かつて兵器だった機械人形たちの、第二の人生を描くアニメ『プリマドール』
今回紹介したいのは、2023年夏アニメ『プリマドール』です。
個人的にかなり好きな作品なのですが、このクールにはオバロ4期、リコリコ、よう実2期、よふかしのうたといった人気作がひしめいていたのもあり、話題を掻っ攫われてしまった印象があります。
しかし決して駄作というわけではなく、結構重めな設定や歌を主軸としたストーリーといった独自の魅力を持つ作品なので、今回の紹介記事執筆に至りました。
ざっくり概要
今回取り上げるのはアニメ版ですが、大本は「泣きゲー」で有名なブランド・Key によるメディアミックスプロジェクト。
アニメ以外にもキネティックノベルやコミカライズなどで展開されていますが、世界設定などはちょこちょこ説明が入るので、アニメ単体で見ても問題はないです。以下はあらすじのコピペ。
「大正ロマン×元兵器の自律人形」のハードな世界設定
今作の大きな特徴の一つが、華やかさと危うさが同居した独自の世界観です。
先述したように本作は重めの設定が多いものの、基本的にはむしろ楽し気な日常パートの方が多いため、明るい印象を受けます。
物語の舞台である黒猫亭(喫茶店)は大正時代風でレトロな華やかさがありますし、記憶のない自律人形(オートマタ)の灰桜が喫茶店の仕事を頑張るシーンや、オートマタたちの会話シーンを見ていると「日常系かな?」と勘違いしそうになります。
…しかし中盤以降から、メインキャラたちが戦争に用いられた元兵器であることについて本格的に触れられるようになり、
「オートマタたちの戦争の記憶」
「戦争の影響でオートマタそのものに恐れを抱く人々」
「オートマタを再度軍事利用しようとする軍の派閥」
といったシリアスな情報が明らかに。
この黒猫亭の華やかさと世界設定の重さのギャップが、作品に深みをもたらしています。
キャラたちの暗い過去や境遇によって、現在の彼女たちの健気さ・強さが強調されますし、
明るい日常シーンと戦争が絡んだシリアスシーンが交互に訪れる物語構成が、「黒猫亭を守るため頑張ってほしい」というキャラへの感情移入に繋がります。
本作は元がメディアミックスだからか、根底にある世界設定がかなり細かく考えられており、公式サイトには本作に登場するロケーションの解説だけでなく、オートマタが開発され軍事転用に至るまでの年表までもが載っています。
「キャラデザが可愛いけどストーリーが重い」というアニメ作品は世の中たくさんありますが、世界設定という点においては、それらに埋もれない強烈な個性を持っていると思います。
歌が鍵となるストーリー
元々戦争のために作られたオートマタたちにとって、「歌」という存在は、やがて戦争に代わる新たな使命、そして新たな希望としての意味を帯びていきます。
最初は灰桜以外誰も歌に興味を持っていませんでしたが、
それぞれのキャラ掘り下げ回で、役目をなくした彼女たちが歌に希望を見出す過程が丁寧に描かれるのがポイント。
戦争で恐れられる存在から、人を楽しませる存在になることを夢見るわけですね。
先述した複雑な世界観やキャラの心情に対し、
「歌を歌いましょう」
というシンプルな解決法を提示しているのが痛快です。
この一貫性のおかげで、この物語が希望の物語であることを信じ続けることができます。
(終盤はシリアス展開が続くので尚更)
そして最終盤では、彼女たちの歌がさらに大きな意味を持つことになるのですが…それはまた別のお話。
ともかく、歌が重要なファクターになっていることで、実際にキャラたちが歌うシーンがよりドラマティックに映り、作品に彩りを与えているのが大きな魅力です。
※ちなみに本作のキャストは全員個人名義で曲を出している若手声優で固められています。TVアニメ「プリマドール」公式サイト|スタッフ・キャスト (primadoll.jp)
おわりに
以上、『プリマドール』の紹介でした。
他にも人形技師の遠間ナギの存在や、灰桜の正体に関する怒涛の伏線回収など語りたい魅力がまだまだたくさんあるのですが、長くなってしまうので今回は泣く泣く割愛。
キャラデザと設定のギャップといい、世界観といい、刺さる人には刺さりまくるアニメなので、興味を持った方はぜひ視聴して確かめてみて下さい。
それでは今回はこの辺で。