竹槍でB29を落とす(落とせない)
消防士時代に感じた壁
現在、私は外資系消費財メーカーにてEHSマネジメント(Environment, Helth, Safety)の業務に就いています。
前職では消防士として働いており、特に「予防」と呼ばれる消防法を基準とした、火災予防の業務に携わっていました。
とてもやりがいのある業務で、充実はしていたのですが業務を進める中で壁を感じることが多々ありました。
それは、法令の壁です。
新しい建物が建つ際や、既存の建物が消防法に適合しているかを審査、検査することが主な業務だったのですが、この消防法が少し厄介な法律なのです。
半世紀前にタイムスリップ
消防法に限らず、日本の建築基準法や労働安全衛生法といった行政法に分類される法令の多くは戦後の高度経済成長期に多発する事故を防止するために制定されており、この当時の時代背景をベースに作られているのです。
例えば、工場には多くの人が8時半から17時までライン業務を行っている場面を前提としていたり、もちろんインターネットやデジタル技術の進歩など想定には入っていません。
つまり、最新の建物であっても、消防法に関しては半世紀以上前の古き良きニッポンに引きずり戻さないとダメなのです。
また、法改正があっても50年物の秘伝のタレに継ぎ足しになるわけで、どんどん複雑に濃縮されていくわけです。
未知との遭遇
このような中で、私は未知との遭遇を果たしました。
10万㎡を超える巨大工場にもかかわらず、生産ラインは自動化され、工場にほとんど人はいない、という案件を担当することになったのです。
そんな建物でも、面積により設置義務が発生する屋内消火栓などを設置しなさい!となります。
しかし、工場内には人がいないのです、誰が使うねん!となるわけです。(そもそも屋内消火栓の奏功事例は統計上、1%未満であり有効性自体に疑問はありますが、、、)
その頃海外では
日本では基本的に法令は秘伝のタレ方式で、事故が起きればそれに対応する法改正を行います。
一見正しいように見えますが、これでは将来起こりうる事故には対応できないのです。
つまり、事故や火災を一定数以上低下させることは論理的に不可能なのです。
海を渡ってイギリスでも秘伝のタレを重んじていたのですが、事故が起きるたびに法改正をするも事故が減らない、という当たり前の議論が約50年前に沸き起こり、結果秘伝のタレ方式を廃止することとなりました。
詳細はこちらで記載してます。
長々となりましたが
消防士には消防法という伝統の竹槍が与えられていまいた。
竹槍をひたすらに磨きその鋭利さたるや甲冑をも貫くという先輩方もおられ、その姿勢を尊敬し全く立ち打ちはできないと感服していたのですが、やはり敵は遥か上空を飛んでおり竹槍は届かないのです。
精神力ではB29は落とせません。
おしまい