佐藤浩子(作家)

小説を書きながら、文学のことをずっと考えています。井原西鶴の日本語から近代と前近代を考…

佐藤浩子(作家)

小説を書きながら、文学のことをずっと考えています。井原西鶴の日本語から近代と前近代を考えたり、広末保を読み直したり、安部公房や大江健三郎を読んだり。最近は川端康成の雪国や漱石のこころを英訳で読んで勉強しています。 #作家 #小説家 #文学 #読書会 #読書 #横浜 #カルチャー

マガジン

  • 世界を知るためにー文学の楽しみ方、読み方

    近代と前近代という区分けをなくしたところにこそ、日本人の世界知の基本があると考える筆者が、古今東西の文学論を紐解きながら、現代に生きる意味を探究していく。

  • 井原西鶴「万の文反古」現代語訳と翻案作品

    17世紀の日本の書簡体小説を現代語訳しています。

最近の記事

法政大学の思い出〜『ヘルメットをかぶった君に会いたかった』に触発されて〜

鴻上尚史さんの『ヘルメットをかぶった君に会いたかった』を読んだ。 私は、鴻上尚史さんに10代から20代にかけてとても大きな影響を受けた。というか、単純にファンだった。中学生の時にテレビで第三舞台の芝居がやっていて、あと、イギリス公演のドキュメンタリーとかもやっていて、「天使は瞳を閉じて」の本を買って、それは英訳のスクリプトもついているやつで、それを役者さんのマネをして、家族がいない時に音読していた。「トランス」は、VHSのビデオを買って、やはり家族がいない時に、役者さんになり

    • 「銀子の涙」佐藤浩子(婦人文芸103号)

      2023年12月に、歴史ある同人雑誌「婦人文芸」103号が刊行された。 このnoteの記事に、103号の目次を紹介している。 そして、私の作品は「銀子の涙」という短編だった。 こちらに全文を紹介。「婦人文芸」103号が欲しい人はご連絡ください。 「銀子の涙」             佐藤浩子 何千年も前、火山の多いこの国の雨量の多い気候が、稲作を呼んできた。山々は雨水を豊富に湛え、河川となり、水耕栽培を可能にした。 米の収穫と備蓄は生活を安定させ国中に広がった。米を作る

      • 「婦人文芸」103号

        同人雑誌「婦人文芸」は、戦後から続く歴史ある文芸誌である上に、現代の社会を描く、筆力の高い作家の揃っている雑誌だ。 私は縁あって25年くらい前から参加させてもらっている。昨年末に刊行された最新刊が103号だ。 「婦人文芸」の旧ホームページがまだウェブ上にあった。 http://home.d04.itscom.net/fujinbun/ayumi.html 103号の目次はこちら 第二回全国同人雑誌大賞の奨励賞、百号賞を受賞している。2023年に大阪で受賞式が行われた。

        • 加藤周一著作集 第一期

          日本の古本屋で、加藤周一著作集の第一期が15冊セットで5500円で売っていた。到着して箱から出してみると、函にシミがあったり、帯が破れていたりしたが、中身はまっさら。以前の持ち主は、購入後、きっと一度も本を開かなかったのだろうと思った。 平凡社から出ているこの著作中は1977年から配本されているので、編纂は本人が行っている。装丁は池田満寿夫だ。 あとがきには 「私は『文学』を広義に解し、その文学を科学技術文明に対して擁護する。広義の解釈の根拠と、擁護することの意味は、巻頭

        法政大学の思い出〜『ヘルメットをかぶった君に会いたかった』に触発されて〜

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        • 世界を知るためにー文学の楽しみ方、読み方
          15本
        • 井原西鶴「万の文反古」現代語訳と翻案作品
          5本

