#03 もう辞める?

「もう辞めるね?」

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい
死にたい死にたい、、、。

何回聞いたことだろう?流石に僕も疲れ果てて言ってしまった。

「日和、一回しか言わないからよく聞いて?」

「何?」

「あのね?」

「今の私に何言っても無駄かも知れないけど。」

「それでも言う。一度しか言わない。だからどうか聞いて欲しい。
もう僕は死なないで欲しいなんて言わない。」

「どうして?」

「正直、もう同じこと何回も聞くのも言うのも疲れた。」

「そっか。そうだよね。」

「うん。もう付き合い切れない。あと一回でも同じ事言ったら僕とはもう
今後一切関わらないでくれ。」

「わかった、その時はそれでいい。」

「それでいいんじゃない。そうじゃなくちゃダメなんだ。」

「わかった。そうしよう。もしもの時は最後は笑顔で手を振ってね。」

「映画でもドラマでもない。VRで知り合ったからって僕らはリアルを生きてる。
笑顔で手を振れる自信はない。人が絶望する時ってどんな時だと思う?」

「んーなんだろう。思うようにいかない時?」

「じゃあ思うように行った人は
成功者と呼ばれるような人は絶望することはないね?」

「なくはないんだろうけど、ほぼないんじゃない?」

「じゃあなんで成功したように思える、出せばヒットメーカーでしかない
音楽を世にリリースした人が違法薬物に手を出す?なんで世界の多くの成功者が
精神疾患持ってることを独白する?」

「そんなの成功者の我儘だよ。恵まれた悩みだよ。」

「成功者にしかわかり得ない苦しみがそこにはあって。僕らの想像の域を
超越してると思うよ。なんで自分が一番なんだ?なんでそんなに自己中心的な
考え方しか出来ない?」

「私はずっとそうやって生きてきたの!仁人【ジント】にはわかんないんだよ。
なんで?どうしてそんな風にしか言えないの?世界を知ってる人が偉いの凄いの?
それなら私は一生偉くも凄くもなりたくない。富も名声も栄誉も何も要らない!」

「ああそうかよ!!じゃあ僕も売り言葉に買い言葉になるけど、もう日和の事なんて知ったことか!仲良くなれてたと思ってたのは僕だけなんだな?
ずっと僕の一方通行だったわけだ?何もかも。どうして伝わらないんだよ!
なんで何にも解ろうとしないんだよ!死んでほしくないって僕何回言ったと思う?その度に何度も何度も胸が苦しくなったよ。僕の精神がどうかなってしまうんじゃないかって時もあった。勝手に生きて欲しいってそう願ってたのは僕のエゴだったってことか。」

「ごめん。もう話すの辞めよう。もう声も聞きたくない。」

「ああ、わかった。じゃあサヨナラ。」

二人で話していてお互いにここまで語気を強めて喧嘩みたいになるのは
初めてのことだった。
もうこれで聞かなくて済むのかな。
こうなる運命だったんだ遅かれ早かれ。


それが今日になっただけのことだ。



                                                                                                             


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