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2022年12月に読んだ本

今月読んだ本の、まとめ!

① フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」

ドイツの現役弁護士による、犯罪についての短編集。

語り手は刑事でも探偵でもなく弁護士なので、手に汗握る追跡劇やどんでん返しの推理シーンがあるわけではありません。むしろ、報告書じみた筆致で淡々と語られることで、それぞれの犯罪が生々しく描かれていきます。

収録作の中では「棘」がお気に入り。直接的な因果関係は確定できないものの、事務手続きの不備が数十年の時をかけて犯罪を醸成していたのかもしれない... という、「日常は薄氷の上」感の漂う作品。

② F・W・クロフツ「樽」

名作だと聞いてはいたものの、古い本(1920年)でそこそこ厚いため、長らく敬遠していたのですが、読みだしたら止まらなくて一気読み。

ドーバー海峡の両岸で、英仏の刑事、探偵が死体入りの樽の謎を巡って奔走します。本書の面白いところは、「優秀な刑事が正攻法で捜査しているにも関わらず、それでも謎が解けない」という構図になっているところ。

全体的に簡潔で硬質な文体になっているのも、「謎そのものが面白いので装飾は不要」という風格が感じられます。

③ F・W・クロフツ「クロイドン発12時30分」

「樽」が面白かったので、続けてクロフツのもうひとつの代表作を読了。

物語が犯人視点で語られる倒叙ミステリの傑作、と聞いていましたが、実際にすごく面白い本でした。 犯人がいかに殺人を正当化して犯行に踏み切るのかといった葛藤、犯行がバレないかの不安、さらには裁判のシーンと、読んでいる側もハラハラし通しの作品。

細部まで描写が練られているのが犯人視点の倒叙ミステリの面白さを引き上げていて、巻末の解説でも触れられている「蓋」のシーンは作者自身が実際にこれ試したんじゃ...? と疑いたくなる臨場感のある描写になっています。

④ シェイクスピア「新訳 ロミオとジュリエット」

色々な作品の元ネタにされるので、一度読んで見たかった本(戯曲)。翻訳が複数あって悩んだのですが、一番読みやすそうだった角川文庫版を購入。 悲劇ではあるのだけれども喜劇的な部分もかなりあって、イメージを覆される新鮮な読書体験でした。

名門貴族のいがみ合いによる悲劇だと聞いていて、それは実際そうだったのですが両家の当主よりも「若い衆」の血の気の多さが印象的で、これモンタギュー・ファミリーとキャピュレット・ファミリーのマフィアの抗争の話なのでは...? というバチバチの反目具合。

登場人物ではロレンス神父がいいキャラしてます。若者の短慮をたしなめつつも味方についてくれてる頼れる大人なキャラ。短いセリフでスパッと切り返す話し方も楽しい。

⑤ 山田風太郎「甲賀忍法帖」

伝説的なトンデモ忍者バトル小説のシリーズ、という評判を聞いて気になっていたのですが、予想を超える面白さでした!

昭和33年(!?)に書かれたとは思えないほど読みやすく、展開もスピーディで意外性もあって最後の最後まで油断ができない。超然としつつも人間臭いキャラクター達も魅力で、この文庫本の分量で忍者が20人も出てくる熱量がすごい。

⑥ サラ・ピンスカー「いずれすべては海の中に」

作者がミュージシャンとのことで、音楽に関する作品が多めのSF短編集。

音楽万歳!な単純な物語ではなく、「地球から遠く離れた宇宙船の中で、『地球の音楽』を守ることにどんな意味が?」と音楽の意味を見つめ直す視点で書かれるような作品となっているのが興味深いところ。表紙や背表紙の作品タイトルだけ天地が逆になっていて、装丁にもこだわりが感じられる本となっています。

⑦ マーク・ミーオドヴニク「液体」

燃料、接着剤、紅茶、石鹸、冷媒、インクetc... 身の回りにある様々な液体の性質が、具体例や歴史的な逸話を交えながら分かりやすく説明される本。

本書全体が「イギリスからアメリカまでの飛行機旅の中で考えたこと」という体裁で書かれているのも面白いところです。短い旅の間にも、私達は様々な液体の性質の恩恵を受けているのだ…

⑧ 柞刈湯葉「SF作家の地球旅行記」

「横浜駅SF」の著者による旅行記。軽妙なボケとセルフツッコミを繰り返しながらマイペースに旅が語られます。元研究者だったこともあり(?)海外旅行へのフットワークが軽く、コロナ流行前にはガンガン海外にも旅行します。

巻末に架空の旅行記という形の短編があるので柞刈湯葉ファンにおすすめ... であると同時にSFの話題はほとんど出てこないのでファンでない人にも普通に旅行記としておすすめです。


以上、今月の読書でした!

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