米大統領選は何を僕らに示したか

    結論から言おう。これは大事（おおごと）だった。これは歴史的な転換期を象徴する出来事だった。それまでの価値観を打ち砕いた瞬間だったと言っていいだろう。そのくらい、もはや、崩壊は止められないのである。

   わたしは今回のアメリカ大統領選挙は、最初、バイデン元大統領（まだ現役だね）とトランプ元大統領という顔ぶれを見た時、これは、富裕層ＶＳ貧困層の分かりやすい対立だと理解した。そのくらい分かりやすい対立構造だった。バイデンが富裕層で、トランプが貧困層の支持者を持っているのだが、それでもこれはあくまでイメージの話である。つまり、2人ともめちゃくちゃ金持ちであり、権威もある。お互いに相当なビジネスマンであり、富も権威も持っている。しかし、その支持層は真っ二つに分かれた。アメリカは今後、富裕層を中心とした支配層へのあらゆる場面での蹂躙（じゅうりん）は免（まぬが）れないだろう。つまり、めちゃくちゃにされる。それが分かっていたから、後任のハリス候補も必死だった。ここ30年近くアメリカを牽引してきた富裕層たちを守るため、これからも、世界の強いアメリカでいるために、絶対に負けられない戦いだったのである。それが、つい先日、結果が出た。知っての通り。トランプ元大統領の再選である。しかも、圧倒的な勝利だ。

   このことを象徴するのは、富裕層の好きにさせないというアメリカの貧困層の反乱に他ならない。それは、かつての中間層であり、キリスト教福音派であり、アメリカで虐げられてきた移民である。移民の中には白人以外のアジア系黄色人種、黒人なども含まれる。つまり、人種差別のそれである。それらの有象無象が、これまでアメリカで自由に振舞ってきた富裕層をまるで下克上のごとく斬りかかった結果だ。つまり、もはやアメリカは富裕層ＶＳ貧困層という対立抗争は埋まりようのない大きな溝（みぞ）、もしくは壁となって両者を完全に分断した形である。もはや、後戻りなどできない。

   そもそも自由の国アメリカは、主義思想を重んじる国だ。つまりは、自分が何者で、どんなバックボーンがあり、どんな宗教を信じているか？というアイデンティティが全てである。そうして理論武装して、お互いに経済成長という共通目標のもとに結束した。そのやり方は凄まじく合理的で、資本主義の申し子としてこれまで世界を文字通り牽引した。石油、世界の海を支配した。世界一の国家であるアメリカはドル紙幣を持ってそのまま世界を支配してきたのである。

    だが、その支配を牽引する巨大IT企業に陰（かげ）りが見えてきた。中国の猛追（もうつい）により、アメリカは大きく揺らいだ。そして、トランプを支持する貧困層は、彼を救世主（メシア）のように扱う様になる。そして、どんどんアメリカの貧困層は、キリスト教的な終末思想に取り憑かれて言ったように思う。そうして獲得したキリスト教福音派たちによるアメリカを取り戻す戦い。それが今回の米大統領選に他ならないのではないだろうか。

    福音派はキリスト教を強烈に信じている。ハルマゲドンは起きた。イスラエルで起きている。それは、終末の最終戦争である。そしてそれが意味するものとは、その後に現れる千年王国の誕生だ。つまり、宗教的価値観のもとに戦争は引き起こされ、その結果として、救世主（メシア）が誕生することを信じてやまない。つまり、宗教戦争だ。それをアメリカは是として選択した。そうなるとこれから起こることも容易に想像できるだろう。つまり、宗教的価値観の元に行われる内乱、粛清、異端者審問、そのようなことが近いうちに起きてもなんら不思議では無い。

   それはいつ起きるのか？という問題である。なぜなら、もはや福音派は容赦しないからだ。アメリカを取り戻す戦いは始まったばかりだからだ。ここから、富裕層という仇敵をぶっ倒す戦いが始まる。世の中をめちゃくちゃにした奴らを許してはいけない。なぜなら、千年王国の樹立の邪魔になるからだ。富裕層も黙ってはいないだろう。これまでアメリカを牽引してきたのは紛れもなく彼らだ。だがそれは、戦争まみれのネオコンによる軍事産業であり、軍産複合体のそれだからである。だが、ここで間違ってはいけないのは、トランプ陣営にもまた、軍産複合体はしっかりと着いている。なぜならそれが彼らの常套（じょうとう）手段。2面作戦は基本的戦術なのだ。つまり、極端なことをいえば、武器が売れて儲かればそれで良いということになる。

   その点において日本の影響は大きい。つまり、アメリカの衰退は免れないとなれば、それはすなわち、日本の没落を意味するからだ。アメリカに引っ張られる形で没落しているのは、今に始まったことでは無いのだが、今度はそれに輪をかけて、ロシア中国などの大国に蹂躙されることを意味する。アメリカはもはや他国を守れるほど余裕は無い。我々は、南海トラフ地震や、台風、津波、火山の噴火などの自然災害だけでなく、隣国の戦争に巻き込まれる覚悟をせねばならない時期に来ている。

むじかでした。