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2022年11月に読んだ本

今月読んだ本の、まとめ!

① 村田沙耶香「信仰」

短編7編とエッセイ1編を収録。短編では、作中で語られていない部分への想像が膨らむ「書かなかった小説」がお気に入り。

エッセイでは、自分の奇抜さが受けいれられた喜びが書かれる一方、いつのまにか「クレイジー」という分かりやすいラベルで分類されてしまったことへの後悔が綴られます。作者が現在の世間からの扱いに思い悩んでいる様子が読み取れるのですが、私としてはすでに出版されている作品だけでもとても多くのものを頂いているので、無理はしないで欲しい... と願うところです。

② ハル・クレメント「重力への挑戦」

以前読んで面白かったSF「法治の獣」の著者、春暮康一の名前がハル・クレメント由来であることを聞いて気になっていた本。

赤道では3G、極地では700Gの強力な重力を持つ惑星メスクリン。その重力を調べるための無人機が極地でトラブルを起こして帰還できなくなってしまった。700Gの高重力に耐えられる現地異星生物の助けを借り、調査機の回収が試みられる!

…という異星冒険SF。重力の設定以外はリアリティ重視で描かれていて、低重力地帯では有効な輸送手段も、高重力地帯では使いものにならなかったりする、といった設定に基づく考察が魅力。秘境探索とか海洋冒険譚の異星版といった趣きの作品でした。

③ 陳浩基「13・67」

香港の警察官が活躍する連作ミステリ短編集。

短編それぞれに創意が凝らされていて面白いの加えて、イギリスからの香港返還等、主要な歴史的事件を背景とした連作であることを活かした仕掛けも。

④ ペ・ミョンフン「タワー」

674階建ての超高層ビルがひとつの主権国家として認められた世界を舞台とした、ユーモアあふれる連作SF短編集。

ビルの水平方向と垂直方向では運搬手段が異なる(人力orエレベーター)ので、運送業者の性格も異なってきて... といった、世界観に基づく考察が楽しい。

⑤ 鈴木哲哉「インテル8080伝説」

1974年にインテルが発売し、その後のコンピュータに大きな影響を与えたマイクロプロセッサIntel 8080。その歴史が語られるとともに、著者がIntel 8080(の同型品)を入手して実際に動くコンピュータを作成した記録が綴られます。

この本の裏表紙には作者が作成したコンピュータの写真が掲載されていて、黎明期のコンピュータを復活させようと仕様や回路図を読み解いていく様子には情熱とロマンが感じられます。

⑥ フォン・カルマン「大空への挑戦」

カルマン渦列等で有名な航空工学者フォン・カルマンの自伝。 流体力学の理論はもちろん、実は初期にはボルンと一緒に格子比熱の理論を作っていたりする理論家肌な面を持つ一方で、風洞実験のような実験をとても重視する姿勢が印象的でした。

「空気力学がタービン設計に役立つとは思われていなかった」「ポンプの理論の進歩はほとんどなかった」「ロケット推進は学者のお遊びだと思われていた」というような、今日では信じられないようなフレーズが多々あり、あぁ、その分野全部あなた(達)が開拓したんですね... という気持ちに。


以上、今月の読書でした!

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