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立憲共産党では勝てない
蓮舫氏の敗因は立憲共産党の選対
今回の都知事選を総括する上において、誰もが指摘しているように、立憲共産党体制では勝てないという現実を、立憲民主党幹部は直視する必要があるだろう。
反立憲民主の有権者のみならず、現在の自民党を批判的に見ている有権者ですら、蓮舫氏に対して、共産党と組むのは如何なものか?という疑問は、早くから出ていた。立憲民主党は蓮舫氏が離党したことで、無所属候補だから立憲民主党と日本共産党が共に支援しても、全く問題は無いと考えていた。
これは従前のドブ板選挙戦略を進める上において、蓮舫人気と共産党の組織票を使えば、東京15区同様、蓮舫氏なら勝てると見込んだ故の選択だったに違いない。
旧来の選挙戦略であれば、自民党の独自候補がいないのだから、それも通用するかもしれない。ところが、そこに自民党保守層の取り込みも含め、新たな風を吹かす候補として石丸伸二が落下傘として舞い降りてきた。これが、立憲民主党にとっても蓮舫氏にとっても誤算だったろう。
蓮舫の主敵は石丸伸二だった
誤算の幾つかを見てみると、①戦略が見えない、②蓮舫氏以上のドブ板、③自民党支持層と無党派層の動きの読み違いの三点があるように思う。
①戦略が見えない
今夏の都知事選で主敵は盤石の支持層を持つ現職の小池百合子知事ではなく、落下傘の石丸伸二前安芸高田市長だった。SNSで知名度を上げ、シュッとした身なり、何を言ってるか分からないが何か賢そうな物言い、地方行政の改革と、キャッチーなスタイルで支持層を広げた。
共産党の組織票を使って演説会場への動員をかけ、知名度のある蓮舫氏がやはり人気があると見せかけ、そこにメディア戦略を乗せれば、蓮舫人気が高いという印象操作戦略が成り立つと考えていたのだろうが、動員はどこまで行っても動員であり、実態が伴っているとは言えない。
共産党支持者の高齢化により、演説会場への度重なる移動も、大きな負担となったのではないだろうか?
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石丸候補は、SNSを使って底辺を広げることで結果的に、演説会場への動員を可能とし、かつ、蓮舫氏の3倍以上、演説を行った。SNS界隈で有名になった人が来るとなれば、しかもそれが自宅の近所だったりすると、必然、動員数はジリジリ右肩上がりとなる。
この辺りの石丸伸二選対の戦略を読み間違えたことが大きい。
②蓮舫氏以上のドブ板
前項でも触れたが、実はここも立憲民主党の誤算の一つだったろう。
SNSで支持層を拡大し、安芸高田市長時代の動画が、切り取りも含め数多く拡散されたことで、石丸伸二の臆せぬ物言いに共感した有権者が拡大したのは事実だ。有権者に対して強い口調で語りかける点は山本太郎、なんだか分からないが相手を言い負かす爽快感を演出しているひろゆきの真似が、印象で動く有権者を、文字通り動かした。
そして、徹底したドブ板選挙。徹底した選挙演説の回数で、より強く有権者に若い切れ者の候補が出てきたという印象を植え付けて行った。
民主主義の根幹である選挙とは、民意の具体化であると同時に、有権者ひとりひとりの代弁者の選択だ。全ての有権者が1票の権利を有している。これ、全体主義、専制主義国家では考えられないことであり、民主主義が機能している日本において、ドブ板的な民衆へのアジテーションは何にも増して重要なのだ。
詰まるところ、どれだけ有権者の顔を見て語りかけるか?が、実はとても大事なのだ。
その意味で、石丸伸二選対は今回の選挙に限れば、機能したと言っていい。
③自民党支持層と無党派層の動きの読み違い
実は、この三点目が最も大きな点ではないかと考えている。
と言うのも、自民党の政治資金不記載問題(裏金ではない)を通じ、旧来の政治と金の問題に喝を入れたのが、先般の三つの衆院補選だった。運が悪いことに立憲民主党選対は、ここである種の手応えを感じてしまった。これがそもそもの間違いだったと言えるだろう。
つまり、蓮舫という有名人を担ぎ、立憲民主党支持層と共産党支持層で固めれば、自民党がステルス支持を行っている小池都知事に勝てると考えてしまった。
その時点で、泡沫候補も含め、今回の過去最高の候補者数と石丸候補の動きを細かく分析できていれば、今回のような結果には至らなかっただろう。その意味で、立憲民主党選対のお粗末さ、人材不足感は否めない。
今回、蓮舫氏が3位に甘んじ、しかも石丸と予想外の票差を付けてしまったことで、蓮舫氏は次の衆院選も危うい状態になってしまった。私は今回の戦犯は、立憲民主党東京都連の手塚幹事長だと考えている。それほど、選挙戦略としては非常に愚昧だった。
