3分でわかるオランダの宇宙活動法アウトライン
ロケットや人工衛星を打ち上げるための根拠法は、日本やアメリカにだけ存在するものではありません。今回は、オランダの法律を紹介します。
宇宙条約で求められる監督体制と許可制
そもそも宇宙条約は、宇宙活動の基本的なルールとして、民間企業などの非政府団体の宇宙活動を監督する義務について定めています(2条)。
月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。
宇宙条約を批准している国は、宇宙活動法のような「許可制度」を設けた法律によって国民の宇宙活動を監督しています。オランダもその国の一つです。
オランダの宇宙活動法
2007年に制定されたオランダの宇宙活動法は、主に以下の項目を定めています。
・宇宙活動のためのライセンス
・事故(災害)発生時の措置
・宇宙物体の登録
・損害賠償の取扱い
同法は、「オランダ王国内にて又はその内から若しくはオランダ籍船舶若しくは航空機にて又はその内から行われる宇宙活動に適用される」と規定しており、原則として宇宙活動が行われる場所に着目しています(属地主義)。
日本の宇宙活動法も属地主義を基礎としていますが、オランダの宇宙活動法では、宇宙条約に加盟していない他の国で宇宙活動をする場合にも適用の可能性が残されています。
宇宙活動のためのライセンス
原則
オランダで宇宙活動をするにはライセンスが必要です。ここで宇宙活動とは、「宇宙空間における宇宙物体の打上げ及び運用及び誘導」(第1章第1節a)とされています。
制限
とはいえ、全く無制限にライセンスが認められるわけではなく、以下の観点からの制限が付されることがあります。
・人と物品の安全確保
・宇宙空間の環境保護
・財政的保障
・治安の保全
・国家の安全保障
・国家の国際的義務の遵守
ライセンスは、取得候補者に損害についての補償能力があることを条件に、宇宙活動の継続期間に対応して発行されます。日本では、衛星ごとにライセンスが必要ですが、オランダではミッションごとにライセンスが必要とされているため、コンステレーションの構築に有利といわれています。
事故(災害)発生時の措置
安全や宇宙空間の環境保護、治安の維持、国家の安全保障を脅かすような事故が起きた場合、ライセンス取得者は、事故がもたらす結果を阻止、最小化、修復しなければなりません。
ライセンス取得者は、遅滞なく担当大臣に連絡の上、できるだけ早期に以下の情報も連絡する必要があります
①事故の原因と事故が起きた時の状況
②事故がもたらす結果の性質と程度を見極めるのに必要とする関連ある情報
③事故がもたらす結果を阻止又は最小化する若しくは修復するためにとられた、又は考えられる措置
④かかる事故が宇宙活動において再発するのを防止するためにとられた、又は考えられる措置に関する情報
宇宙物体の登録
ライセンス取得者は、登録に必要な情報を提供しなければなりません。
このことは宇宙物体登録条約でも規定されています。
損害賠償の取扱い
オランダ(国)の権利義務
宇宙条約7条とそれを具体化した宇宙損害責任条約は、打上げ国に対し、自国の宇宙物体が地表において引き起こした損害、飛行中の航空機に与えた損害について無過失責任(注意を尽くしていたとしても免れない責任)を負わせています。
これによって、被害を受けた側は打上げ国の過失を証明しなくてもよくなるため、被害者保護が実現できるといわれています。
もし、オランダが宇宙条約・宇宙損害責任条約に基づいて賠償金を払うことになった場合、オランダは損害を発生させた当事者から、その全額あるいは一部(保険でカバーされる範囲)を回収することができ、また、保険会社にも請求することができます。
オランダの宇宙活動法の特徴の一つは、宇宙空間で発生した損害についても規定されている点です。日本の宇宙活動法では規定されておらず、軌道上損害については過失責任(損害賠償請求する側が相手の過失を証明しないといけない)とされている点が異なります。
ライセンス取得者の権利義務
宇宙活動における事故について、ライセンス取得者は、保険でカバーされる範囲内の損害賠償責任を負います。
宇宙条約に基づかずに、被害者から直接請求がなされた場合については規定されていません。
参考:
・慶應義塾大学宇宙法研究センター 「オランダ 宇宙活動及び宇宙物体の登録に関する法律(宇宙活動法) 」
https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/netherlands/20130606.pdf