、友人知人の動向をSNSで眺めたり、あらためて繋がったりしてみると、  多くの人たちが、ここ数年、コロナより前の段階から、自覚的、無自覚的に、心や身体や暮らしや歩む道に鬱屈や炎症を抱えていて、  本来ならどこかへ発散、発揮し、豊かさや歓びや愛ややさしさを循環するべきエネルギー

          生まれてきてくれて。ボクを見つけてくれて。ボクの人生に足を踏みいれてくれて。

          五十冊読んでみて、それでも死にたいと思ったら、また手紙をくれ。

          爆笑問題の太田さんがテレビで、__悩み相談ダイヤルに電話したり、本を読んだりするのもひとつです、と神妙な顔で言ってた。 さらりと言ってたので聞き流してしまいそうだったけど、僕は深く何度も頷いてた。 __これまで、小説を読んで、何度救われてきたことか。 正直、__もう人生を終わりにしたい、と思うくらい混乱しているときには、小説を読んでも映画を観ても誰かと話しても、何も入ってこないかもしれない。 けれど、そうなる以前の段階だったら、小説を読むというのは本当に救いになると思

          五十冊読んでみて、それでも死にたいと思ったら、また手紙をくれ。

          朝、パソコンの壁紙を替える。

          朝、書斎に入って、パソコンの壁紙を替える瞬間が好きだ。 ベッドを出て、水を飲んで、歯を磨く。子どもたちに朝食を食べさせ、洗い物を片づけ、洗濯機を回す。コーヒーを煎れて、書斎のiMacに向かう。 〈Unsplash Wallpapers〉というアプリを使って、世界中のセンスのいいフォトグラファーの写真から、その日の気分で直感的に壁紙を選ぶ。 南の島の遠景だったり、ぷかぷか浮かぶクラゲの姿だったり、どこか外国の街の壁の模様だったり、様々だが、その日、そのときどきによって、好

          朝、パソコンの壁紙を替える。