湯西川温泉の旅へ。(続編2)
先ほどの投稿の続きを。
天気は、朝の土砂降りの雨から回復して、曇り空になり、最終日目指していた奥湯西川地区へ車に同乗させて頂き、ゆっくりと向かった。最初の目的地は三十三世音観音堂。比較的すんなり見つかったが、観光的要素の少ない小さな古刹だった。山岳信仰があったのかな、と知り合いになった方はおっしゃっていたが、自分にもあまり知識がないのでよく分からない。崖の切り立った山道沿いなので、眼下に自然味溢れる川の景色が眺めることが出来た。そちらにも目を奪われる。ふとまた観音堂の敷地に目を移すと、石仏群のようなものもある。かなり由緒はありそうだが、基本、地元の人たちの大切な場所なので、写真も程々に次の場所へ移動した。
次の場所は平家狩人村ということだったが、あまり食指が動かないが、知り合いになった方の運転で場所を探した。
しかし、看板も出てこないので、試しにと脇道に登って行くと、ある施設らしい建物に辿り着いた。係員の方がいて、道案内して頂いたが、狩人村はもうないという。その方に聞くと、ここは湯西川全体に水を流す浄水場の施設らしい。カバーする地域は広範囲だったが、全体では約400世帯。でも、住民には、欠くことのできないライフラインの設備だと感じた。積雪のことを聞くと、冬場は1メートルは積もるという。そう言えば、まだ秋だが、湯西川の温泉街から山道を登って来たので、外気がかなり冷たい。冬場の寒さを思わせる山の気候だな、と改めて感じた。
次は道中通った秘湯の湯の旅館へ向かった。確かにそれらしき施設はあるが、まだオープン時間でないので、駐車場しか入れない。柵の向こうから露天風呂の入浴客の声がしたが、おそらく宿泊客なので、まだ立ち寄り湯のお客としての身では、入館出来ないので、また山を降りて、温泉街の中心地へ車で向かう。高房神社というガイドマップに載っていたスポットに行きたかったので、そこを目指したと思うが、駐車場を降りて、また外気がとても冷たく、体が冷え切ってしまったので、やはり温泉にとても浸かりたくなった。とりあえず、知り合いになった佐藤さんは、まだ、行ってない場所だったので、昨日も渡った湯西川にかかる吊り橋に行く。川の絶景を眺め、吊り橋のワイヤーの強度の強さなどを改めて感じて、神社には寄らず、その場を後にし、共同浴場へ向かうことにさせてもらった。
色々紆余曲折があったが、少し話を進めたいので、共同浴場の話へ。入湯料は200円。賽銭箱のような室内の箱にお金を入れて、体の暖を早く取りたくて、お湯の感触を確かめることにした。
外観からも想像がついたが、とても古い施設で、浴場内もとても趣のある雰囲気であり、立ち上る湯気に包まれている。こういうお湯に入りたかったのだと再認識して、湯船など室内の全景を写真で撮る。その後いよいよ入浴するのだが、佐藤さんがお湯が熱くてとても入れないというので、水道をパイプ管を通して湯船に流し込み湯温を調節させることにした。これもまた一興という気がした。儀式というと大げさだが。
佐藤さんは温泉巡りが趣味なので、お湯の浸かり方など、よく知っている。例えば、正しい入浴の仕方は、湯船に肩まで浸かるのは程々にして、洗い場に上がり、座って、体にかけ湯を続けるのだそうだ。ただ洗い場で体のほてりを冷ますと、確かに冷えてしまうので、なるほど、と思った。真似をしてかけ湯をして、またゆっくりと楽しむ。
その時に思ったのだが、気がつくと、帰りの列車の時間を守るのは最低限そうだが、あまり何時に何をするという計画的な行動がなくなっている。それは、がっちりと時間でスケジュールを立てる、自分の今までの旅のスタイルではなかったので、新鮮だった。とても気が楽というか、楽しめる感じがする。佐藤さんにそのことを伝えたと思うが、佐藤さんもその方がいい、ということを言っていた。ここでまた、ある示唆が入ったというと大げさだが、気づきがあった。
長くなってしまうので、また少し省略するが、昼食は、建物に家紋が入っている地元の由緒ありそうな料理屋に、それとなく入ることになった。メニューのそば定食がなんとなく目に入ったので、それの温かいそばで頼んだ。
本棚らしきところに置いてあった、旧栗山村の史誌(と言っても分厚い資料のような書物)に目を通しながら、佐藤さんの手に取った本の写真など見せてもらい、昔の茅葺き屋根の集落の様子を知ることができた。
出てきたそば定食は、温かいご飯と大根の煮物、山菜、お蕎麦はきのこそばという、これもこの湯西川で一番食べたかったような食事で、とてもシンプルで大味なものなども一切なく、どれもとても美味しく頂けた。店内には、マタギの様子がうかがえるテンの毛皮などが吊るしてある。どれもこれも、本当に正しい日本の集落の風情がある。これらも、少し知りたかった世界だった。
相当長くなってしまったが、また、切りがないので、一端区切ることに。改めて、また続きを書くことにしたい。