私は蓮舫氏を支持しているわけではなく、むしろ批判的な立場だが、今回ばかりは同情を禁じ得ない。共産党と共闘することはあって然るべき戦略だったとは思うが、立憲民主党があまりにお粗末過ぎた。明らかに石丸には勝てていたのに、みすみすそのチャンスを潰したばかりか、蓮舫氏の今後の政治家人生を大きく左右する結果を生んでしまったことは、今後の国政、地方議会において立憲民主党の支持率が大きく後退することとなるだろう。
事実、そうなっているが・・・
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更に深掘りするならば、東京都はリベラルな無党派層が多い現実は、かねてから指摘されている通りで、今回の石丸のような候補者が出てくれば、直ぐに有権者は反応する。その意味で、知名度の高い蓮舫氏擁立を安易に考えた都連の手塚幹事長は批判されるべきだが、蓮舫氏自身も前回の参院選の結果と来る衆院選を見越して、例え小池氏に負けたとしても、それが僅差であれば、衆院選の勝ち目はあると考えていたのだろう。
しかし、蓮舫氏が無党派層への支持を訴える上でネックになったのは、共産主義者が退去して勝手な振る舞いをしたことによる。中でも、ひとり街宣、プラカード街宣、蓮舫赤軍は都民には悪印象しか抱かせない。これは、共産党がこれらアホどものコントロールが出来なかったことによる。つまり、尖鋭化し原理主義化していて、かつての国会前行動と同じ現象が起きると考えている浅慮が滲んでいる。要するにバカどもが行動したせいだ。
古くは60年安保、70年安保への限りない憧憬で、夢よ再びと行動した後期高齢者の在り方に学んだアホリベラルが、同じ行動を行ってしまった。社会に通用しないやり方を、先達に学んだことによって、却って有権者の支持を減らしていることが分かっていない。だから、バカだと、私は断罪するのだ。
野党再編したとしても・・・
ここにきて、来る衆院選において立憲民主党に大きな暗雲が垂れ込めてきたのは、誰の目にも明らかだろう。
既に泉代表の信任について不協和音が聞こえているし、今回の東京都知事選の結果について、執行部の責任論にまで話が及んでいる。これまで立憲民主党の議席確保の為に日本共産党との共闘を戦略としてきたが、その戦略自体に対しても、必ずしも立憲民主党内が一枚岩とは言えない状況だった。
そのトドメを刺したのが、都知事選だったことは明白であり、最初に取り上げた都知事選の敗因分析について、今更、その結果について「信じられない」という評価が出ることが間違っていると言わざるを得ない。
辻元清美は、「政党としても個人としても、やっぱりもう古くなったのかな。もう通用せえへんのかなとか、ちょっと思った」と述懐しているが、このあたりがピントのズレっぷりを示している。前述のように立憲民主党は戦略と分析をミスったに過ぎないし、それらを統制できない指導部であったというだけの話だ。事実、石丸は選挙戦略としては、非常に古典的な手法で少しずつ知名度を上げ、支持を獲得してきた。
各野党が政権交代を目指していく中、知略を駆使することは昔から行われてきた。手法は時代により変遷するだろうが、根本的に戦略を駆使する為の党としての統制のあり方、組織体制の強化が不足していたのだ。石丸の選対は、決して大勢いるわけではなく、限られた人材を効率的に使ったに過ぎない。
繰り返すが、民主主義の根幹である選挙は、小手先のやり方を腐心したところで、タカが知れている。人心を掌握する手法など、それほど多くはないのだ。
立憲民主党としての限界点、臨界点は今かもしれない。折角、自民党政権を倒すチャンスだったのに、その機会を失ってしまった。では、その先にあるものは何か?
それは野党再編以外にはない。
参政党、日本保守党、石丸新党(?)が自民党に対抗し得る勢力には、現時点ではならない。
参政党は陰謀論で自滅し、日本保守党は政治の素人集団だ。石丸が新党を結成するにしても、維新の会の例に見るように国政で影響を持たせるには、10年の歳月を要する。つまり、保守系政党ですら一枚岩ではない。
では革新系、あるいはリベラル系と言われる立憲民主党が、今の体制を一度ガラポンするにしても、やはり自民党に対抗するにはそれなりの時間が必要だろう。
立憲民主党所属議員が生き残る道は、保守系議員は国民民主党や維新の会への移籍を模索し、革新系議員は、立憲民主党に残りより尖鋭化する以外にない。それで政権交代などまず不可能だ。
野党どうしで連立を組むことも一案だが、遠からず、瓦解する。各政党の意見集約が出来る素地が、どこにもない。
決定的なのは、野党を結集させるリーダーがいないことだろう。
自民党はゴタゴタが続いているが、岸田政権が交代するとしても、次に来るのも自民党になるとしか言えないのだ。