猫になる(33) ねこはいつか人としゃべれるようになる。
ねこってよくしゃべる。
ねこって話をちゃんときいてる。
ねこって相手のようすをじっと観察してる。
たぶんニンゲンがおもっている以上にわかってる。
ねこばか目線の増し増し分を考慮しても、ねこはじゅうぶん理解してる。
うちの家人はよくうちの子ノエルをだっこする。
わかるわかる、そのきもち。
ふわふわもふもふのかたまりをギュッと抱きしめたい。
でも、ノエルはほんとにいやがる。
きほん、おだやかな子なんだけど、束縛されるのは大キライ。
あと、ふとんとかにすっぽりおおいかぶさるのもにがて。
ヒトからギュウ系やスッポリ系は極端にいやがる。
このへん、保護されるまえの記憶に関連ありそう。
そう、ギュッとされるノエル。
もうかおには「カンベンしてください」って書いてある。
すんごい表情するんだよ!
で、それでもギュッとされると、「キュウ…」という。
ふつう、いわないでしょ、ねこ。
キュウって。
でも、いう。ノエル。キュウって。
これは昨晩、はじめてきいた。
さすがに手足をバタつかせて逃げようとするから彼をはなす家人。
解放されたノエルがまっさきに向かうのはダンボール爪とぎ。
カリカリカリカリ。
執拗に爪をとぐ。
ストレス解消と、精神安定にもききそうなかんじで。
この一連の「ギュウ→カリカリ」はわが家でよくみる光景。
でもノエルの嫌がりかたとかなきかたってパターン化されてそうで、でもいつもあたらしい発見がある。
けさぼくは洗面所で髪をといでいた。
寝起きのあたま。
きょうすごいの、寝ぐせがみょうにきまってる。
天然無造作ヘア。
あともうちょい、バランスがよければそのまま出かけられるくらい。
1年にいちどあるかないかレベルの寝ぐせ。
きっときょう一日いいことありそう…
そんなかんじで寝おきの髪をブラッシング。
すると。
うしろからノエル。
そして浴室の浴槽のフタのうえにあがってスタンばってる。
あ、これ、ブラッシングして!のときのポーズ。
なぜかみょうにいつもきちんと座ってる。
きちんと座ってずっと待ってる。
いやいや。
きみのブラッシング、朝しないから。
ふだん、朝はこんなふうにブラッシングをせがまない。
これって、ぼくの1年にいちどあるかないかレベルの寝ぐせのあたまにブラッシング…
の、ブラッシングとじぶんのそれとを、理解してんじゃないかな。
つぎボクのばんね、と。
なんか妙に感動しちゃった。
「ブラッシング」をちゃんとわかってる。
ヘレンケラーが手にかいた「W・A ・T・E・R」のスペルが水をあらわすって、はじめて理解したときのような。
それにちかい感動。
ちがうか。
こうやって日々のノエルのようすをかきためて。
いつもこっちがノエルを観察してる気がしてたけど。
ノエルもノエルでいつもニンゲンを観察してる。
なにやってるんだろう。
なに食べてるんだろう。
なに話してるんだろうって。
おたがいことばがつうじないもの同士。
すこしでもつうじようとして日々むきあってる。
ねことヒトも。
そんな気がする。
きょうのノエル本
そんなノエルの本第一弾と第二弾。
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