映画館に流れる恋愛映画のエンドロール。
君があまりにも綺麗に泣くから、それにつられて私は笑ってしまった。
君が悲しい結末の恋愛映画に今の自分を投影していたことを知ったのは後のお話。
デートのときに手を繋ぐのはいつも私の方で、君から手を繋いできたときは嬉しい気持ちでいっぱいだった。そして嬉しい気持ちとは裏腹に、君の慣れに少し戸惑いを隠せない私もいたんだよ。
君が流したラブソング。幸せな歌詞の通りに進むと思っていた二人の関係。君のぎこちない笑顔の裏にはいつも悲しみが隠れていたなんて知らなかったの。
嬉しいときは鼻歌まじりで調子が良くなるくせに、悲しいときは平気な振りをしてしまう君。二人がぶつかり合ったときも不器用な君はいつも欠伸で涙を誤魔化して、何もなかったのように笑っていたよね。
私は君の笑顔の本当の意味に気づけず、君の笑顔をまんまと信じ込んでいた愚か者。悲しいことが起きた時に流す涙を欠伸のせいにしていた君。無理にぎこちない笑顔を作る君がいなければ、今も一緒にいれたのかな。なんて後悔も後の祭りにしかならないから意味がないよね。きっと。
不器用なのはお互い様で、話せば分かり合えるときも二人は話そうとしなかったんだから私が君の悪い癖を責める権利なんてない。
互いの不器用がぶつかり合わずに、いつしかボタンの掛け違いが起こり、修復不可能な関係に成り下がっただけのお話。
君がさよならを告げるまで、ボタンの掛け違いに気づけず、君の「ずっと一緒」というおまじないを盲目的に信じていたの。ぎこちない笑顔の裏に気づけなかった私の負けだね。
いつしか君と一緒に住んでた1LDKの部屋もすっかり広くなった。
君がいたことが過去かのように、君との思い出は綺麗さっぱり捨ててしまったよ。でも私はあの部屋をまだ離れられずにいるの。
こぼれ落ちる涙を大きな欠伸のせいにして。
君のいない部屋に、電池がなくなったままの掛け時計。
取り返しのつかない大きな過ちは巻き戻すことも、時間を進めることも許されない。
1LDKの部屋に掛かった時計はまだ動かないままでいる。