日本において太陽光発電は、全然エコじゃない

SDGsの潮流と日本の取り組み

経済産業省は、ここ数年、再生可能エネルギーの買い取り相場を目玉であった太陽光発電から、他の発電方法に移行してきた。

2015年以後、世界的なSDGsの潮流は、再生可能エネルギーという考え方から、持続可能なエネルギーにより多くの税金を投入して、地球環境の問題を含めた持続可能な取り組みを世界的に推進する道を、各国が模索している。

日本は先進国の中で、この持続可能な開発やその中でどう経済活動を推進するかについて、経産省、環境省、総務省、内閣府が一丸となって取り組むことで、そこから新たな経済活動を生み出すことを狙っているようだ。

つまり、新たな市場としてスタートアップ企業や、大企業の方向性に一定の道をつけようとしている。

エネルギー自給率の低い日本は、SDGsや環境保護、脱炭素社会の実現と言った世界の動きに左右されやすく、むしろそれを利用して新たなビジネスを生み出すよう、柔軟な発想を行うことが必然だ。

2015年に国連で発表された2030年に向けてのSDGsのアジェンダ『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』で17の項目に従って、日本政府も民間と協力して、目標達成に向かっている。

日本が国連のアジェンダに非常に前向きになったきっかけは、2011年3月の東日本大震災による福島第一原発事故だろう。当時の民主党政権は、全ての政策をその震災復興に振り向け、日本全体で未曾有の災害復興に立ち向かうこととなった。その政策の大きな柱が、原子力発電所の脆弱性、危険性を鑑み、自然エネルギーを活用した発電方法の普及に傾注していくことになる。

この一連の流れが、SDGsの動きに呼応出来る要素となったことは間違いない。

太陽光発電の問題点その1

今でも当時、民主党政権で自然エネルギーの推進を行なってきた菅直人元総理は、「日本の農地を太陽光発電に活用すれば、日本の全ての電気は賄える」との幻想を抱いている。

しかし、その願いに反し、2012以降進められてきた環境省と経産省の政策は、多額の税金を投入してきたにも関わらず、決してその効果があったとは言えないだろう。

未だに、日本では自然エネルギーを活用した発電の総量は18%程度だ。

食料自給率から考えると、日本の農業の衰退は長年の懸案であり、国土の60%以上を占める日本の山林中心の国土を活用した自然エネルギーの中で、日照時間を必要とする太陽光発電は適さないことは明白なのだが、反原発の框(かまち)から逃れられない思想、地球温暖化への懸念という思想が、電力は自然エネルギーの活用が必要だという妄想に駆り立てられるのかも知れない。

そもそも、日射量に左右される太陽光発電は、日本の気候風土に適してはいない。だからこそ、パネルメーカーは技術革新に余念がない。

太陽光発電技術の先駆者はシャープだが、シリコンウエハーは光子に反応して電荷を生み出すことはよく知られていた。それが多結晶太陽光パネルの開発につながり、単結晶パネル、ハイブリッドパネル等の開発につながる。

温暖な気候とは言え、湿度が高く、降雨量が多い日本は、曇天の日も多い。そのため、少ない光量でも効率よく発電する技術が求められてきた。

また、国土の60%以上を山林に覆われているため、南向き斜面が確保出来たとしても、朝夕の発電量は落ち込む。ここでも狭い立地条件に設置するための高効率化が課題だった。

また、日本で急速に太陽光発電が普及した背景には、2011年3月の東日本大震災により、原子力に頼らない発電に衆目が集まり、メーカーも経産省もこぞって太陽光発電技術に傾倒していった。

具体的な数字は省くが、実は太陽光発電で得をしたのは、メーカーと工事店のみだ。もちろん、仮にローンを組んだとしても、安くなる電気代と売電収入によって、自宅の屋根に取り付けたユーザーも損はしない仕組みだ。

収入面だけで言えば、2009年の48円/1kwをピークに、年々買取価格は減少し、現在は24円/1kwまで落ち込んでいる。工事店は太陽光発電を設置するユーザーの迷いを払拭すべく、買取価格は年々低下すること、補助金も含め、今が一番好条件であると実しやかに目の前に飴をぶら下げた。

特にいわゆるメガソーラーについて言えば、低い銀行金利と比較して、安定的に金利収入が得られると、投機商材として売り込みを行なってきた。

日本は、平地の殆どを住宅地と農地に使用しているため、山林の有効活用という意味でも、大規模太陽光発電は都合が良かったのかも知れない。

もちろん、設置したオーナーは環境を考えてとか、原発に反対するとか、化石燃料を燃やし続けることの温暖化に対する懸念ではない。

純粋に、投機案件として利回りだけを目的に太陽光発電を導入しているのだ。

この点で、太陽光発電に適さない立地に大量に太陽光パネルが並ぶことになった。

太陽光発電の問題点その2

そもそも太陽光発電パネルの構造はシンプルで、設置に際し屋根や土地に過度な重量負担を強いないよう、軽量に設計されている。

また、メーカーの推奨する設置方法であれば、少々の台風にも負けない構造の筈なのだが、屋根に設置するものと違い、初期の産業用太陽光発電設備は、工事規定が曖昧だった。そのため、工事業者の手抜き工事も多く見られる。これは、工事業者の責任ばかりではなく、投機対象としての太陽光発電であるため、オーナーが初期費用の軽減策から、より安価な工事業者を選定した結果でもある。

事実、近年の大型台風により、全国各地で数多くパネル損傷のニュースが相次いでいて、その画像を見る限り、手抜き工事を行なった場所のパネルが吹き飛ばされたり、崩壊したりしている。

また、雑木林を伐採して太陽光パネル用の土地を作ると、山林の保水力が低下し、雨水が流れ出し安くなる。結果、大量の雨が降ると、斜面がそのまま崩れ出す危険性が増す。

特にメガソーラー規模の発電設備の場合、仮に変電所への配線が寸断されると、専門の電気工事技師以外、直流の高圧線のため触ることが出来ない。

しかも、それが山間部だったり、農業用水の溜池、河川が近かったりすると、公害物質の流出の危険性もある。

これは経産省主導で太陽光発電の拡充を急ぐ余り、ある程度の許認可を各自治体任せにしてみたり、初期の頃は、設置許可の条件が曖昧だったことに起因する。

要は、お金儲けに走ったメーカー、工事業者、設置するオーナーの責任が大きいと言わざるを得ない。

同時に、自然エネルギーを利用すると言いながら、実はシリコンウエハーの製造、パネル製造、型枠製造等に大量の化石燃料を必要とするため、二酸化炭素の総排出量で削減できているのかは疑問が残ると指摘されている。

太陽光発電バブルは、わずか数年で終焉を迎えることになった。

菅直人元総理が言うように、自然エネルギーを活用したとされる太陽光発電が原子力発電にとって変わるなどと言うことは、到底考えられない。現実出来ではないのと、先行投資、維持費、管理費がかかり、システムのやりかえも必要となる。

また、農地を犠牲にしてまでやることではない。

原子力発電と火力発電を抜きに、日本経済の下支えなど出来ないのだ。

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