レッドクローバー まさきとしか/幻冬舎
最初から最後まで心が晴れない小説でしたが、読むことをやめられませんでした。
多くの人が思ったことのある負の感情、「憎しみ」「怒り」そしてその感情が発展し、誰かの死を望んだり、殺したいと思ってしまう。
しかし、ほとんどの人が誰にも言えないし、本当に殺すことはできない。
世の中にはその1線を越えてしまう人がいる。
日本中で殺人事件は発生している。
他殺者は減少傾向を続けているがいまだに数百人が誰かの手によって殺害されている。
誰かが怒りや恨みの感情に支配され行動してしまっている。
人の負の感情は連鎖し続けてしまうのか。
『レッドクローバー』はある大量殺人事件が引き金となって、12年前の一家の大量殺人事件の犯人候補とされた少女へ焦点があたっていくという展開です。
大量殺人を犯した犯人は「ざまあみろと思っています。」という言葉を残す。
自分の境遇を恨み、社会的に恵まれているされる立場の人をヒ素によって大量に殺害する。
犯人は罪を認めたが、「ざまあみろ」以外の言葉を残さない。
犯人の動機は本当に社会への恨みだけだったのか?犯人は過去に起きた事件の犯人にだけ興味を示す。
「彼女は死んでしまったのかもしれません。」
過去に何が起きたのか、どんな恨みが怒りが彼に1線を越えさせたのか?彼女と接点はあったのか。
物語は様々な登場人物が様々な時間軸で登場していく。
現在の時間軸で大量殺人の犯人と交流し過去の事件を追いかける記者、過去の時間軸で登場する少女、同じく過去の時間軸で登場する少女、違った時間軸で登場する母親、近所の人たち。
様々な人が恨みと怒りによって1本の線で結びついていく。
最初は見えてこなかった無数の線が徐々に結ばれていき、真相にたどり着いた時は狂気を感じた。
最後まで読むことをやめることが出来ない長編ミステリだった。