病院が疲弊してる(BCPと責任者について)
先日、親族が入院している病院から電話があった。内容は、要約すると、「最近全然見舞いに来ていないので、洗濯物が溜まってる。来れないのであれば、洗濯物を外注するオプションにするけど良いか?」と言う確認の電話だった。ただ、その方は続けてこうも言った。「まあどうせコロナだし、こっちも来られても困るんですけどね。」僕個人には、あくまで、僕個人の心象だけど、相手の方がイライラしていて、電話口に若干その憂さ晴らし的な表現がチラッと見えたように思った。
また、別の時、子供が別の病院にアレルギーの検査入院をする事になった(アレルギーの件については、また改めて別の機会に書きたいと思う)。で、検査途中でアナフィラキシーを起こし、上手くいけば当日退院できるはずだったのが、翌日まで経過観察のため入院する事になった。また小さい幼児の子供にとっては(ぶっちゃけ親にとっても)負担だけど仕方ない、一晩だしと思ってた。ところが、その後、担当医から話があり、退院を翌々日、つまり二泊の入院にしたいと言われた。理由は、子供の状態からみるに、一晩で退院した場合、退院後のその日中にまたアナフィラキシーが起きる可能性が否定できない、通常は、そのような場合でも再入院がすぐにできるようになっているが、現在はコロナ患者受け入れ体制を敷いているため、再入院ができる保証ができないため、との事だった。その後、子供の面倒を見てくれる看護師の方達からも混乱したような連絡が何回か入り、妻がかなりのストレスを抱える事になった。
僕は、どちらのケースについても、全く医療従事者の方々の対応を問題だとは思わない。ただ、コロナと言うイレギュラーな緊張状態がこれだけ長く続くと、全て場当たり的な対応になるし、通常ならできるはずの落ち着いた対応ができなくなることは容易に想像がつく。可哀想なのはそういう現場の人たちだ。
普通の会社だって、重大インシデントが発生した際に、そのためのイレギュラーな対応のためにスタッフが残業したり徹夜したりする事がある訳だから(僕自身、若い頃、ITベンチャーでシステムトラブルを起こして徹夜での対応の翌朝一番でお客様に頭を下げに行った事がある)、自分の責任の場合ならいざ知らず、全く預かり知らぬところで起きた新型コロナウイルスのせいで、1年にも渡って緊張状態を強いられている状態ではさぞ大変な事だろうと思う。しかも、両方ともコロナ病床での話ではない。一般病棟での話なのだ。
で、何故、こんな事を書いているかと言うと、BCPの視点に行き着いたからだ。今は、いわば平時ではなく、非常時だ。医療機関の現場で医師や看護師、その他のコメディカル(要するに医療従事者)の方々は、常にその場その場のイレギュラーな判断を下し、かつ、遅延やミスがないように努力している。でも、残念ながら、現場は全体最適ができる視野を持っていないので、結果的には上手く回らない。レギュラーでないことにはミスも出やすい。
つまり、本当はマネジメントサイドが平時のうちに通常業務のみをこなして安穏としているだけでなく、こうした非常時に対応できるようなマニュアルを用意しておけば、もう少し、各自の負担を軽減できたのではないかと思うのだ。緊急時の対策マニュアル。どのような緊急事態が想定され、どのように対応するか。マニュアルが一つある事だけで、一つ一つの判断に関する責任感・責任意識から現場は解放され、落ち着いた対応ができるようになる。
病院だけではない。全ての、経営者の人に問いたい。非常時の対策マニュアルをあなたは用意しているか? それが周知徹底されているか? 日本は何回も震災や豪雨に見舞われ、その都度、何で反省点が活かされていない? 2011年の3月、苦しい思いをした経営者はいっぱいいたはずだ。自殺した人もいる。ところが今、コロナを苦に自殺している人もいると聞く。何故同じ事が繰り返される?
為政者はどうか? 非常時の対策マニュアルは用意できているか? 何故政治家の一挙手一投足が槍玉にあがるのか? 何で非常時用の服装を来て「密」にしか見えないような専門家会議をしょっちゅうやっているのか? 今は非常時だし、想定外だけど自分は最大限の事をやってるフリをしていれば良いのか?
本来、平時であれ非常時であれ、マニュアル通り・練習通りに上流からの的確な指示があれば、上流から下流にオペレーションはスムーズに流れる。逆に下流から上流にスムーズに現場の情報がいち早く伝わる。そうやって、非常時であっても、その事態を何とかハンドルできるものにしていく。
多分、コンサルをした事がある人なら明白な話だと思うけど、上流がダメだと、全て、しわ寄せは下流にいく。下流とは現場の事だ。もし結果として下流で二次災害が発生するような際、責任をとるべきは上流の指示者だ。よもや、下流の人員に責任を押し付けて自分は責任を取らない、なんて上流の人はいまい。そう言う人は一般に「責任者」と呼ばれる。責任をとるべき、上流の管理を任されており、上流の管理とは、つまり組織全体の管理につながるからだ。
もし、あなたが責任者ならば、あなたは己の人事権を持つべきではない。あなたの人事権を持つべきは、あなたの下流にいる全ての人たちだ。そして、「責任ある」態度と行動ができないのならば、即刻、責任者としての立場から去れ、と言いたい。
組織の長とは、かくも辛く苦しいものである事を忘れてはいけない。自戒の念も込め、ここに書き留める。
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