        記事

          安部公房「砂の女」読書会に参加してきた

          先日、仙川で行われた安部公房「砂の女」読書会に参加してきた。 https://chofu.keizai.biz/headline/4213/ 鳥羽耕史さんとも久しぶりにお会いできて、また、ペーターゲスナーさんとの対談も大変面白かった。 懇親会にも参加させていただいた。 今年は生誕100年なので、たくさんイベントがあると思う。安部公房作品を楽しめる一年で嬉しい。

          安部公房「砂の女」読書会に参加してきた

          "Kokoro" NATSUME SOSEKI

          ペンギンブックスのペーパーバックで漱石の「こころ」の英訳を読んだ。 訳者はMEREDITH MCKINNEY 日本語の「こころ」をよく知っているので、知らない単語がたくさん出てきても頭の中で意味を類推することができた。この訳者さんが日本に長く住んでいたということなのでコタツとかがKotatsuになっていて、これわかるかなあと私が心配してしまった。先生とKの居室を隔てるのがsliding doorsになっていて、これで襖のあの感じが伝わるのだろうかと心配したが、逆をいうと、日本

          "Kokoro" NATSUME SOSEKI

          山口昌男著「アフリカ史」

          講談社1977年の「世界の歴史6 黒い大陸の栄光と悲惨」が改題され、2023年8月に講談社学術文庫化。解説が今福龍太さん。 私の英語の先生がニュージャージー出身のアフリカンアメリカンなのだが、コロラド大学で文化人類学の修士号をとっている。文化人類学というと今福さんの著作もそうだが、レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」のイメージで、古川日出男さん「13」も懐かしく思い出した。ラフカディオハーンのひ孫さんの小泉凡さんは、文人類学者だ。ハーンはギリシャ生まれでニューオリンズに住んで

          山口昌男著「アフリカ史」

          森まゆみ著「暗い時代の人々」

          言うまでもないが、谷根千の雑誌で著名な、私は漱石に関する著作などを拝読している森まゆみさんの本で、2017年に単行本、2023年9月に吉野作造の章を加筆して朝日新聞出版から文庫化された。 近代日本のリベラリストを取り上げていて、森さんの取材、検証、論述、記述に改めて感心した。 斎藤隆夫の圧巻の演説に引き込まれた。 特に印象深かったのは、山川菊栄など、社会主義活動家の連れ合いや家族でもあった女性の活動家たちの記述だった。古今東西、複数のマイノリティを背負う集団がある。 個人的に

          森まゆみ著「暗い時代の人々」

          みすず「読書アンケート2023」覚書

          Amazonのポイントが貯まったので、それで購入。毎年刊行されていることを初めて知る。 著名な識者のブックレビューが一気に読めるのでとてもお得だ。 それぞれ2冊〜5冊程度の、2023年のおすすめ図書を挙げているか、みすず書房刊の著作が一つは入っている感じがした。 そういえば、私の出身高校では、世田谷区の鴎友学園だが、当時は、夏休みの課題図書が、担任の講師のベスト3(or5?)だった。 私のクラスの担任は現代国語の講師で、その中から読書感想文の本を選ばなければならなかった。記憶

          みすず「読書アンケート2023」覚書

          地の文の近代性、非近代性ー鴎外「興津弥五右衛門の遺書」から考える

           候文とは、「日本の中世から近代、昭和戦前期にかけて用いられた、日本語の文語体の一型式である。文末に丁寧の補助動詞「候」(そうろう、そろ、歴史的仮名遣いではサウラフ)を置く。」「鎌倉時代には文章としても書簡などに用いられ、文語文体として確立した。室町時代には謡曲(能)の語りの文体としても用いられた。この頃には、口語としては廃れたとされる(ただし「です」は「にて御座在り参らす」に由来するとされる)。 対照的に、文語としてはさらに普及し、江戸時代には、公文書・実用文などのほとんど

