2023年1月に読んだ本
今月読んだ本の、まとめ!
① ニー・ヴォ「塩と運命の皇后」
東アジアっぽい架空の世界を舞台にしたファンタジー中編2編を収録。
主人公が歴史の記録を使命とする聖職者という設定なので、独自設定ファンタジーの魅力である「ここはどんな世界なのかが明かされていくワクワク感」が楽しめる物語になっています。冒頭から「先帝に封印された湖」とかが出てきて雰囲気も抜群。
歴史を記録するために調査を続ける主人公だけれども、話を聞く相手によって伝承が異なった形で伝わっていたりするのも面白いところ。
② 米澤穂信「折れた竜骨」
魔法が存在する世界を舞台にした長編ミステリ。一見すると「魔法が使えるなら何でもありなのでは? 」と思えるのだけれど、そこで上手く「ミステリ」を成立させる趣向が凝らされた作品になっています。
中世ヨーロッパが舞台の歴史ミステリでもある… けれど、そちらはパズルを成立させる背景の意味合いが強い感じ。あとがきによると、もともとは異世界が舞台のハイファンタジーとして書かれたものだったとのこと。
③ キム・ヨンス「ぼくは幽霊作家です」
李氏朝鮮、日本統治、朝鮮戦争、ソウル五輪... と韓国の様々な時代を背景に描かれる短編集。
時系列順に語られない話が多く、バラバラのパズルを渡された気持ちになるのだけれど、物語が終わると全てのピースが揃って絵になっているような不思議な読後感の作品になっています。
収録作の文体は通常の小説風のものから、老人のひとり語りや書簡風のものまで様々。 村上春樹っぽい比喩や言い回しが用いられていて「ネズミと名乗る日本人留学生」が登場する話も。
④ スティーヴン・ウィット「誰が音楽をタダにした?」
インターネットの普及に伴い、音楽や映画の海賊版が出回るようになった背景が語られます。倫理や道徳を前面に出すのではなく、その状況を可能にした技術(例えばデジタルオーディオ規格のMP3)に着目した視点で語られるのが本書の面白いところ。
優れた技術を政治的な理由で冷遇してしまうと、その技術が業界団体の監視・監督を受けない野放し状態になってしまう上、なんとかその技術を広げようと開発者がサンプルを安値で配ったりするようになって海賊版流通の土壌を作ってしまった... みたいな側面は色々と考えさせられます。
以上、今月の読書でした!
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