R25世代が漫画『アンサングシンデレラ』を読むべき理由
長期インターンを始めてから、「お仕事とは何か」を考えることが多くなり、ビジネス書ではなく、漫画を読み漁るようになりました。ビジネス書は筆者の意図や伝えたいことが明確でわかりやすいので、思考停止してしまうのでは?と思い始めたのがきっかけです。
そんな僕は、昨年コロナが流行し始めた頃に『アンサングシンデレラ』を初めて手に取ります。
あらすじ(wikipediaより)
あらすじにもある通り、初めは、薬剤師をモデルとした医療系の漫画なのかなと思っていましたが、その期待は見事に打ち破かれました。
お仕事の在り方、人の葛藤や思いを本質的に捉えたリアルを映した作品だったからです。
特にR25に読んでもらいたい作品なので、おすすめポイントをシェアしたいと思います。
ロマンの影には、算盤がある
薬剤部の刈谷が口腔外科の医師に術後抗生剤の処方を減らすように指摘するシーン。
ガイドラインでは、24時間に1回の服用で十分とされているにもかかわらず、「患者を安心させたい」という思いから適正量を上回る処方をしていたことがわかったが故の指摘です。
刈谷は薬剤部の中で、棚卸し担当を担っていて在庫管理に厳しいことで有名です。また、外来の調剤はスピードと効率重視で、患者と密にコミュニケーションを取ろうとする主人公の葵みどりをいつも注意しています。
そんな刈谷と真反対の考えの葵は、刈谷のことを冷徹な合理主義な人だと解釈します。
「数字ばかりで患者のことは全く考えてないのではないか。」
そう考えていた葵は先ほどのシーンで今までの刈谷に対する解釈が間違っていたことに気付きます。
むしろ、合理的ではない選択をしている人ではないかと。
大手の調剤薬局の店長というキャリアを捨て、病院に転職した刈谷は最も合理的ではない選択をしていることに気付かされます。
患者のことを考えているが故に、
在庫管理を徹底して経営が傾かないように支えたり、患者の待ち時間を少しでも短縮するために、効率を重視したり。
ロマンや理想を追う人間の側には、算盤を整えている人がいます。
この漫画で学びが多いと感じるのは、主人公の理想を必ずしも是とせず、様々な価値観やキャリアを多角的に描いているからです。
調剤を無断で抜けて服薬指導に入った葵のために、瀬野が医師から服薬指導依頼書をもらってきたシーン。
葵のミスや失態を裏からフォローする先輩薬剤師 瀬野の存在もみどころの1つです。葵が良かれと思った行動の裏には、いつも瀬野のフォローがあります。
何かのロマンの影には、誰かの支えがある。
僕たちがこうして幸せに夢を見て暮らしていけるのは誰かの支えのおかげです。電気やガス、水を安心して使えるのも、誰かが陰で仕事をしてくれているからです。この漫画を通してこのような当たり前な事に気づくことができます。
役割は自分で決めるもの
第4巻のテーマになっている「役割」。
薬の過剰摂取で搬送された患者と新人薬剤師がメインテーマになったお話です。
僕が最も印象に残っているシーンです。
パニック障害で仕事を辞める事になり、自分の存在意義を見出せないが故に、「患者」という役割に固執する患者の陽菜と、
患者の支えができない上に、葵に医師とのやりとりを丸投げしまったことで薬剤師としての存在意義を見出せない新人薬剤師のくるみ。
この2人が交わることで、2人の役割に対する考えが変化していきます。
この言葉で、
とくるみは考えを改めます。
自分ができることは最大限精一杯する。人と比べても仕方ないんだ。
僕たちは無意識のうちに、自分で「役割」という呪縛をかけています。
「この仕事は実力不足だからできない。」
「もういい歳だから、挑戦できない。」
どこか自分の役割を勝手に決めつけて、自分の領域を遠ざけていませんか。20代に差し掛かると、いやでも現実を見ることになります。
その現実を役割のせいにせず、自分で全うすることの大切さをこのエピソードを通じて学ぶことができます。
まとめ
他にも、病院薬剤師・薬局薬剤師の対立や、終末期患者とのエピソードなど薬剤師というお仕事を通して、仕事やキャリアを考える上で大切な要素を垣間見ることができます。
ドラマ版では、みどりはキャリア8年目の設定なので、原作とは違った立場からの視点で描かれているのもあり、別物として鑑賞すると『アンサングシンデレラ』の本質がより見えてくるので、おすすめです。