【書評】『SINGLE TASK 一点集中術』

回は、デボラ・ザックさん『SINGLE TASK 一点集中術』の書評をしていきます。
シングルタスク・マルチタスクという言葉、特に職場でよく聞きますよね。
発達障害の話でも、シングルタスクの話はよく出てきます。
「マルチタスクの方がいい」「シングルタスクは能力が低い証拠」など、様々なことが言われていますが、実際のところどちらの方がいいのか…というか、タイトルの通り”シングルタスクのメリット”についてこの本ではたくさん書かれています。
シングルタスクに良くないイメージを持っておられる方には目から鱗の内容だと思います。

本書の基本情報

基本情報

タイトル:『SINGLE TASK 一点集中術』
著者:デボラ・ザック
   (コーネル大学客員教授→コンサルティング会社CEO)
出版社:ダイヤモンド社
価格:本体1,500円+税
ページ数:220p
ISBN:978-4-478-06659-1

推薦文(表紙折り返し部分より)

この方法はあなたの生産性とパフォーマンスを劇的に変える。
本書は「時間管理」と「自己管理」についてあなたが生涯に読むものの中で、最も重要な一冊になるだろう。
ーブライアン・トレーシーー

引用元:『SINGLE TASK 一点集中術』表紙折り返し部分より

おすすめポイント

シングルタスクのメリットを知ることができ、価値観が変わる!

まず、この本では「マルチタスクの方が有能」という思い込みをなくすところから始まります。世間的には、まだまだ「マルチタスク」の人間を優遇したり、マルチタスクで仕事をこなしていくよう求められることが多いように思います。
確かにマルチタスクは、”同時並行で仕事をしているように見える”ので、一見非常に効率よく見えてしまいます。しかしながら、著者のデボラ・ザックはマルチタスクについてこう指摘します。

「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。

集中力を失い、「生活の質」「対人関係」「あなたにとって大切なことの全て」が犠牲になる。

そもそも、マルチタスクなんてものは存在しない!

どうですか?
一つ目の項目は特に、マルチタスクを苦手としている方は実感されているのではないかと思います。
「そもそもマルチタスクは存在しない!」と言い切っているところが面白いです。その理由をデボラ・ザックはこのように言っています。

脳は一度に1つのことにしか集中できない。

一般に「マルチタスク」と考えられている行為は「タスクスイッチング」に過ぎない。

「脳は一度に1つのことにしか集中できない」というのは、神経科学者の間では常識らしいです。また、私たちの行っている「マルチタスク」は、シングルタスクを細かく切り替えているだけ、といいます。
ということは、マルチに仕事しているように見えるよう、シングルタスクを細かく切り替えてごまかしているだけにすぎない、ということです。
この「細かく切り替える」という行為に多くの無駄が生じているのです。
なんとなく、マルチタスクの弊害に気付けましたか??
実は私たちは、効率の悪い仕事のしかたを求められていたのです。

では、シングルタスクのメリットについて箇条書きで簡単に触れていきましょう。

脳の「集中力」を最大化する。

複数の要求に直面すると脳機能が落ちる。

フロー状態(超集中)になれる。マルチタスクだとフロー状態になれない。

ストレスや不安から解消される。

いかがでしょうか。タスクの切り替えがなくなることで、余計な不安から解消され一つのことに没頭できると著者は主張しています。確かに、マルチタスクだと2つ以上のことを同時に考えなければならないので、1つのことに100%の力を発揮できないですよね。
2つのことをするにしても、優先順位をつけて、1つずつ集中して取り組んだ方が時間効率がよさそうです。

このように「シングルタスク」のメリットをたくさん書かれています。マルチタスクに幻想を抱いていた人は、いい意味でその幻想を崩されることでしょう。

シングルタスクで「時間管理」や「人間関係」の改善も期待できる。

シングルタスクで作業をこなしていくことで、時間の管理ができるようになり、人間関係までも良くなる、とデボラ・ザックは主張しています。

シングルタスクなら相手に集中できるので、しっかり話を聞くことができ、信頼を得ることができる。

同時に頼まれごとをされたときは、一度断っても、後でちゃんと時間を確保することを約束すれば誠意のある人間だと思われる。

一つずつこなすことで、作業時間の予測がしやすくなり、時間の管理ができる。

主にこのようなことを挙げています。
同時に頼まれた時、どちらにもいい顔をして一緒に対応しようとしてしまいますが、脳は2つ以上のことを同時に処理できないので、結局どちらも中途半端になってしまいます。しかし、ちゃんと優先順位をつけて、ちゃんとどちらの時間も確保すると伝えれば、信頼してもらえそうですし、不安がなくなり一つのことに集中して取り組めそうです。
時間の管理においても、同時に作業をこなしていたら注意が散漫になってどのくらいの作業時間がかかるか見えにくくなりますが、一つだけ取り組むと決めたら、ある程度時間の見通しが立ちます。

シングルタスクにも限界があるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。他にも様々な具体例が挙げられており、シングルタスクでどうやって信頼を得る人間関係を構築していくか、どうやって時間管理を行い効率よく様々なことをこなしていくか、という事について書かれていますので本書を手に取って読んでみてほしいです。

まとめ

私自身、複数のことを同時にこなすことがとても苦手で、一つのことをしたらもう一つの方を忘れてしまうという事が多々ありました。それが原因で何度も仕事でミスをしたこともあります。
この本を読み、「シングルタスクでいいんだ」と思ってからは、一つの作業に集中し、マルチタスクでこなそうとしていたとき以上の能力を発揮することができるようになりました。しかし、まだまだマルチタスクで仕事することを求める人が多いので、その圧力に屈してしまうところがあるのですが…。
『マルチタスクは、タスクの切り替えを細かく行っているにすぎず、非効率的である』
という認識がもっと社会に広まったらいいなと思いました。
そして、もっと一人の人と集中して関わることで上辺だけでない良い人間関係を築いていける社会になっていけばいいなと、この本を読んで思いました。

どうしてもマルチタスクでこなせない…という方に少しでも勇気が与えられたら幸いです。


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