吉田塾日記#6【MEGUMIさん】
クリエイティブサロン吉田塾
山梨県富士吉田市、富士山のお膝元でひらかれるクリエイティブサロン吉田塾。毎回、さまざまな業界の第一線で活躍するクリエイターをゲストに迎え、“ここでしか聴けない話”を語ってもらう。れもんらいふ代表、アートディレクターの千原徹也さんが主宰する空間です。第六回のゲストは女優/プロデューサーのMEGUMIさん。
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いろんな顔を持つふたり
ふたりの共通点は、それぞれが女優、アートディレクターでありながら、プロデューサーとしての顔を持っているところ。現在進行形で、MEGUMIさんは連続ドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』の企画・プロデュースを。千原さんは映画の監督・プロデュースを。
そんな複数の顔を持つふたりの「想いを実現するチカラ」が語られました。
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「好きにやったらええやんか」
先日、カンヌ映画祭を訪れたふたり。誰に呼ばれたわけでもなく、誰に頼まれたわけでもない。“自分の発意”に従って、ふたりはいつも動いている。
千原さんが映画のプロジェクトを立ち上げたのは3年前。思うように進まず、悩んでいたとき「何か手伝おうか?」と言ってくれたのがMEGUMIさんでした。
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「やりたいこと」を明確にする
本来、“女優”はプロデュースのことを考えなくていいポジション。企画を立ち上げ、資金集めをして、人に声をかける稀有な女優の姿。日本では、前例がない。
「日本には、大企業がつくり続けてきた仕事のセオリーがある」と千原さんは言いました。それも過渡期に差し掛かり、あらゆる仕事がDX化の波に突入して構造も在り方も変わってきています。一部では、“明治維新”よりも大きく変化するとも言われているほど。その中で、大事なことは「自分は何をやりたいか」を明確にしておくこと。
「これからの時代は、頼まれた仕事を待っているだけでなく、自分で舵を切って、自分で仕事をつくってゆく」。MEGUMIさんはそう言いました。
れもんらいふを立ち上げて10年。BtoBでクライアントワークを続けてきたけれど、依頼が来なければ仕事はない。時代の流れに取り残されると、単価は下がるし、案件自体の数も減ってゆく。だからこそ、“自分の発意”でこちらからアクションを起こしてゆく。
「ファッションブランドでも、商品が売れていなくてもパーティーをひらいたり、アレンジをつくったり、“何かやっている”と思ってもらうことが大事だ」と、MEGUMIさん。
何かをやっていると、お声がかかる。それは、たとえ全く関係ない動きであってもいい。プロデュース業をしたり、YouTubeで発信したり、何かしら動いていると目の中に入る。だからこそ、全員にチャンスがある。
昔であれば、「女優が資金を集めてドラマをつくる」など不可能だった。「芝居にいい影響は出ないよ」と事務所に止められたり、銀幕時代に築かれた文化の名残がある。でも、今はYouTuberやTikTokerの人たちが稼いで、世の中に影響を与えている。選択肢として考えていかなければならない。
「やらない方が、リスクがある気がします」とMEGUMIさんは話しました。
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お問合せフォーム最強論
ふたりに宿された根本的な資質。それは、行動力と一歩踏み出す勇気。その原動力は「誰もやってくれないから」だとふたりは口を揃えて言いました。
想いと気合いの伝え方。知恵と工夫と一歩踏み出す勇気が、人のこころを震わせる。やりたいことが明確で、おもしろいと思ってもらえる企画書を持ってさえいれば。
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「企画書」という羅針盤(コンパス)
やりたいことを実現するために必要なのは、熱量と企画書。「企画書は、相手を説得できる道具」と千原さんは言いました。そのために必要なことは、思考や想いを言語化する力。
タレントとしてバラエティ番組に引っ張りだこだったときから、MEGUMIさんは「女優をメインの仕事にする」と公言していたと言います。他者に周知させる前に、自分で明確にしておくこと。それができていないと、目先のお金や周囲の目に負けてしまって、無駄な動きで消耗してしまう。だからこそ、ことばとして書く。
「僕が一番重要だと思うのは文章力だ」と千原さんは続けました。デザイン会社では、絵づくりがメインの能力だと思われる。IllustratorやPhotoshopを扱えることは技術の問題。続けていければ、いれずれできるようになる。ただ、言語化能力は教えることができない。やりたいことを文章にして、人に伝える力。それは、自分で磨いていかなければならない。
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誰もやってくれないから、自分がやる
MEGUMIさんがプロデュースをはじめたきっかけは、コロナ禍によるステイホームだった。肌感覚で「このままじゃダメだ」と思ったMEGUMIさんは、好きな人たちに声をかけていった。もともと作品づくりやプロデュースに関心があった。「今ならみんな暇かもしれない」と提案すると、みんな快く受けてくれた。
Amazonでグリーンバックを買い、メンバーの家に届ける。そして、自宅で撮影できる一分間のショートドラマをつくった。俳優、イラストレーター、MEGUMIさんの旦那さまも参加した。そのとき、「ゼロから一をつくることがこんなにも楽しいんだ」「できたモノはこんなに愛おしいんだ」と高揚した。
“やったことがない”を成立させると、中毒になる。“自分の発意”の炎が燃え上がっていった。
成し遂げたときの達成感は、主催した人にしか味わえない。
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“自分の発意”によって、これから発つ人へ
これからは、自分で自分をプロデュースしてゆく時代。誰かにプロデュースされることはなくなってゆく。そのためには、ふたりのマインドが人生の航海におけるヒントになる。
「企画書」という羅針盤を持ったか。一歩踏み出す勇気はあるか。さぁ、“自分の発意”に火をともせ。
ふたりのことばに、そう背中を押してもらえた気がしました。
闘っているひとは、かっこいい。
懇親会は、れもんらいふプロデュースの喫茶檸檬。お酒を飲んで料理を楽しみながら、ゲスト講師や千原さんとも一緒にお話できます。
ぜひ、会場まで足を運んでクリエイティブの楽しさを味わってみてください。
さて、次回の講義は十一月五日。ゲスト講師はさらば青春の光の森田哲矢さんです。
チケットの購入はこちらから(※会場用は完売により、オンラインチケットのみ)。
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次々回は、十二月三日。ゲスト講師は、映画監督/CMディレクター/脚本家の犬童一心さんです。
チケットの購入はこちらからどうぞ。会場用とオンライン用、二種類から選べます。
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そして、わたしも制作にかかわっている本塾の主宰、千原徹也さんの著書『これはデザインではない』もチェックよろしくお願いします。