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新たなユーザー調査手法の仮説を考え、仮説検証する社内勉強会をやってみた。-デジタルエスノグラフィ-

こんにちは。NEWhのフルカワです。

大企業における新規事業やサービス開発に特化したデザインコンサルティング&スタジオのNEWhで、サービスデザイナーとして多種多様な企業のサービスコンセプトやビジネスモデル開発のご支援をしています。

NEWhのサービスデザイナーユニットでは自分たちのスキルやナレッジを向上のために、月に1つユニット内で1名が持ち回りでテーマを決めて勉強会を行っています。
今回のnoteでは「デジタルエスノグラフィ」をテーマに行った勉強会について書きたいと思います。

デジタルエスノエスノグラフィとは

デジタルエスノグラフィは今回の勉強会をするにあたって生み出した造語です。

SNS上の投稿内容が新しい価値観や課題、欲求の発見につながるのでは🤔

という仮説の下に、リアルの場で行動観察を行うエスノグラフィ(🚨)に対して、特定のセグメントの人のデジタル(SNS)上の投稿を分析し、そこから何か新しい発見ができるのかを実際に行い、検証する仮説検証型の勉強会テーマです。

(🚨)エスノグラフィとは主に文化人類学で活用される定性調査のユーザーリサーチ手法であり、対象となる民族や集団の行動を観察して、その人々の価値観を見出していきます。

因みに『チョンキンマンションのボスは知っているーアングラ経済の人類学』や『「その日暮らし」の人類学――もう一つの資本主義経済』等の著書で知られる立命館大学先端総合学術研究科教授の小川さやかさんが「SNSで紡がれる集合的なオートエスノグラフィ 香港のタンザニア人を事例として」という論文で同じようなアプローチでの研究をおこなっております。

デジタルエスノグラフィ勉強会の進め方

今回では特に確立されたフレームワークがある訳ではないので、細かくルールを決めて勉強会を実行するのではなく、「SNS上の投稿内容が新しい価値観や課題、欲求の発見につながるのでは🤔」という仮説がどうだったのか?、どのようにやっていくと良いかを検証してみようというマインドセットで勉強会を実施しました。
また、せっかくのやるのであれば新しい発見につながる、普段の自分の周りにはいないセグメント(地方都市の学生やギグワーカー等)を対象とするというルールもつけました。

進め方

  1. 各自が1ヶ月間、デジタルエスノを実行する対象のセグメントユーザーを決める。※twitter, instagram等のSNSは個人で自由に設定可能

  2. セグメントユーザーの投稿を1ヶ月間、観察する。※なるべくtwitterのリプライやinstagramのコメント、タグ付け等のSNSから取得できる全ての情報を観察する

  3. それぞれの観察内容をまとめ、対象者の分析をユニットで発表する。

  4. デジタルエスノグラフィ自体のやり方に対する振り返りをユニット全員でする。

ちなみに私含むユニットメンバーの多くがセグメントユーザーのアカウントを探すのに苦戦してました。
この問題は今後は例えば、大学生であれば「テスト」「単位」といった彼らの日常に関連したキーワードを設定し、検索するとよりスムーズに見つけられそうです。

デジタルエスノグラフィはあんまり有効じゃない?

デジタルエスノグラフィの発表※ぼかしを入れています

1ヶ月間上記の進め方でデジタルエスノグラフィを実施し、上記のようなフォーマットで各自の観察結果を報告し、デジタルエスノグラフィのやり方自体の振り返りを行いました。

SNS上の投稿内容が新しい価値観や課題、欲求の発見につながるのでは🤔

実際に行ってみると、冒頭で立てていた上記の仮説に対するユニット内の結論としては「(かかる時間と得られる情報の価値のバランスを踏まえると現状では)厳しいのではないか」という評価になりました。
「SNS投稿は外部に向けてよく見せよう、このように見られたいというバイアスが他の調査よりも高くかかっているのでそれを踏まえた分析が必要になりより複雑になる」、「インタビューでは行える理由の深堀りができないため、推測の面がどうしても多くなってしまう」といった理由です。

デジタルエスノグラフィの良い面

結論としては「厳しい」という評価になりましたが、実際にやってみることで見つけられた良い面もありました。

それは「実際にインタビューやリサーチをする手前のインプットとしては有効になる」という面です。

あまり馴染みのないセグメントやペルソナはインタビュー実施前ではどうしてもデスクリサーチベースとなり、解像度が低くなってしまいます。
ですが、デジタルエスノグラフィを行うことで、普段はどのような行動をしているのか、その界隈でしか使われてない/通常とは異なる意味を持つ言葉等がインプットとなり解像度を高められ、ユーザーインタビューを行う際にはより深いから調査がスタートできます。

今回の取り組みではuber eatsの配達員について観察したメンバーからは「うばおん(=uber eatsで配達する)」という配達員界隈での言葉やお店側から配達員へ凍ったお水等が提供される等が発見されました。

今後はデジタルエスノグラフィと他の調査を組み合わせながらやっていけるとより良い調査ができるのではないでしょうか。

まとめ

NEWhでは企業のご支援の際だけでなく、自社の活動にも仮説立案とその検証を大事にし、様々なチャレンジを行っています。
今回はサービスデザイナーユニットで行った、実際にやってみることで新たな気づきを得る仮説検証型の勉強会の話でした。

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