『あの子とQ』万城目学/新潮社
万城目学さんの『あの子とQ』を読みました。タイトルと内容が最初はまったく結びつきません。
今回のテーマは吸血鬼でした。吸血鬼が人間の世界で生きていく物語。
人間の世界でうまく溶け込みながら生きてきた主人公の女子高生(弓子)と友人とのラブコメのような物語。
と思っていたら、ある事件から一転して、人間界で生きていける吸血鬼の誕生、そして吸血鬼が人間界で生きていくための儀式の謎を突き止めていく物語に。
本当に吸血鬼はいるんじゃないか?吸血鬼の世界があるんじゃないか?と思わせてくれる万城目ワールドに今回もワクワクしながら読ませてもらいました。
進化って何か
吸血鬼としての特性を失い、人間界で生きていく選択をした吸血鬼と昔ながらの吸血鬼の生き方を尊重する吸血鬼が出てきます。
昔ながらの吸血鬼は歳をとらず不老で人の血を必要とします。変化した吸血鬼は人の血を必要とせずに人間と同じように死を迎えます。
多くの吸血鬼が死ぬことを選択して人間とともに生きるようになった。そしてそれを「進化」と呼びました。しかし昔のままの吸血鬼を選択した吸血鬼たちは「進化」なんかじゃないと言います。
吸血鬼の特徴をなくして変化することは進化ではない。
確かに吸血鬼が血を吸わないなら吸血鬼ではない、しかし血を求め続けていくと人間社会と共存するのは難しい。
だから吸血鬼は人間の世界にあわせて変化したんですが、人間は人間が住みやすいように周りを無理矢理変化させ、変化するように進んできた。
人間は生き残っているけれど、生物として進化はしてるんだろうか?と生物の進化のことまで考えてしまいました。