アンダーグラウンド
映画「アンダーグラウンド」
1995年のフランス・ドイツ・ハンガリー・ユーゴスラビア・ブルガリアの映画です。
いろいろなヨーロッパの国が、共同で製作してます。それだけ完成までに紆余曲折があったのですね。
監督は大好きなエミール・クストリッツァです。
物語は3つの章からできてます。
ナチスが横行しているヨーロッパが舞台です。ふたりの男がいます。共産党員のマルコと、電気工のクロ。
マルコはクロを入党させ仲間にします。やがて戦火を逃れるために地下に避難し、そこで武器を密売するようになるんですね。
地下=アンダーグラウンドですね。
ふたりには好きな女がいるんです。
女は女優なんですが、家族のためにナチスの将校と付き合ってるんですね。
ふたりは将校の元から女を奪うんです。そして女も地下で暮らすようになるんですね。
地下では多くの住人が武器の密造に精をだしてるんです。地上の情報は入ってこないんですね。
マルコはどんどん偉くなっていきます。戦争が終わり大統領の側近までになるんですね。
国のため戦っていた男が権力にぎるとどうなるか。
マルコは、地下の人間に「戦争はまだ続いてる」と嘘をつき、武器密造を続けさせるんですね。そして利益を自分のものにしていくんです。そして女優の女も自分のものにするんですね。
ジプシー音楽がこの作品をつつんでます。重い話しなんだけど、話しのテンポ、ジプシー音楽の効果で、東欧の田舎町で人形劇みているような感覚になりますよ。
この映画、地下の人間と、地上の人間の対立の物語かと思ったら大間違いですよ。物語はここから、どんどんどんどん広がっていきます。
小川だと思っていた流れが、大海にでていきます。広大な海へとでますよ。
この映画、ひとつの国の歴史を描いてるんです。
監督の生まれた国「ユーゴスラビア」ご存知ですか。
ユーゴスラビアという国は現在ありません。
存在しないんです。
民族紛争によってバラバラになり、国として機能しなくなったんですね。
日本で生まれたぼくらには理解できないかもしれませんが、自分の生まれた国がなくなったんです。
監督は祖国ユーゴスラビアの歴史を、この映画で描いてるんです。祖国の誕生からなくなるまでを描いてるんです。
重くなる話しを、そうせずに、ユーモアとジプシー音楽にのせて描いています。
ラストもいいですね。小さな島に大勢が集まり、結婚式がおこなわれるんです。
楽団の演奏のなか出席者の男が「むかしむかし、あるところに国がありました」と、カメラに向かって語り出して終わるんです。
寝る前に寓話を聴いていたかのような作品でした。エミール・クストリッツァ監督、愛にあふれた監督です。