          地の文の近代性、非近代性ー鴎外「興津弥五右衛門の遺書」から考える

          キーンさんの日本文学研究

           現在、神奈川近代文学館にて、「生誕100年ドナルド・キーン展-日本文化へのひとすじの道」が開催中だ。6月25日には、平野啓一郎氏の特別講演があり、早々に予約していたのだが、仕事のためにキャンセルしてしまった。  キーンさんの生前、記録を見ると2016年2月ごろだが、東京の椿山荘で行われた、早稲田演博の鳥越文蔵さんとの対談を聞きに行ったことがある。東京新聞での連載も読んでいたりして、日本文化を研究したアメリカ出身の人、戦時中は日本兵捕虜の日記を英訳した人、というくらいの知識

          キーンさんの日本文学研究

          あとでメール被送度候😄

          先日、俳優の金子あいさんの公演「平家物語〜語りと弦で聴く」https://www.tokyo-np.co.jp/article/177655 (リンクは東京新聞)を観てきた。 平家物語の語りを続けて10年ということで、語りの迫力や繊細な抑揚、表情や視線、その人物が背負っているストーリーが凝縮された一言一言、演技力と簡単に言うことができないような臨場感で、すっと平家物語の世界に引き込まれ、すっかり堪能してきた。 音楽との競演も、西洋楽器と古典物語の出会いを丁寧に演出していて、こ

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          幸田露伴の「五重塔」の文末からの漱石「こころ」

          五重塔 幸田露伴 其一  木理(もくめ)美(うる)はしき槻胴(けやきどう)、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳(がんでふ)作りの長火鉢に対ひて話し敵(がたき)もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日(いつ)掃ひしか剃つたる痕の青あお※と、見る眼も覚むべき雨後の山の色をとゞめて翠(みどり)のにほ※ひ一トしほ床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリヽと上り、洗ひ髪をぐる/\と酷(むご)く丸(まろ)めて引裂紙をあしらひに一本簪(いつぽんざし)でぐいと留めを刺

          幸田露伴の「五重塔」の文末からの漱石「こころ」

          書き言葉のbefore and after

          小熊秀雄の叙事詩についての記事で、五七調から開放された自由なリズムがあると書いた。 先日そう書いた小熊秀雄の作品は口語体だ。 作中には何人かの人物が登場し、マイクを向けられた人物がお喋りしている、誰かの発話、「」のなかの文章、なのである。書き言葉ではない。 比較の例に上げた上田敏、山田美妙らの七五調は、まさに書き言葉なので、そのために七五調への依存が強かった、と私は思っている。 (しかしながら逍遥のシェイクスピアの訳文は口語で七五調だから、言文一致の苦労の中で七五調をどう利

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          横浜ThumbsUpにてPETER BARAKAN'S Ping-PonDJ Jammin' the Bluesなど。小熊秀雄のこと

          横浜のThumbsUp にて、ピーター・バラカンさんのピンポンDJを聴いて、見てきた。 ゲストDJはルカーチソウルの訳書がある宮田信さん。ラテンの曲が多いのかと思っていたが、今夜はソウル・ジャズ、ジャズ寄りな感じだった。 Miliのショートムービー“Jammin' the blues”や、Big John Patton、milestoneなど、名曲、名演奏、名盤をたっぷり聴いてきた。 Milestoneは小さい頃父親がよく聞いていたのを思い出した。たぶん、父はマイルス・デイヴ

          横浜ThumbsUpにてPETER BARAKAN'S Ping-PonDJ Jammin' the Bluesなど。小熊秀雄のこと

          第2は小熊秀雄「飛ぶ橇」から「移民通信」

          The collection の2つ目は、小熊秀雄の「飛ぶ橇」から「移民通信」 https://www.aozora.gr.jp/cards/000124/files/661.html どの作品も採用。でもまずは「移民通信」を2番に。 少し青空文庫から引用すると *******ここから引用。引用元は上記URL***** 親愛なる日本のルンペン諸君、 俺にもう一ぺんだけ手紙を書かしてくれよ、 おれは相変らずヨダレがでてきて しやうがないんだ、 ぬぐつても、ぬぐ

          第2は小熊秀雄「飛ぶ橇」から「移民通信」