『伊束法師物語』三「安祥の城、駿州より攻め討つ。並びに、竹千世殿、御帰国の事」
(1)あらすじ
今川義元は、竹千代が織田家に居る限り、岡崎衆が織田方に寝返って、今川家の両国に侵攻してくるのではないかと不安になっていた。
「黒衣の宰相」太原雪斎(今川義元の軍師)は、「竹千代を奪い返し、今川家の人質にすれば、その心配はなくなる」という。その奪い返す策は、「安祥城を攻め、城主・織田信広(織田信秀の長男)を生け捕りにして、人質交換をする」というものであった。普通、落城に際し、城主は「生き恥をさらすより」と切腹するもので、「生け捕り」は不可能とされるが、太原雪斎は、自ら出陣して、これをやってのけた。
また、この安祥合戦では、三河衆は試された。
──織田軍を相手に手を抜くか、精一杯戦うか?
織田軍と内通していれば、手を抜くであろうが、三河衆は、軍議に於いて、最も危険な先陣を志願し、精一杯戦ったので、今川義元は安心した。
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