クリエイティブサロン吉田塾
山梨県富士吉田市、富士山のお膝元でひらかれるクリエイティブサロン吉田塾。毎回、さまざまな業界の第一線で活躍するクリエイターをゲストに迎え、“ここでしか聴けない話”を語ってもらう。れもんらいふ代表、アートディレクターの千原徹也さんが主宰する空間です。第十三回のゲストは編集者であり、ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓さん。
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アイスクリームフィーバー評
何より先に、軍地さんの映画評があまりにもすばらしい内容だったので共有したい。今年公開された千原徹也監督の『アイスクリームフィーバー』について。それは、全体のほんの一部だけれど、ぼくは軍地さんの批評に大きくこころを動かされた。作品はつくり手だけでなく、受取り手によっても磨かれてゆくものなのだ。
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“千原パステル”
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プロット
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配信が世界へプレゼンする
話は、『アイスクリームフィーバー』から、映画や配信というメディアの在り方(機能)へとスライドしてゆく。ファッション業界の第一線で、「今」を読み取り、「未来」を画策する軍地さんの視点はいつもぼくたちを驚かせてくれる。
Netflixで公開された蜷川実花監督のドラマ『FOLLOWERS』(2019)で衣装監修として参加した軍地さん。「ファッションドラマにするから」と、ラグジュアリーブランドに衣装協力の許可取りに行ったが断られることが多かったという。その理由は、「配信だから」と。
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これからのファッション
軍地さんは、経産省の仕事も手掛けている。その内容は「ファッションサプライチェーンの再構築」という議題で、日本のファッション産業の未来を考え、実現してゆくこと。「その答えは“産地”にある」と軍地さんは話す。
昨今、世界のラグジュアリーブランドから日本の工場へ生地の依頼が届くのだという。なぜラグジュアリーブランドが日本の生地を選ぶか。
日本の繊維業がが、ちゃんと稼げる産業にならないといけない。日本の職人さんたちが営業を得意としないこともあり、モノが安く買い叩かれている現状で。軍地さんは「そこを変えていきたい」と話す。日本の課題は、職人の後継者問題に加え、グローバルに輸出していく際に求められるSDGs関連の国際認証などがある。
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捨てたくないモノ、愛せるモノ、受け継ぎたいモノ
ファッション業界は、94年あたりをピークに縮小している。バブル期に13兆円あった市場規模も今は7兆円ほどに下がっている。誰もがクローゼットにはTシャツ10枚、デニムも4、5本持っている時代。新しく服を買ってもらうことの難しさがここにある。
素材を作る第一次産業から製品を生み出す第二次産業まで、価値が持続する。循環性のあるサプライチェーンをつくっていくことが大切なのだ。
軍地さんのことばは、いつだって聴く者に問題意識と勇気を与える。富士吉田のすばらしさ、ファッションの魅力、カルチャーの大事さ、そして一人ひとりが持つ可能性。社会について考えると同時に、自分の持つ力に気付かせてもらえて、それは自信を培うことにつながる。
このように、未来を指し示し、勇気を与える人のことをリーダーと呼ぶのだろう。すばらしい講義をありがとうございました。
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そして、わたしも制作にかかわっている本塾の主宰、千原徹也さんの著書『これはデザインではない』、『クリエイティブの裏技。』のチェックよろしくお願いします。