吐露ノートっていいことばだ。
わたしはいま、幅1m、高さ1m、奥行2mの箱の中にいる。これは人生初の体験だ。この貴重な体験を記録しておきたい。
わたしはいま、家から離れたところに1人で居る。ここはカプセルホテルである。
カプセルホテルと聞くと、あはたはどういうイメージを持つだろうか。
都会のサラリーマンが使う、とりあえずの苅宿。24時間戦えますかの猛烈サラリーマンでもあるまいし、都会の職場に通うサラリーマンでもないわたし。そんなわたしがなぜこのカプセルホテルを使っているのか?と聞きたいだろう。なぜなら、わたしはこのカプセルホテルに泊まりたかったからだ。いや、厳密に言えば、このカプセルホテルに泊まらなければならなかったのである。それはなぜか。ここに泊まることでとあるモノがもらえるからである。それは、非売品の記念品だ。この私の住む愛知県では、そもそもが存在していなかったコラボカフェが、期間限定でオープンしている。その上層階に存在する、併設するカプセルホテルに泊まることで、ルームキーが貰えるのだ。……いや。いくらカプセルホテルとは言ってもルームキーくらいあるだろう。いや、さっき貰ってきたルームキーは、バーコードが記された腕にまくタイプのものだ。スーパー銭湯を使ったことはあるだろうか?窓口で料金を支払って受けとるのは、ルームキーではなく、ロッカーのキーだろう。まさにそれである。しかし、わたしは先程、ルームキーがもらえると表現した。そう。もらえるのだ。……いや。また誤解がありそうだ。この右手に巻かれているロッカーキーのような鍵では決してない。これとは別に、ルームキー風の非売品がもらえるのである。つまりはそういうことだ。この何の変哲もない、ただ、私の好きなファイナルファンタジー14というゲームのロゴが刻印されただけの透明な長四角な昔懐かしきルームキー。いや、ルームキー風のなにか(非売品)がほしいのだ。…………いや、わかる。どうせ、なぜそんなものが欲しいのか?と言いたいのであろう?それな。この手元にあるルームキーは、特に価値のあるものには見えない。おそらく、メルカリなんかのフリマアプリに出品したところで、大した金額にすらならないだろう。だが、わたしはそんなことはしない。そこに金銭的な価値がないことは百も承知である。だが、これを手にするためにわざわざ、止まったことの無いカプセルホテルに1人で泊まりに来たというこのシチュエーションが、とんでもなく馬鹿げていて、シュールで有り得なくてとても「いい」のである。
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人生で最も価値のある行為はなにかと言われればおそらくそれは、まったく金銭的には無価値な、まるで意味のなきことなのではないかと思う。如何に意味の無いことをするか?こそがその人の人生の価値を高めるとすら私は思っている。なぜなら、その人にとって何が大切かという哲学がそこには詰まっているからである。お金のためではない。地位や名誉のためでもない。ただ、やりたいからやる。やらなそうなことを、敢えて「やる」。そこに浮かび上がってくるのはその人「らしさ」だけである。もちろん、無料ではない。それなりにお金は払っている。しかも、ご存知のごとく、いまは緊急事態宣言発令中である。不要不急な外出を控えよとお国のお偉方は言うだろう。しかし、これは不要不急ではない。先程も申し上げたとおり、ここに泊まらなければならなかったのである。泊まらなければ、ルームキーをもらえないからだ。これほどに必要至急な行動はあるだろうか(いや、ない)。緊急事態宣言があけてから行けばいい?おいおい、このキャンペーンは6月末までである。もうすでに、戦いは終わっているのだ。ここはカプセルホテルである。利用するには事前に予約が必要なのである。その予約の争奪戦を勝ち取ってわたしはここにいる。いわば、勝負に勝った勝者(WINNER)であると言っても過言ではないはずである。つまり、今日この日でなければならないから、ここに今いるのである。
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映画館で公開される新作映画で、公開延期ないし中止を余儀なくされていない作品はもはやないと思う。それは不要不急だろうか?前から予約して、劇場を抑えて初めてできるのが映画館というビジネスモデルである。まさにいまわたしがこうしてカプセルホテルを予約しているのと同じだ。必要至急であるはずの映画館の新作映画の公開は感染予防の観点からほとんどが観客を動員することが出来ず、ビジネスとして成り立たなくなっている。今更キャンセルする訳にも行かず、ただひたすらに赤字を垂れ流すだけの存在になってしまう。これでは誰も幸せにはなれないであろう。東京オリンピック2020も同様ではないだろうか。感染予防の観点から開催を辞めた方がいいという意見ももちろん正しい。だが、感染予防を徹底した上で開催できるのなら、それはもはやなんの問題もないのである。いまわたしがカプセルホテルのこの狭い空間から1歩も出ないでいるのは、感染予防の観点からではなく、このカプセルルームの天井や壁にファイナルファンタジー14のイラストが張り巡らされていて、その世界観に浸れることがこのカプセルホテルの最大の売りだからである。
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今思ったけど。わたしがもし死んだとして(不謹慎ですね)、棺桶に入れられたらこんな気分なのかしら。わたしの棺桶の内側はぜひこうやってファイナルファンタジー14のイラストを全面にあしらって欲しいものである。それはわたしの哲学が詰まっているからであるのだ。なんてね。寝マース。
MUSICAでした...♪*゚
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