その火事には許容できないリスクがあったのか?
先日大阪市内で発生した福祉施設に関する火災に対して、消防庁から通知が出ていますね。https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/e50aa68adf5618621c87ed758cb43bc7cf19ebfe.pdf
火災についてのニュースは以下のとおりで、9人が搬送され5人が中傷、4人が軽傷とのことです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ca62d6c69ee54928cc0621c3fbb45458abbb5b97
原因は調査中とのことですが、消防法令違反の是正の徹底等についてとりあえず通知がされているところです。
ところで、この火災を皆さんはどう思われましたか?
福祉施設への規制を強化すべきと感じたでしょうか。
私は全く逆でむしろこれは奏功事例と感じました。
高齢者が多数入居する非常にリスクの高い防火対象物において火災が発生したものの、死者は一人も出ず、被災者も中傷程度であったというのは、数々の防火に関する仕組みがうまく機能した結果ではないのでしょうか。
このような事故が発生すると、行政としては再発防止の徹底!と大騒ぎしがちですが、「逆に何がうまくいったのだろう?」という視点も重要ではないでしょうか?
消防職員時代、火災調査等で防火対象物関係者を集め謝罪会見のように上提供させ、事情聴取をするあの雰囲気が私は嫌いでした。
特に、初期消火がなされた貴重な事例などについては、なぜその初期消火がうまくいったのかを分析し、他の防火対象物に水平展開すべきではないかと常に思っていました。
安全工学という分野では、近年「なぜうまくいかなかったのか」を分析するだけではなく、「なぜうまくいったのか」についても分析するべきであるという論文や研究が活発に行われており、前者をSafety-Ⅰと呼び、後者をSafety-Ⅱと言います。
労働安全管理にもとても役立つ概念だと思うので、興味のある方はぜひ調べてみてください!
https://orsj.org/wp-content/corsj/or59-8/or59_8_435.pdf
さて、話を戻します。
今回の火災、消防庁としては再発防止の通知を出していますが本当にすべて失敗事例なのでしょうか?
国際的に、安全は「許容できないリスクがないこと」と定義されています。
この火災事例には許容できないリスクがあったのでしょうか。
この世にはゼロリスク=絶対安全は存在しません。
リスクと向き合うことが本当の意味での火災予防につながると私は考えています。
皆さんはどう思いますか??