【書評】早坂信哉『最高の入浴法』
今回は、早坂信哉さんの『最高の入浴法』という本を紹介します。
日本人にとってお風呂というのはとても身近なものなのではないかと思います。日本のほとんどの家にはお風呂が標準で備え付けられていますし、温泉大国でもある日本には入浴を「楽しむ」文化もあります。
とはいえ、最近はシャワーだけで済ませてしまうという人も多いと思うのですが、著者の早坂さんは「シャワーだけなんてもったいない」と主張しています。
本書では、一般の方が実践できる、もっとも優れた健康法として入浴を紹介しています。この記事では、この本の面白さとともに湯船につかることで得られるメリットや、正しい入浴の方法もお伝えできればと思います。
本書の基本情報
基本情報概要(「はじめに」より
タイトル:『最高の入浴法』
著者:早坂信哉(医学博士/温泉療法専門医/東京都市大学教授)
出版社:大和書房
価格:1,400円+税
ページ数:207p
ISBN:978-4-479-78449-4
概要
押さえておきたいポイント
入浴の常識を覆す新しい情報が満載
「全身浴より半身浴の方がいい」
「ボディーソープを使って毎日体を洗った方が清潔だよね」
「とにかく一番風呂じゃないとダメ!」
などという思い込みをしている方、いませんか???
それ、誤解しているかもしれません。
この本を読むと、入浴の新常識を知ることができ、これまでの間違った思い込みを払拭することができます。最新の知識を得ることで、より効果的に安全に入浴することができるでしょう。
例えば、「半身浴」はなんとなく体にいいイメージを持たれている人が多いと思います。かつての自分もそうでした。
しかし、本書では、半身浴より全身浴の方が入浴による恩恵を得られると書かれています。
確かに、全身浴は体にある程度の負荷がかかるので、基礎疾患のある方や高齢の方にとっては危険が伴います。なので、そういう方には半身浴を勧められています。
しかし、基本的には全身浴の方が、静水圧や浮力の作用が働き、疲労回復、温熱、ダイエット等様々な効果を得ることができるそうです。体にある程度の負荷がかかるとはいえ、健康な人にとってはそれは「必要な負荷」であり、体に何らかのダメージを負わせるような力はありません。
メディアでは「半身浴」のメリットがよく紹介されているので、半身浴の方がいいのでは?と思ってしまいますが、実際はそうでもないのです。
ボディーソープで毎日体を洗っているという方も多いと思いますが、実際は「湯船につかるだけでほぼ体の汚れはとれる」ため、2日に1回くらいのペースで構わないようです。逆に、ボディーソープを使ってタオルやスポンジ等で体をこするのは、肌にダメージを与えてしまうことにつながるので避けた方がいいです。
「一番風呂」へのこだわりがある人もいると思いますが、綺麗すぎるお湯につかるのは肌に負荷がかかると言われており、実は2番目以降に入る方がいいそうです。どうしても一番に入りたい人は、入浴剤を入れることを勧めておられます。
このように、間違った理解やこだわりのために、かえって健康を損ねていたという事例がこの本にはたくさん載っています。本書の面白さはここにあるのかなと、個人的には思っています。
本当に「入浴」が健康に繋がるのか
本書では入浴を「もっとも優れた健康法」として取り上げられていますが、本当に私たちにとって「もっとも優れた健康法」なのか、この本を読んで個人的に思ったことを書いていきます。
結論としては、”もっとも優れた”は言いすぎじゃないかな、と私は思いました。様々な調査結果から述べられているのですが、「入浴」以外の要因が大きく影響していそうなものが多々見受けられたからです。
ただ、正しい入浴が健康にいいことは確かなので、食事・運動・睡眠にプラスして「生活の質を向上させる」「幸福度を上げる」ための補助的な役割として位置づけておくのはいいと思います。
筆者の言う通り、入浴は「取り組みやすい健康法」なので、正しい入浴の知識を得ておくのは、有益だと思います。実践できそうなところから取り入れてみてはいかがでしょうか。
入浴の7大健康作用とは…!
入浴の健康効果として、本書では主に7つ挙げられています。
ここではそれらを簡単に紹介していきます。
入浴の7大健康作用
➀温熱作用
⇒温熱効果で血流UP。新陳代謝が活発になり、体がリフレッシュする。また、神経の過敏性を抑える効果、神経痛などの慢性的な痛みを改善する効果、筋肉をほぐす効果もあります。
②静水圧作用
⇒お湯の水圧によって全身がマッサージされた状態になり、血流や生理に影響を与える。むくみ解消にも効果。
③浮力作用
⇒水中にいる間は重力から解放される。関節や筋肉の緊張がゆるみ、リラックス効果が得られる。
④清浄作用
⇒有害な物質や微生物、不要な皮脂などを除去。温かいお湯に浸かることで毛穴が開き、汚れや皮脂を流れ出させる効果もある。(シャワーよりしっかりとお湯に浸かる方が効果的)
⑤蒸気・香り作用
⇒上記で湿り気を与えることで、鼻やのどの粘膜の乾燥を防ぐ。免疫力低下を防ぐ働き。好きな香りのアロマオイルなどを垂らすことで、自律神経の調整にも役立つ。
⑥粘性・抵抗性作
⇒水中で体を動かすことは、陸上の約3~4倍の負荷がかかる。ゆっくりとした運動やストレッチを取り入れることで筋肉に刺激を与えることができる。
⑦開放・密室作用
⇒衣服を身に付けない「非日常的」な空間のため、日常から解放されるリラックス効果が得られる。
いかがでしょうか。思っていた以上に、入浴から得られる恩恵、沢山ありませんか??
すべてシャワーでは恩恵を受けにくいものとなっています。湯船にお湯を張って、ゆっくり浸かる時間を作ってみましょう。
全ての入浴効果を得るためには、”正しく”入浴する必要があります。本書には様々な注意事項やポイントが記載されているので、それらを押さえながら入浴を楽しんでください!!
まとめ
入浴の目的は主に”体の洗浄”だと思うのですが、湯船にゆっくりと浸かることで、血流を良くしたり、リラックス効果を得たり…と洗浄以外の効果も得られるようになります。
ここでは紹介しきれませんでしたが、冷え性や二日酔い、生理痛など様々な体の不調に合わせた入浴方法についても書かれています。
入浴時間は15分程度で良いので、お湯を張るのがもったいない、ゆっくりお湯に浸かる時間がもったいない!と言わず、日々の疲れをしっかりとって生活の質を向上できるように、入浴について考えてみてはいかがでしょうか。