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2022年7月に読んだ本

今月読んだ本の、まとめ!

① アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

「火星の人」で火星を、「アルテミス」で月を舞台にしたアンディ・ウィアーが、今度は太陽系外に飛び出した! 主人公が科学的な考察をもとに危機を乗り越える、という作風は今作でも健在で、さらにスケールアップした展開に。

ネタバレになってしまうので詳しくは語れないけれど、測定をして、仮説を立て、実験で検証し、それが間違っていたらさらに別の仮説を立て... という科学のプロセスがそのまま物語の面白さにつながる素晴らしいSFでした。

② 春暮康一「法治の獣」

SFとしてアイデアが面白いのに加えて、「そのアイデアを持ち出すことによって得られる思索」の部分にも深みが感じられる傑作ハードSF短編集!

自然淘汰の結果として「自然法」の概念を獲得したらしい異星生物を描く表題作が圧巻... なのだけれど、他の2作もすごい。

他の作家さんと比較するのはあまり良くないのかもしれないけれど、科学ネタと思索がどちらも面白く、それが物語として上手くまとまっているのはグレッグ・イーガンの短編を彷彿とさせる感じ(作中でイーガンの「ワンの絨毯」のオマージュがあるので、作者も意識してる感じはする)

③ フィリップ・K・ディック「小さな黒い箱」
④ フィリップ・K・ディック「人間以前」

じわじわと読み進めてきたディックの短編傑作選の5冊目と6冊目。この傑作選もこれで読み終わってしまった…

「小さな黒い箱」には政治・宗教を題材にした作品が多く収録されていて、風刺の効いた作品が多め。お気に入りは色々あるけれど、選挙についての過剰な熱狂を描いた「傍観者」の印象が強烈でした。選挙は確かに大事だけれど、極端に走りすぎるのも良くない。

一方「人間以前」ではファンタジーや子供が主役の作品を中心に収録されて、とくに「この卑しい地上に」がお気に入り。キリスト教の天使のようで少し異なる天使達が描かれる独自設定の幻想小説短編で、訳者あとがきで「完成度の高いモダン・ファンタジー」と紹介されるのも納得の面白さ。

⑤ 歌野晶午「密室殺人ゲーム王手飛車取り」
⑥ 歌野晶午「密室殺人ゲーム2.0」
⑦ 歌野晶午「密室殺人ゲーム・マニアックス」

自分で実際に殺人事件を起こし、それをネタにしてオンラインチャットで推理ゲームを行う... という強烈な設定のミステリ。悪趣味な設定ではあるのだけれど、犯人&探偵たちがワイワイ推理合戦するのが楽しくてシリーズ3作を一気読み。

書く側からすると大変なんだろうけれど、こういう「推理合戦」があるミステリがとても好き。間違った推理が提出されて否定されて、じゃあ次のアイデアはこれだ!とどんどん推理が出てくるのが楽しい...

⑧ 米澤穂信「儚い羊たちの祝宴」

「密室殺人ゲーム」を読んで、もっとミステリを読みたい欲が高まってきたところに書店で見つけて購入。

「探偵が真実を明らかにして一件落着」という形式ではない、今まで読んだことのないタイプのミステリ短編集でした。上品な語り口で淡々と語られる、背筋の冷える物語。闇が暴かれるのではなく、秘められたままで幕が下ろされる。

⑨ スコット・トゥロー「推定無罪」

リーガル・サスペンスの傑作、という評判を聞いていたのだけれど、もう書店では売られていないようなので中古本で入手。

検事補である主人公が、同僚を殺害した容疑で裁判にかけられる。「裁判」という枠組みの中で、検事側、弁護側、そして警察や判事の思惑が交錯していく。さらには被告が独自に調査を始めたり… と、最後まで先が読めない展開で、評判に違わぬ面白さ!

作者が元検事補(出版時は弁護士)とのことで、アメリカの裁判についての詳細な描写もとても興味深いものでした。

⑩ 水野一晴「人間の営みがわかる地理学入門」

以前読んだ「自然のしくみがわかる地理学入門」と対になる本が文庫化されていたのを発見して購入。

タイトル通り前作が地形の生成過程や気候といった自然現象中心だったのに対し、本書では農業や村落・都市の生成といった人間の営みが解説されています。

⑪ 堤之智「気象学と気象予報の発達史」

人類が地球規模の気象現象を理解して、それを予測できるようになるまでの歴史が解説される本。

気象がとんでもなく巨大な現象であるのが理解を困難にしていて、観測技術はもちろんのこと郵便や電信といった長距離通信があって初めて現象の全貌を捉えることができるようになった、ということらしい。

コンピュータがまだない時代に手計算で気圧の変化を計算した人物が紹介されていたり、エニアックの登場以後実際に計算機で気象予報が行われるようになったことが解説されたりと、今日の気象予報に至るまでの様々な話題が説明されています。


以上、今月の読書でした!

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