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年収103万円の壁撤廃の案に対する反論
この衆議院選挙で、国民民主党が主張する「年収103万円の壁」の撤廃案が注目を集めています。この政策には確かにメリットがありそうですが、政策というものは必ずしもメリットだけでなく、裏に潜む影響も理解することが大切です。現在、報道される反論は、高所得層の利益が大きく不平等だの言った分配だけを言及していて、経済全体に与える効果については触れられていません。マクロ経済学の観点を取り入れた反論が少ないのは残念に思います。
マクロ経済学の「乗数効果」という視点から検討してみます。お金を国民に直接配るよりも、国が財政出動を行って投資する方が経済全体に与える効果が大きい、という考え方です。
乗数効果の基本式
乗数効果の基本式は以下の通りです。
$$
総需要の増加= \frac{1}{1 - MPC} \times \text{政府支出の増加}
$$
ここで、$${MPC}$$(限界消費性向)は、所得が増えたときに消費に回される割合を示します。この値が高いほど、消費が活発になり、経済が活性化します。
年収103万円の壁対策の経済効果と財政出動の経済効果
年収103万円の壁対策として、控除額を拡大し減税する場合と、減税せずにその分を財政出動に回した場合の経済効果を比較してみましょう。
年収103の壁対策による経済効果
年収103の壁対策による控除による経済効果は次のようになります。
$$
控除による経済効果=\frac{MPC}{1−MPC}×所得増加分
$$
財政出動による経済効果
一方、控除に回す金額を財政出動に充てた場合の経済効果は次のようなります。
$$
財政出動の経済効果=\frac{1}{1−MPC}×所得増加分
$$
比較結果
通常、$${1 > MPC}$$ であることから、
ここで一般には
$$
財政出動の経済効果]>控除による経済効果
$$
となり、マクロ経済学的に言えば、所得控除をせずにその分のお金を財政出動した方が、経済効果が高いといえます。
まとめ
103万円の壁が働く意欲を抑える効果を持っているこうかがあるため、どちらが完全に正しいとは言い切れません。しかし、所得控除による効果だけでなく、経済効果も意識して政策を立てり必要はあるはずです。経済政策を検討する際には、こうした複数の観点から冷静に判断することが必要だと思います。