国産量子コンピュータ初号機は誰が作っているのか?
政府が4月に策定した「量子未来社会ビジョン」では、
と、令和4年度内に国産量子コンピュータ初号機を整備しテストベッドとして活用していくことが明記されました。
こうして政策文書に明記され、公開が刻一刻と近づいていると思うとテンションが上がります。
開発に取り組んでおられる研究チームに心から敬意を表します。
ところで、この国産量子コンピュータ、誰がどこで作っているかご存知でしょうか?
これ、量子未来社会ビジョン策定当時は政府内部ですら案外知られておらず(今はさすがにそんなことないです)、いわんや一般の方々をやということで、アウトリーチ不足を実感したところです。
ということで、アウトリーチ強化の一環として、国産量子コンピュータ初号機開発の担い手をささやかながら広報したいと思います。
国産量子コンピュータ初号機(予定)は理化学研究所(埼玉県和光市)で開発しています
結論から言ってしまうと、国産量子コンピュータ初号機(予定)は埼玉県和光市にある理化学研究所(理研)で開発しています。
研究室のリアルな風景はYoutubeでも公開されています。(かなり玄人向けですが…)
プロジェクトのリーダーは量子コンピュータ研究センターの中村泰信センター長。
中村センター長は、同じく理研の蔡先生とともに、世界で初めて超伝導を使った量子ビット(量子コンピュータの頭脳部分にあたるもの)の開発に成功した、量子コンピュータ生みの親の1人と言っても過言ではない先生。(お二人の当時の所属はNEC)
ご自身で開発した量子ビットを使って量子コンピュータを作り上げる中村センター長、めちゃくちゃ格好いいですよね。
以下、中村センター長のロングインタビュー記事がございますのでぜひご一読ください。
量子に支配される時代から支配する時代へ。量子コンピュータ初号機はまさにその第一歩かもしれません。
なお、国産初号整備のプロジェクトは、平成30年から始まった文科省「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」の一環で行われています。
Q-LEAPでは、「事業開始5年後(令和5年)に50量子ビットのクラウドサービス開始」が目標だったので、ビジョンがあろうがなかろうが、令和4年度内に国産初号機が整備されることは既定路線でした。(が、計画通り実現に迫っているのは本当にすごいことです!)
理研と富士通の量子コンピュータが令和5年に登場
さて、実はこの投稿を書くきっかけになったのが、8月22日に日経新聞の一面に出ていた記事でした。
量子コンピュータって理研じゃなかったっけ?富士通も出すの?と周辺で混乱されていた人が若干いた印象です。
富士通と理研は、令和3年4月1日に連携センターを立ち上げて、量子コンピュータの共同研究を本格的にスタートさせています。
富士通が出す量子コンピュータは、理研との連携センターでの共同研究の成果としてリリースするものです。
つまり、富士通–理研の連携で国産初号機とは別に量子コンピュータを開発しており、いわば2台目がリリースされるのが令和5年の予定となっています。理研の技術がしっかりと産業界に移転される重要な取組です。初号機と同じくらい応援しましょう。
富士通は今後の量子コンピュータのロードマップをYoutube動画で公開しており、令和8年(2026年)には1000量子ビットを目指す計画です。(9分50秒あたりから)
遂に我が国の企業からも量子コンピュータ開発のロードマップが出されるようになりました。
まだまだ海外企業との勝負はこれから(のはず)。
頑張ってほしいところです。
大阪大学では制御装置を開発
上記理研のプロジェクトには大阪大学も参画していますが、理研で開発した量子コンピュータ技術は、実は大阪大学にもすでに実装されています。
これを用いて、大阪大学発の量子ベンチャー「QuEL」が量子ビットの制御装置の開発を行なっています。
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