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「読むこと」は教養のエチュードvol.3
2020年を迎え、僕からプレゼント。全ての作品を紹介させていただきます。結果発表はその後。みなさんが送ってくれた僕宛の手紙にお返事を。「わたし」と「あなた」がつながる。それはコンテスト開催の応募要項に書いたことの証明。
このコンテストにおいて、僕は「最良の書き手」でありながら、「最良の読み手」であることに努めます。
それでは、『「読むこと」は教養のエチュード』のvol.3です。
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15.真夏のクリスマスキャロル #Xmasアドカレnote2019(16日目)
一度きりではなく、何度も何度も読み返したくなる文章。それはMVのように旋律を含んだ映像として頭の中に広がる。カエデさんの言葉はおそらく実際の光景よりも美しい。現実以上の空想を与えてくれる。それは文章の未知なる可能性。小説や詩が映像に勝る瞬間だ。@nzkaedehttps://t.co/6vXDhPUxqy
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) December 16, 2019
サトウカエデさんの作品。彼女の文章は音楽的だ。それはカズオイシグロの短編小説に似た心地良さがある。小説も音楽も、時間経過を必要とする芸術だ。一つの音が響いた瞬間、文章は動きはじめる。それは余韻を残しながら、次の音を紡ぎ、リズムが生まれ、絡み合ってメロディとなり、ハーモニーとなっていく。
彼女はニュージーランドに住んでいる。南半球のクリスマスは真夏だ。旋律を含んだ文章は、読み手を遠くへ飛ばしてくれる。詩のように響く言葉は青空に浮かぶちぎれちぎれの白い雲みたいに。その間を埋めるのは僕たちの想像力だ。
きっと、カエデさんの文章は実際の風景以上に美しい。僕たちの頭や心に流れていく光景。小説や詩が、映像に勝る瞬間だ。「何度でも読みたくなる」と書いた理由は、その心地良さをもう一度味わいたいからに他ならない。
16.あなたのつぶやきを丁寧に書きたい
薄明さんはいつだってヴィジュアルの向こう側を見ている気がする。言語化できない領域。それは単に「美しさ」で片付けるものではない。息遣いに耳を澄ませ、目に見えない「不思議」を掴みとる。掴む、取りこぼすは別として、その行為の中にアートを感じる。@_hakumei_ https://t.co/Rb58KkFynx
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) December 14, 2019
薄明さんの作品です。写真を撮り、詩を書くお方です。薄明さんが写真を撮ったり、文章を書いたりする「行為」は、僕には修行のように映ります。もちろんのその中には楽しみや喜びはあります。ただ、もっと深いところ。別の言葉に言い換えるのであれば、それはまさに「道」のようなもの。
僕には薄明さんが写真や文章を触媒として、「目に見えないもの」を洞察しているように見えます。写真も、言葉も、それを掴むための道具に過ぎない。境界線の向こう側に意識が常にあって。それらを「掴もう」「切り取ろう」「象ろう」という行為こそが本質で、そこにアートを感じます。それは修行のようです。その「行為」自体に生きる喜びを感じているのではないでしょうか。
そう思う理由は、僕がそうだから。心の底の底の、ずっと下の方。根っこのところで薄明さんと繋がっているような気がします。
だからこそ、薄明さんの言葉は僕の中で共鳴します。ヒントをもらいます。新しい課題を届けてくれます。生きることが芸術的な感覚であり、修行なのだということを教えてくれます。
17.[掌編小説]銃は震える
「欲望」は果たされる必要はなく、発露を求めている。アンナ・カレーニナからの引用文はまさしく、異なった“不幸のおもむき”が重たい空気を漂わせる。文章から醸すダークネスは見事である。それは一つのきっかけで軽やかに。銃声のように一瞬で。#教養のエチュード賞@RS_hon
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) December 29, 2019
https://t.co/TcKuPH6Qcx
サトウ・レンさんの作品。小説です。それぞれの登場人物が心に暗がりを抱えているのですが、文体といいますか、文章のリズムといいますか、言葉のまとまりが、その重圧を巧みに表現しています。これはすごいです。「こういう手法があったのか」と、新しい発見がありました。言葉ではなく、文章から漂う空気で世界観を築いていく。
人物たちが抱えた闇の真相が次第に明かされていき、あるタイミングで晴れ間が広がる。カタルシス。それは読み手にも清々しさを与えてくれる。戯曲的な魅力を感じました。
「欲望」は果たされる必要はない。発露を求めている。そこには人間の普遍的なテーマが伺えます。
