僕が音楽マネージャーになるまで – ⑨運命の日
まず惹かれたのは、そのグループ名だった。
バンド名やグループ名は、その存在の最初のキャッチコピーであり、センスが現れる部分だと僕は思っている。
今では文章みたいなグループ名がたくさん増えたけれど、これは贔屓目ではなく、彼らの登場がその影響を及ぼしたと思っている。
(あと、ライブの写真OKも彼らの取り組みはだいぶ早く、セカオワが先陣を切って変えていった部分だと記憶している。)
「世界の終わり」
彼らのMySpace上には、「幻の命」「虹色の戦争」と言った曲が並んでいた。
僕は音楽評論家ではないし、そもそも音楽業界歴2ヶ月の新人小僧だ。
はっきり言って、細かいことはよくわからない。
でも、とりあえず、この子たちがとても気になる。
何よりもシンプルに、僕はこの子たちの曲が好きだ。
その気持ちには業界のキャリアなんて関係ないし、「好き」という感覚には自信があった。
調べていくと、羽田空港の近くにライブハウスを作って活動しているという情報。
漫画みたいな世界を地でいくなぁとワクワクしながら、ライブの予定を調べていたら近い日程で下北沢ガレージのスケジュールがあった。
すぐにメールで、チケットの取り置き依頼のメッセージを送った。
この時、当時の自分なりの考えで、音楽業界の人からいきなりメッセージが届いたら余分に緊張させてしまい、いつもの素の彼らが見れないと思い、会社のメールアドレスではなく、個人のアドレスから高校生のフリをしてメールしたことを覚えている。
ライブ当日、下北沢ガレージ。
明らかに出演者の方がお客さんより人数が多いくらい、観客はほとんどいなかった。
前のバンドが終わり、ステージ上で転換が始まる。
そして、彼らのステージがスタートした。
正直演奏は下手くそだったし、ずっと俯き気味にライブしていたけれど、そんなことは関係なかった。
4人の佇まいやステージ上の雰囲気、彼らから溢れ伝わってくる全て、その存在に圧倒されて鳥肌が立った。
大袈裟ではなく、僕はもう新人を探す必要はないと思った。
唯一無二の才能が、目の前に存在していた。
僕はこの頃、ライブハウスで直接声をかけることを避けていた。
なぜならデビューしたいと願っている子からしたら、音楽業界の人がいきなり声をかけてきたらそれなりの事件だろうし、驚かせてしまっても入社2ヶ月の僕にはどうこう出来る権限は何もなかった。
でもこの時、今すぐ話をしないとダメだ!、この瞬間を逃したらこの才能を誰かに奪われてしまう!と思い、彼らの周りにいたお手伝いスタッフの子にライブ終わりすぐに話かけ、メンバーと挨拶したい旨を伝えた。
すぐに出てきてくれて、ライブハウスで初めて名刺を渡した。
この日以来約10年、彼らと一緒に生きていくことになる。
https://twitter.com/Ryota_Shishido ラストラム→TOKYO FANTASY→RED 主に音楽関係のマネージャー 新しい才能との出会いを求めています。 音源やプロフィールはツイッターのDMかinfo@red.jp.netまでお気軽にお送りください!