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フリー台本『彩雲』(約600文字)

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write & Photo by Umemoto Ryo


タイトル『彩雲』

なんだか最近よく見るな
……彩雲さいうん? だっけ……

太陽の近くを通りかかった雲に含まれる水滴に
太陽光が当たることで回折かいせつ
雲の一部が虹のような色を見せるという

虹よりも頻繁に見ることができるとはいえ
弧を描くように規則性のある形もしていないし
虹をぎゅっと凝縮したように
1ヶ所に固まってまだらな色彩を放つ

気まぐれで規則正しくはない姿を見せるそれが
逆に二度とは見れない貴重な景色に思えて
記憶にしっかり焼き付けておこうと
ついつい空を見上げながら歩いてしまう

実際、同じ姿の彩雲を見ることは二度とない

それに
”幸せを呼ぶ雲”だなんて
言われているとかいないとかで
少し縁起もいいらしい

「あ」

足元に違和感

「まただ」

視線を足元に落とすと
靴ひもがズルズルと伸びて
端がスニーカーの下敷きになっていた
違和感の原因

いつも右足だけ狙ったようにほどける
まだ切れてないだけいいのかもしれないけど
それにしても最近、よく靴ひもがほどける

彩雲……本当に幸せなんて呼んできてくれるのだろうか?

もし本当にそうだとしたら

何か別の不幸を
彩雲の幸せが相殺そうさいしてくれているのかも……

縁起担えんぎかつぎも験担げんかつぎも信じてないけど
もし目に見えない何かの力で
当たり前の日常が保たれているのだとしたら
お礼の気持ちくらいは持っていても
いいのかもしれない
……なんて思いながらしゃがみ込む

靴紐を結びなおしてもう一度空を見上げたら
もう
見慣れた色の空と雲に戻っていた

〈終〉


write & Photo by Umemoto Ryo

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梅本龍
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