コロナ禍で日本政府が世界最大規模のお金を準備した不都合な真実

現在、日本は所謂、真水だけで100兆円以上の規模の準備を行っていて、これは先進国中最も大きなものだ。

具体的には、国民への現金給付、個人事業主や中小零細企業への無利子無担保の貸付、金融機関の融資条件の緩和と利息を政府予算で負担、医療機関への積極的な補助、雇用調整助成金と言ったものが挙げられる。

2007年頃から世界を席巻した金融危機は、未だバブルの後遺症から抜け出せない日本経済に更なるデフレ不況の追い討ちをかけることになり、2000年以前から安い労働力を求めて中国に活路を見出す製造業に日本回帰を促すほどの魅力を発揮することは出来なかった。

2013年、第二次安倍政権発足の前後より、停滞していた株価が鰻登りになった背景には、総理就任前から景気対策に本腰を入れると言う安倍前総理の決意の表れに対する市場の期待感をそのまま表現していた。前民主党政権時より雇用情勢の改善は見られてきたが、それでも有効求人倍率や失業者数の軽減が目に見える形で改善したとは言い難い。

ところが、第二次安倍政権発足後、有効求人倍率は日本の高度成長期にも匹敵するほどの目覚ましい改善が見られた。

ここに追いついていないのが、実質賃金の改善だ。

幾度か拙コラムでも指摘している通り、これが日本のデフレ脱却できない最大の要因と言っていい。

反面、企業の内部留保は増大の一途で、株価もバブル期に迫る勢いで上昇し、特にIPO市場における投資金額は年々増大し続けている。今後ますます、IPO市場は活況を呈することになるだろう。これからの日本経済の方向性は、これらIPO市場に活路を見出す方向性になるだろうし、アメリカやEU圏内の新興産業に遅ればせながら日本が追いついたと言っていい。

ただ、IPO投資総額がGDP総額に比べてまだまだと言わざるを得ない。私は、今年から来年にかけて市場規模は3倍程度に膨れ上がるのではと考えている。

これらは何を意味するか?

労働市場で改善されない賃金上昇は、日本経済の停滞を意味しているともいえ、厚労省が推進する「働き方改革」は、一面で企業側に優位な政策と取られがちだが、果たしてそうだろうか?

終身雇用と言う言葉が過去の遺物であるように、正規雇用が金科玉条のように持て囃される時代は終わりを告げた。

企業が労働者の生活を守る時代が終わったと考えても良いだろう。

ウェルスナビCEOの柴山氏が指摘する通り、日本の労働市場に遅れているのは、自ら金融資産の形成により、生活を豊かにする意識改革であって、その点でアメリカと日本は数十年の時間差が出来てしまった。

厚労省の「働き方改革」の言葉の裏面には、この労働者の意識改革の必要性を指摘している面もあるのではないか?

日本経済全般のデフレ不況から脱しきれない最大の要因は、バブル崩壊、世界金融危機と言った世界の潮流に乗り遅れたことであり、むしろ唯一と言っても過言ではない。

日本のデフレ不況の弊害はマイナス要因に引っ張られる形で悪循環となっていることだ。安価な労働力による低価格商品の流通、市場全体の価格上昇が望めないため、結果的に回り回って賃金が上昇しない。

国内外に日本円が不足することで、これほどまでにデフレマインドからの脱却が遅れているのだ。

だからこそ、第二次安倍政権では大胆な金融緩和策により、不足した日本円を市場にばら撒くことを考えた。

また、コロナ禍の経済危機の時こそ、直接的に現金を市場にばら撒くことで中長期的な景気刺激策を講じることとなったのだ。

これはG7各国と比較しても一目瞭然で、100万人あたりのコロナ感染者数から見ても行き過ぎと言われかねないほどの、大胆なコロナ対策予算を計上している。

その裏には、日本のデフレ不況からの脱却と言う第二次安倍政権の大命題があったからだ。

残念ながら、安倍前総理は志半ばで戦線離脱を余儀なくされた。

現菅政権も安倍政権の政策を踏襲する形を取ってはいるが、日本政府だけでは到底追いつかないコロナ対策に足を引っ張られる形となっている。

先の衆議院本会議で数年にわたって議論すら行われてこなかった国民投票法改正がようやく6月成立を目処に動き出した。

これは世界で最も改正の難しい日本国憲法の改正に向けた、歴史的な一歩となるだろう。

現野党が政府のコロナ対策の遅れを執拗に指摘するが、実は国会議員であれば、日本は先進国中最も私権制限の難しい国であることを知っているし、それにはまず最高法規である憲法の改正、あらゆる法律の改正なくして、強力な人流制限、移動制限を行うことは出来ない。

つまり、野党議員はわかっていて政府の邪魔をしているのだ。五輪より人命が大事という美名を取り繕うが、それであれば、強力な私権制限を行える法改正が必要となり、その為の憲法改正が必要なのだ。

この矛盾に切り込む自民党議員もいるが、その課題の困難さも同時に分かっている。また、その意識の裏には周辺国への配慮という、昔ながらの玉虫論、自分たち世代が責任を取りたくないという保身が見え隠れする。

この法律の枠組みが無い日本の現状で、行動制限、移動制限を国民に理解してもらうには、生活への影響を最小限に食い止める施策が重要となり、それが、前代未聞とも言える世界最高額のコロナ対策費なのだ。

このコロナ対策費に関しては、また別の機会に触れたい。

本コラムでは、多くの国民が疑問に思う、何故この時期に国民投票法改正に向けた動きになっているのか?現状で日本政府がこれほどまでに大胆な予算措置を講じているのか?について触れた。

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