普通に一人の現代人として生きているだけで、あなたはめちゃくちゃ偉大なんだぜ、って話。26歳がん患者が伝えたいこと。
がんになったショックより大きい、現代人が日々受けるストレス
競泳・池江璃花子さんが、白血病になった後のインタビューで語った衝撃の一言
僕のもっとも尊敬するアスリートの一人が、競泳日本代表の、池江璃花子選手です。みなさんもご存じの通り、池江選手は、2020東京オリンピックで、複数種目の金メダル候補筆頭と目されながら、2020年2月に突然白血病に襲われました。
僕は自分ががんになる前、たまたま池江選手のインタビューをTVで観ました。
そこで池江選手は、がんと宣告される前の当時の僕には全く理解できないことをおっしゃっていたのです。
池江選手は、白血病と告知されたとき、ショックで大号泣したそうですが、自分の部屋に戻るや否や、なんと「本心でポジティブな気持ち」になっていたというのです。
その理由は……
「正直、アスリートとしては良くない考えだとは思うけど、もうオリンピックについて考えなくていいんだという気持ちになった」(3分20秒頃)
からだそうです。
そのインタビューを観たとき、僕は大変失礼ながら、「池江選手、何を言っているの!死の危険が迫っているときに、がんになってポジティブになっただなんて!」と思ってしまいました。
でもそれくらい、池江選手は周囲からの期待で強いプレッシャーを感じていたのですね。しかも、がんになって、そのプレッシャーから解放されたことで、初めてそこまで強いプレッシャーを自分が受け続けていたことに気づいたそうです。
自分が「悪性リンパ腫」を告知されて感じた意外なこと
その時の池江選手の心情を理解できたのは、僕が先月、悪性リンパ腫ステージⅣと診断された時でした。
がんと最初に言われたときは、もちろんショックでした。頭が真っ白になり、フラフラしてきてまともに座っていることも出来なくなり、病室の中にあった簡易的なベッドに横にならせてもらったほどでした。
ですが、その後落ち着いて家族や会社にがんになったことを伝え、翌日からお仕事をしばらくお休みすることが決まった時。
「これでしばらく休めるんだ。明日も午前6時に起きて、7時に出社しなくてもいいんだ」
そう感じる自分がいました。
オリンピック選手じゃなくても
僕の金融のお仕事など、池江選手のお仕事に比べれば、少なくとも客観的に見れば、なんとちっぽけなものでしょう。1億人の期待を背負っているわけでも、全世界80億人に配信されるわけでもないのですから。子供たちに夢や希望を贈ることだって出来ません。
でも、僕という主観にとっては、「社会、会社、上司に求められる課題を当たり前のようにクリアすること」がとてつもない大きなプレッシャーになっていたことに、がんになって少し喜ぶ自分がいて、初めて気づいたのです。
そして、それは現代を生きるすべての仲間たちに言えることだと思うんです。
モダニズムは個人主義に立脚しています。私たちは、ある国の国民・誰かの親・誰かの子ども・どこかの会社の社員あるいは経営者・国の未来を担うとされる学生……あらゆる立場に対する責任を、ひとりひとり個人の名において引き受けているのです。
そして、その責任を負うプレッシャーは、全員が当たり前に負っているので、普段その存在に気づきすらしないのです。
ですが、例えばあるきっかけでその責任から解放されたとき。
たとえそれが、死に直面するかもしれないがんの告知であっても。
初めてそのプレッシャーの大きさに気づくことになるのです。
今この瞬間を必死に生きるあなたを、あなたは全肯定して欲しい
今この記事を読んでくれているみなさんの中には、「がんと言われてポジティブになった」池江選手や僕の気持ちがいまいち腑に落ちない人もいると思います。
ですが、僕はそれなりの確信をもって言えます。
「個人主義の現代に生きるあなたが日々感じているプレッシャーは、がん告知のショックをも上回るくらい大きなものかもしれない。」
そんな中、あなたは今日一日をどう過ごしていますか。
今この瞬間、何をしていますか。
きっと、自分に与えられた責任の一端を果たすために、何かしら頑張っているのではないですか。
あなたのお仕事でもいい。お勉強でもいい。子育てでも、家族とのふれあいでも、友達との遊びでも構わない。すべて自分以外の誰かを幸せにする立派な行いです。
コンビニでジュースを1本買うことだって、経済活動の一端を担って、消費税を国に納める、立派な「現代社会を生きる者の責任」なのですよ。
がん告知のショックをも上回ってしまう、そんな日々のプレッシャーの中で懸命に生きるすべてのあなたへ。
あなた、万歳。
あなたって、最高。
あなたへ、ありがとう。