「キッズ訴訟」全記録⑥補正予算可決・予算執行留保の附帯決議否決
6月定例会の最終日、6月21日となりました。
朝の時点で、附帯決議に賛成する議員は6名が確実となっており、5名から確認が取れていませんでした。
この5名が賛成すれば、附帯決議は可決します。
最後の望みを賭けて、交渉に当たりました。
3名からなる会派には、議員個人としてキッズ事業には反対だという声もありましたが、会派として賛成することに決まったと知らされました。
これで附帯決議が可決することはなくなりました。
しかし、2名の議長会派が反対の意思表示をすることが決まり、全部で8名が附帯決議に賛成することとなりました。
多数には及びませんが、意思表示するには大きな勢力と言えるでしょう。
午前9時58分、会議はいつも通りに始まりました。
議案第56号の採決は午後にずれ込んだため、附帯決議の案文に理解と賛同いただくよう、昼休みに全会派を回りました。
案文の最終調整を行い、私が提出者として氏名を記入し、賛同者のいる会派からそれぞれ1名の議員が賛同者として氏名を記入、4名の議員の署名が書かれた議会案を議会事務局に提出しました。
昼休み中に恐縮ではありましたが、細部の調整があったため、ぎりぎりのタイミングとなってしまいました。
会議は午後0時59分に再開されました。
議案第56号の審議が終わり、委員会付託を省略して討論へと進みましたが、賛成派・反対派とも、ここでは討論は行いませんでした。
そして、全員の賛成により議案第56号が可決したところで「動議」と声を上げました。
動議の発言は議員生活において初めてのことです。
予算執行留保の附帯決議を議会案として提出したい旨の発言をし、起立採決が行われました。
名取市議会会議規則第15条に、動議の成立要件は本人以外に最低2名の議員の賛同が必要とあります。
採決において私を含む7名が起立をしたため、動議は成立しました。
本会議を休憩し、議会運営委員会において、附帯決議を議会案として提出するかどうかが協議されます。
議会運営委員会の会議録に、その協議の経過を見ることができます。
議会運営委員会において、賛成多数で議会案として提出することが決定しました。
本会議が再開され、追加日程として直ちに議題とされました。
提出者として、檀上から提案理由の説明を述べました。
議員提案の場合、案文をもって提案理由の説明に代えるのが通例となっています。
案文は以下のとおりです。
なとりスーパーキッズ育成事業(以下「本事業」)についてはこれまでに2回、議員協議会で説明が行われてきた。本年1月12日の議員協議会では、職員提案が基となった構想であることや、首都圏からの移住・定住を図るという目的のほか、事業概要やスケジュール等が説明された。議会側からは、職員による提案を積極的に採用しようとする姿勢や、新たな事業に挑戦することを評価する発言があった一方、市民が求めている事業ではないこと、プロモーションの効果への予測が甘いこと、オリンピック出場選手を育成するためには施設の整備が不十分であること、認定キッズの将来に責任を持てないことなど、事業の妥当性に対する疑問や懸念の声が多くを占めた。
5月22日の議員協議会では、1回目における議会側からの指摘事項への対応とともに、ドロップアウトプログラム体制とメンタルケア体制が新たに示された。議会側の懸念を解消するための努力が認められる一方で、本来営利企業が行うべきことを行政が行う理由や、スケートボード以外の競技の導入に向けた展望などの説明は尽くされておらず、不安材料が払拭されたとはいまだ言えない状況にある。
人口減少・少子高齢化問題への対応、市の認知度向上、児童生徒の体力・運動能力の改善は、本市の課題として議会側も共有しており、解決に向けた施策の推進に異存はない。しかし本事業の現時点での構想は、それらの課題を解決するには根拠が薄く、予想される弊害は多岐にわたる。こうした議会側の憂慮を押し切る形で、本事業費が補正予算に計上されたことは、執行部と議会との信頼関係に深い亀裂を生じさせることにもつながりかねない。
以上の理由から、下記3事項について取り組まれるまでの間、本事業に係る予算執行の留保を求める。
記
1 本事業に対する市民の理解を得ること
2 全ての児童生徒の立場を考慮し、スポーツに親しむ機会の拡大と、心身両面にわたるケアの充実を図ること
3 本市のシティプロモーションを目的とする諸事業について、効果を検証するとともに課題を整理し、本事業がその課題解決につながるとされる理由を明確に説明すること
以上、決議する。
令和5年6月21日
名取市議会
続いて質疑が行われました。
市長提出議案と異なり、答弁を求められるのは提出者である議員、すなわち私です。
本会議で議員が議員に質疑する場面は、意見書などごく限られた機会しかありません。
附帯決議を提出した理由等、可能な限り誠意をもって答弁したつもりですが、会議録から何が感じ取れるでしょうか。
質疑が終結し、委員会付託を省略、賛同者でもある荒川洋平議員が賛成討論を行いました。
反対討論はありませんでした。
採決の結果、賛成8、反対12で否決されました。
なとり市議会だより183号に審議結果が掲載されています。
https://www.city.natori.miyagi.jp/uploaded/attachment/5618.pdf
予算が可決され、キッズ事業の執行が決まったことにより、次は適正な運用がされているかどうかをチェックする段階へ進むことになります。
事業を止めることが出来なかったとは言え、徒労感はありませんでした。
むしろ附帯決議を提出し、賛成多数まであと一歩という結果を残したことで、将来何が起きてもしっかり説明責任を果たせるとの安堵の気持ちでした。
ただ、何かひっかかるのです。
何か重要なことを見落としているのではないかと…
6月30日、キッズ事業の実施要綱が告示されました。
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