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「キッズ訴訟」全記録Ⅱ⑦デジ田交付金の審査・交付決定

デジ田交付金の審査基準については、一般には公表されていないため、開示請求を行い入手しました。

まず申請要件として「①効果検証手法などのPDCAの整備」「②PDCAサイクルによる事業の見直し ※継続事業」「③効果の検証と事業の見直しの結果の公表」「④客観的なデータ等に基づく事業設計」「⑤ハード事業とソフト事業との連携 ※ハード割合が5割以上8割未満の事業」「⑥地域経済への波及効果 ※地域未来投資促進法案件」の6項目を○、✕、-で評価するもので、✕がないのことが必須です。
キッズ事業は②と⑤が対象外の-です。
修正後の実施計画書に「経済波及効果」という言葉が見られるようになったのは、⑥の影響かと思われます。

次に評価項目の中の基礎項目ですが「①目指す将来像及び課題の設定等」「②KPI設定の適切性」「③自立性」「④官民協働」「⑤地域間連携」「⑥政策間連携」「⑦デジタル社会の形成への寄与」の7項目をS、A、B、C、Dの5段階で評価するもので、横展開型の場合、①、②、③が「C」評価以上であり、③、④、⑤、⑥、⑦のうち3項目以上が「C」評価 以上、かつ、1項目以上が「B」評価以上であることが必須です。
キッズ事業は⑤、⑦が不記載です。

次に審査表です。
こちらも開示決定されたものです。

内閣府の担当者によると、黒塗り処理をしたため、解像度が低くなり、いくら引き伸ばしても文字が見づらいことに変わりはないので、このまま開示したということです。
審査表最上層右側の水色の枠に、左から「申請要件(県担当入力)」「基礎項目(加点項目以外、各審査担当者入力)」「付加項目(各審査担当者入力)足切り条件をクリアしたものが採点対象」と書かれています。
申請要件は6項目、基礎項目は7項目、付加項目は2項目あるのが分かると思います。
申請要件、評価項目、付加項目のいずれも、評価が書かれる部分が黒塗りとなっています。

4月1日、内閣総理大臣から宮城県知事に対し、デジ田交付金(地方創生推進タイプ)交付決定書が通知され、宮城県知事から名取市長に対し、その旨が通知されました。

スケボーと移住・定住促進との関係が見えないなど、内閣府の担当者から実施計画書の様々な部分に修正を求められていたにもかかわらず、それらの多くは十分な修正がされませんでした。
それでも交付金の交付が決定したということは、修正を求めた職員の判断が誤っていたということなのでしょうか。
令和5年度、デジ田交付金は全国の約2,700の事業を採択していますが、これほど適当でいい加減な審査や決定がほかでもされているとすれば、それは税の無駄遣いと言わざるをえません。
日本の統治の歪みがこういう所にも出ているという実態を知り、めまいがして倒れそうです。

キッズ事業の最初の構想からデジ田交付金の交付申請、そして交付決定までの流れを検証してまいりましたが、その目的すなわちゴールポストをどこに置こうとしてきたのかを整理すると、以下のようになります。

  • ①中堅職員研修:小学校4年生以上を対象に、様々な大会で活躍するトップアスリートの育成を目指そう

  • ②サマーレビュー:デジ田交付金を財源の一部に充てよう

  • ③宮城復興局との打合せ:デジ田交付金の要件を満たすために、シティプロモーションとして進めていこう

  • ④実施計画書の作成:スーパーキッズの育成と市への移住・定住促進を結びつけよう

まとめると、当初はトップアスリートたる認定キッズの育成に主眼を置き、その家族だけの移住・定住を目指していたが、事業化するに当たって財源を示す必要が生じたため、デジ田交付金を活用できないか検討したところ、シティプロモーションとして申請すれば交付の可能性があるという助言を受け、キッズ育成と移住・定住促進を強引に結びつけて交付申請を行い、めでたく交付が決定したという経緯だったのです。

ところで、改めて中堅職員研修レポートにおける移住・定住支援のメニューを見ると、①空き家バンクの創設、②移住定住コンシェルジュを委嘱することによる移住サポート体制の構築、③移住関連補助金の創設が提案されていたことが分かります。
これらは地方創生の趣旨に則った内容ですが、現時点で名取市が事業化済みのものは①に限り、②は不明、③は半分が国策です。
③に関しては、実際のキッズ事業では原則、認定者側で移住先を探して決定することとしており、市からは必要に応じて不動産会社を紹介するにとどめています。
また、移住に際しての移動費や引越費用、賃貸物件の場合の家賃補助や生活費といった認定者に対する特別な支援はなく、やむを得ず転出する場合も同様としています。

同レポートにおいて、教育支援のメニューとして、①児童・生徒に対する支援、②保護者に対する支援も提案されていました。
よくそこまで目配りできていたと評価したいと思います。
ただし②の中で、スクールバスの送迎ルートに新たに練習拠点を追加するとしていたものの、実際は施設までの移動費用等は認定者負担となりました。

結局、レポートの提案から引き継がれたのはスーパーキッズ育成の部分がほとんどで、それ以外の重要な視点の多くは削られたことになります。
あまりに手厚い支援はデジ田交付金の対象にはならないということなのでしょうか、理由を探るにはより踏み込んだ検証が必要です。

いずれにしても、市への移住・定住の促進という本来の目的に、スーパーキッズの育成が本当に寄与すると言えるのか、合理的な説明が示されることなく交付金の交付は決定し、事業がスタートする流れとなったことがうかがえます。

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