控えめに言って 死ぬかと思った
タイトル通り、死ぬかと思った。
日本中を大寒波が襲うこの数日間。
なんど山陰側へ足を運ぶのか。。。
えぇ、まぁ、毎日通っていましたねぇ。
行きはよいよい、帰りは。。。
まぁ、大体、行きしに分かるもんで。
無料自動車道は通行止めになりやすい、
なので、どうしても帰らないと行けない時は
帰り道の高速ICまでは下道で帰るのであるが、
大袈裟に云うと、
これにはタイムリミットがある。
現場を14時前に出るか、
後に出るかで辛さはだいぶ変わる。
そして、今日、そのタイムリミットを過ぎてしまった。
やばい、若干の焦りを孕みつつ、
なんとかなるだろう、とも思いつつ、
ひとまず、広島を目指した。
予想通り、無料自動車道は通行止め。
さて、下道を行くしかない。
が、既に無料自動車道入り口を過ぎたあたりで
雲行きが怪しい。
これは大変な事になる、そう思いながら、
ゆっくりと走る車の列に並ぶ。
徐々に道は登りはじめ、
山越えドライブである。
スタッドレスタイヤは履いてあるが、
そんなものでは太刀打ちできないと思うくらい、
目の前は真っ白、道にはタイヤの轍すら残さない猛吹雪。
そして、道ゆく脇には、あまたの屍。
(スリップしてしまったタンクローリーや普通車の多いこと。)
これはいよいよ、と思えばすぐに、
目の前の車がハザードを焚いて停車してしまった。
坂道の途中、僕も止まるしかない。
どの程度時間が経ったか。
30分ほどか。
前の車が発進しだした。
やっとこさ、僕も発進しようとしたその時。
アクセルを踏んでいるのに進まない。
はて、何故か。
何度か繰り返した後、気付く。
不味い、スタックした。
咄嗟にハザードを焚き、外に出る。
後ろの車が動き出すのを見送り、
タイヤ付近を点検する。
タイヤは問題ない。
しかし、周りの雪は完全に凍結しており、
タイヤが空回りしている。
雪道の厚さは5cmほど、
だが、それが完全に踏み固められ、かつ、凍結している。
これでは、どれだけアクセルを踏んでも、
進むことはない。
幸運なことに社用車のため、スコップやバールなどの道具類は積んでいる。
急ぎ、スコップを取り出し、タイヤまわりを削って回る。
アスファルトが見えてくるまで、何度も雪を削る。
1箇所を10回ほど削り、ようやくアスファルトが見えてきた。
前輪駆動だからと、前輪周りを一先ず削り、
もう一度アクセルを踏み直す。
僅かながら動く気配はあるものの、
前には進まない。
後ろには既に1台も車はおらず、
1人雪山に取り残される。
全く予想だにしてなかった場所での立ち往生。
と、孤軍奮闘し、30分。
後ろから光が照らされる。
いつの間にか1台のトラックが停車していた。
いや、トラックではあるが、よく見ると、
黄色の車体に、NEXCOの文字。
道路管理の方の車である。
しばらくすると、おひとり、
降車して来られるお方が。
「手伝いますよ」
そう言うと、スコップを手に、タイヤ全ての周りの雪を削り取っていく。
そして、
「後ろに少し戻ってから、アクセル踏んでみてください。」
言われたとおり、後ろに少し戻りながら、
ギアをドライブに入れ、アクセルを踏む。
なんと、物の見事に進み出した。
「ありがとうございます!」
そう伝える頃には、
せっせと自分の車に戻られる後ろ姿しか見えなかった。
あのまま、1人で奮闘していた場合、
雪山で1人一夜を過ごさなければならなかった。
なんとも頼もしく、そして、暖かい管理者であろうか。
ご恩を胸に、それから4時間半かけ、
なんとか広島に戻ることができた。
大変に大変な1週間であったが、
死ぬこと以外はかすり傷。
人を助ける人情を学び、
そして、二度と大雪の中、下道で帰るという無謀なことはしたくない。
そう心に決めた1週間であった。
前の見えない雪道は地獄へ通ずる、なんて。
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ひっそりと照らす街頭が素敵ですな。