18.17年と90分間の戦友
同じ世界に生き、同じものを見ていても、そこにはそれぞれの感情があり、それぞれの時間の流れ方がある。それは「私だけの物語」となる。一言では言い表せない矛盾を孕んだ文学性。秀逸な短編小説。タイトルも素敵。#教養のエチュード賞@keiichiro_kidohttps://t.co/LbQj2FtxdA
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) December 29, 2019
城戸圭一郎さんの作品。秀逸な短編小説。この作品好きです。何でしょうか、この物語が無常観。己の非力さと、行き場のない憤り。それは、ただ「どうしようもない」のではなく、読み手に問題提起を与える。「あなたはさぁ、どう思うのか?」「何ができるのか?」「どうしていくべきなのか?」そういうものを突きつけられる。
湧き起こった感情は紛れもない事実。その事実を自分自身の中でどう落とし前をつけていくのか。「矛盾を孕んだ文学性」というのはそこです。簡単には答えは出ない。この短い文章の中に、大切な「問い」が詰まっています。
最後を爽やかに締める上品さも、この小説の魅力の一つ。
19.それでも私は、“正解”よりも”自由”を信じる
哲学は基礎体力。思考のエンジン。ここに綴られた〝考え方〟は日常のシーンで応用できる。その本質価値は答えを見出すことではなく、さらなる思考の深みへと誘う助力として機能する。哲学によって僕たちは遠くへと飛ぶことができるのだ。#教養のエチュード賞@chizuru_0_1https://t.co/txNunnBpOO
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) January 3, 2020
千鶴さんの作品。いろいろな哲学者の残した言葉から、千鶴さんの思考を再構築していく。僕は「考えること」が好きだから、特にこの作品は読んでいて楽しかった。
「哲学」は答えじゃない。自分の答えを導くための有力な道具だ。哲学者の言葉を借りると、僕たちは自分の力では到底辿り着くことのできな場所へとワープできる。そこには新しい発見があるし、そこから逆算して道筋をつけていくこともまたクリエイティブな行為だ。
このままずっと思考の海を泳いでいたい。そう思うほど、読んでいて楽しい文章だった。あらゆる具象に落とし込んで、多元論的に答えを探すのもおもしろいかもしれない。
20.ばあちゃんのかぼちゃの煮付
ジーンときた。味覚と感情がリンクする。そこから記憶が蘇る。ここに書かれたかぼちゃの煮付。食べてみたい。この物語がおいしさを引き立てる何よりの調味料だ。思い出を含め、この一品は救いだ。#教養のエチュード賞@r_nana04https://t.co/QxtpYJ5LOm
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) January 4, 2020
Rise@音楽人さんの作品。食べるように文章を読んだ。胸の奥がじんわりと熱くなった。ここに書かれたかぼちゃの煮付が食べたくなった。
このような物語を持っているRiseさんのことがうらやましくもなった。思い出の味、思い出の感情、思い出の物語。「好きな食べ物は?」と聞かれた時に、この話をすると聞いた人はそれだけで心が掴まれる。この感受性を持つRiseさんはきっといい人だし、最後の一行にある「救済」という願望は、とても素敵だ。
人柄の伝わる物語は書こうと思っても簡単には書けない。物語がおいしさを引き立てる何よりの調味料だということを教えてくれた。
21.ブルベって何ですか
とても勉強になる。特に男性はこの手の話に疎いかもしれない。もちろん個人的な好みということもあるだろうが、彼女は歌人なので、特別、色に対する好奇心と乗せる希望が大きいのではないかと想像する。ふと残る違和感を、文末の短歌で晴らす。あっぱれ。#教養のエチュード賞https://t.co/eSxXgWEfyl
— 嶋津 亮太|Ryota Shimadu (@RyotaShimadu) January 4, 2020
柴田瞳さんの作品。メイクやコスメで扱われる言葉。僕は知らなかった(男性はこの手の話に疎いのではないだろうか)。 このnoteで勉強ができた。
柴田さんは歌人だからだろうか。色彩への好奇心とこだわりが強い。同じ表現者として、その姿勢は愛おしいし、共感を抱く。日常の興味や疑問を描いたカジュアルな内容だけれど、ふと浮き上がった違和感に文末の短歌が靄を晴らす。
「全ての色で忘れること」と「数ある中から色を選ぶこと」。どちらの方が大切なのか、言わないけれどわかっているわよね。僕にはそのように聴こえた。
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vol.4へと続く
▼「読むこと」は教養のエチュードvol.2 ▼
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