フリー台本『星めぐり』(約670文字)
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write & Photo by Umemoto Ryo
タイトル『星めぐり』
「ふーぅ」
流石にこの時期のこの時間
住宅街では人とすれ違うこともない
このままスーパーに寄って
割引になった惣菜でも買って帰ろうかな
寒いけど冬のせいか空気が澄んでいるから
星がよく見える
……そっか、正月だから
都心部から人が減って
交通量も減るから
冬の乾燥も加えて空気が澄んでいる
こんな夜は決まって星がよく見える
なんだか昔見にいったプラネタリウムを思い出すなぁ
とは言っても吸い込まれそうなほどの星空など
この辺で見られることはないんだけど
真っ暗な空を見つめていると
少しずつ目が慣れてきて
小さな輝きがひとつふたつ見え始める
ダントツで目立っていたオリオン座は
今でも見つけられるだろうか
3つ目立って並ぶ星と赤い一等星の……
「あったあった!」
オリオン座、ベテルギウス
初めて自分で見つけられた時の喜びが蘇ってくるようなじわっとした充実感が心のどこかに生まれたような気がした
そう言えばあれ
なんで言ったっけ?
三角形……三角? ……冬の大三角!
確かオリオン座の辺りにあったような
乾燥して、交通量が減って、多少空が澄んでいるとはいえ、街の明るさが邪魔をしてくるからよく見えない
もうちょっと下の方だったっけ……
ん?
冬の大三角を見つけようと
オリオン座から視線を下げていくと……
あれ? 建物の屋根?
スーパー……??
スーパーについたのか
でもその割に
「……スーパーが暗い」
入り口に貼り紙がある
正月は休みだったっけ?
年末年始営業時間のお知らせ?
「まじか……」
1月1日は18時までだったのか
……
あー
……
うーん……まぁ仕方ない
「コンビニまで戻るか」
遠回りの帰り道
澄み切った夜空を駆けるように歩き出す
ついでに“冬の大三角”探しの続きをしよう
〈終〉
write & Photo by Umemoto Ryo